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国立大大幅削減案に揺れる弘大
2001.7.4 [he-forum 2239] 東奥日報07/03.

『東奥日報』2001年7月3日付


 国立大大幅削減案に揺れる弘大


 「国立大を再編・統合」「トップ三十大学を育成」−などを柱とする文部科学省の「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)に、弘前大学(吉田豊学長)が大きく揺れている。教官の多くは「教育が衰退する」「経済活性化と教育改革を結びつけるのは納得いかない」と反対姿勢を表明。「地方切り捨てだ」との声も聞かれる。
 文科省が六月十四日の国立大学長会議で提示した国立大学改革案は(1)国立大の再編・統合を大胆に進める(2)民間的発想の経営手法を導入(3)第三者評価による競争原理を導入−が柱。さらに「国公私立トップ三十大学を世界最高水準に」との方針を打ち出し、「一県一国立大が未来永劫(えいごう)ではない」(工藤智規・高等教育局長)とまで言い切った。
 「大変なことになった」。同十九日の弘大二十一世紀戦略会議に出席した学部長、評議員はこの遠山プランに戸惑いを見せた。これまで論議されてきた独立行政法人化をさらに進めた急進的な内容に反対意見が続々と出された。
 「虚を突かれた。驚いている」。取材に対して、農学生命科学部の豊川好司学部長は率直な感想を語った。「トップ三十の育成とは他を切り捨てることではないか。地方大学の教育・研究レベルが下がる」
 遠山プランで教員養成課程は規模縮小・再編の例として挙げられた。小沢熹・教育学部長はこれに強く反発。「日本は人が資源。人を育てるためには優れた教員を育てなくてはならない。学部縮小は地域教育の衰退を招く」と力を込める。

 外部評価に基づく競争原理導入について、藁科勝之・人文学部長は「人文系の学問は評価されにくい。必然的に縮小・統合の方向へ向かうのではないか」と不安を口にする。さらに、同学部の若手教授は「経済効率だけで大学を削減するのは理解できない。教育理念あっての改革であれば分かるが…」と語った。
 「来るべきものが来たな」。遠藤正彦医学部長は他の教官と違った見方をする。「統合・削減策は以前から言われてきた。医学部は外部の評価を高めるためシステムを変えてきた。生き残る希望はある」と強気だ。
 今のところ、国公私立の計六百四十九大学(二〇〇〇年五月現在)が、どう統合・再編されるのか、「トップ三十校」以外はどうなるかなど、具体案は示されていない。先が見えない中で、教官の一部には「弘大は他大学の分校になる」「付属病院だけが残るのでは」とのうわさが飛び交う。人文学部のある教官は「研究が一段落したら他大学へ移りたい」とも言った。
 教育学部の教授は、非効率的な大学運営、硬直的な体質を認めた上で「現状でいいわけではない」と言い切り、今後大学が生き残るためには「『こういう大学になりたい』という具体的な姿を示し、大学の存在意義を地域にアピールすべきではないか」と提言した。
(弘前支社・菊谷賢記者)

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