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.衆議院文部科学委員会2001.6.6議事録抜粋
2001.6.30  [he-forum 2218] 衆議院文部科学委員会2001.6.6議事録抜粋

衆議院文部科学委員会議録

http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/kaigiroku/009615120010606016.htm


第151回国会 衆議院 文部科学委員会 第 16 号  平成13年6月6日(水曜日)

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/606-saito.html


斎藤:大学の機能を分化させるべきである 70-73

   日本では基礎研究が弱い 83-90
   創造的研究と競争的環境は両立が極めて困難 138-147
   基礎研究を評価をする評価軸はまだ見いだされていない 150-152


遠山:「目きき」の存在、大学人・研究者の自覚、が大事 155-184


#(cf... http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-2-00320.html#2-1 )


  1 ○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

  2
  3  私は、二十分という限られた時間でございますので、飛び入学と大学改革と
  4 いう点に絞って、このテーマで質問をさせていただきます。
  5
  6  一昨日の読売新聞に、遠山大臣と小泉総理とのやりとりが出ておりました。
  7 大学改革ということで、独立行政法人化または民営化ということが話題になり、
  8 総理から遠山大臣に対して「「聖域なき改革」への奮起を促した。」と、この
  9 ように書かれております。これは新聞記事ですのであれですけれども、私も、
 10 日本の改革の中の非常に大きな一つが大学の改革だ、このように思っておりま
 11 す。
 12
 13  しかし、大学に競争原理を持ち込めばいいとか経営を民営化すればいいとか、
 14 それが即大学の活性化、大学の改革ということには、ちょっと私も疑問を持っ
 15 ております。大学の改革の議論の本質に戻る必要があろう、このように思って
 16 おりまして、きょうは飛び入学との関連で質問をさせていただきます。
 17
 18  まず、大学の使命とは何かということを私なりに考えまして、簡単に言えば
 19 教育と研究、この二つであろうと。この二つの教育と研究という仕事を、限ら
 20 れた原資の中でどう最大限の効果を上げていくか、どう最大限の効果を生み出
 21 すようにするか、この観点からの改革でなければならないと思うわけでござい
 22 ます。
 23
 24  この観点からすれば、現状の日本の大学は改革すべき点は多い、私もその点
 25 は認めているところでございます。特に理学、工学、医学、生物学等の分野で
 26 は日本の大学に改革が必要だということは、欧米の大学と比較すればこれは一
 27 目瞭然でございまして、研究、学術、また産官学の連携、アウトプットという
 28 面からも明らかに劣っている、こう思うわけでございますけれども、大臣、日
 29 本の大学制度の問題点、大学改革が叫ばれるゆえんはどこにあるとお考えでしょ
 30 うか。
 31
 32 ○遠山国務大臣 大学改革についての必要性については、私自身も、これから
 33 の二十一世紀の日本を本当の意味で知的な存在としてプレゼンスを高めていき、
 34 それがまた人類の英知に何らか貢献していく、そのためにはやはり大学がしっ
 35 かりしていただかなくてはならないというのは、同意見でございます。
 36
 37  大学改革という言葉でございますけれども、このことは、実は前世紀の末の
 38 ころから頻繁に取り上げられておりまして、特に八〇年代の終わりから九〇年
 39 代にかけまして、大きな大学改革の必要性についての議論がなされ、また、大
 40 学審議会も設置され、そこでさまざまな討論も行われ、大きな改革の方向性は
 41 出されたと思っております。
 42
 43  そのこと自体、今日でも通用できる面がありますし、さらに、新たに時代が
 44 変わったということで、時代が大きく変動しているということで追加していく
 45 べき面があると思いますけれども、一つには、各大学における教育の機能が、
 46 もっと個性を持った、大学ごとに個性と特色を持った形で多様なニーズにこた
 47 えていってもらわなくてはいけない。その中には、非常に水準の高い教育を必
 48 要とする大学もありましょうし、それから、市民としてゼネラルな、教養を十
 49 分に持つような市民を育てていくというような使命を持った大学もありましょ
 50 うし、また、プロフェッショナルをきちんと教育してもらう大学もありましょ
 51 う。そのことが一つ。
 52
 53  それからもう一つ、大学には、やはり高度の研究能力を持っていただかなく
 54 てはならない。すべての大学がそうである必要はありませんけれども、特に日
 55 本では大学院の整備がおくれているわけでございまして、そこを中心として高
 56 度の研究ということにさらに取り組んでいただいて、創造的な知をさらに深め
 57 ていただくということが大事だと思っております。
 58
 59  それと同時に、各大学の運営のあり方ですね。運営のあり方をもっと弾力化
 60 し、大学が陥りがちな閉鎖的な体質から脱皮していただいて、さきに述べたよ
 61 うな二つの事柄が可能になるような運営がそれぞれの大学でなされなくてはな
 62 らないと思っております。そのことを可能にしていくためには、さらに行政と
 63 してもいろいろ手を尽くさなくてはならないと思いますけれども、大きな方向
 64 性としては、やはりすぐれた教育をやっていただくこと、そして、先進的な、
 65 あるいは創造的な研究をしていただくことという先生の御指摘が中心的な目標
 66 であろうと思います。
 67
 68 ○斉藤(鉄)委員 多分、私と大臣と同じ問題意識だと思います。
 69
 70  ちょっと今の大臣の答弁を私なりに理解し、まとめますと、一つは、大学の
 71 持っている教育という機能と研究という機能が、現実には、日本の場合はごちゃ
 72 ごちゃになっていて明確に分かれていない、これをもっと分けて考える必要が
 73 あるのではないかということ。それから、そのそれぞれに、評価と、そのフィー
 74 ドバック機能が働いていない。努力してもしなくても同じという現状。それか
 75 らもう一つは、産官学、この場合の官は、お役所という意味と国立研究所とい
 76 う意味が入りますが、産官学の連携、これは、お金、情報、人事、すべてにお
 77 いてですが、連携がとられていないのではないか。私はこのように、日本の大
 78 学制度の改革に必要な点を考えております。
 79
 80  教育と研究ということですが、まず研究に的を絞りますと、この問題点が浮
 81 き彫りになるような気がいたします。
 82
 83  日本の研究の問題点ということで、これは常々言われていることですが、欧
 84 米に比べ、民が強い。つまり応用研究が多いということ。これは、逆さまに言
 85 うと、官と学が弱い、基礎研究が弱いということだと思います。
 86
 87  先ほど申し上げましたような日本の大学が抱えている問題点、その結果とし
 88 て、基礎的な研究が日本の場合は非常に弱い。基礎研究を担う官、学の研究者
 89 を育てる教育、そして基礎研究能力がないということに尽きるのではないかと
 90 思います。ここを改革するということこそ、真の意味の大学の改革につながる
 91 のではないか。飛び入学ということも、この観点から論ずることがあってもい
 92 いのではないか、このように思います。
 93
 94  そこで大臣にお聞きいたしますが、官、つまりこの場合は国立研究所ですが、
 95 国立研究所、それから大学、これは国立大学や私立大学があると思います。社
 96 会の中における本来の使命である基礎的な研究、応用的な研究は、今、日本の
 97 場合、民間がしっかりやっております。その基礎的な研究を花開かせ、欧米に
 98 負けないレベルに追いつかせる、欧米に負けないレベル、文化的な貢献をする
 99 ためには、何が必要とお考えでしょうか。
100
101 ○遠山国務大臣 先生のおっしゃる官と学との研究水準を高めるために何が必
102 要かということで考えますと、これまでのような研究のやり方をさらに発展さ
103 せる、あるいは活性化させるためには、幾つかの方途が必要だと思っておりま
104 す。
105
106  一つは、研究費についてももっと競争的な資金を拡充していくということが
107 大事でございましょうし、それから若手研究者ですね。若手研究者はいろいろ
108 な可能性を持っているわけですけれども、そういう人たちの自立性を向上させ
109 るための支援策を充実していく必要がありましょうし、また、日本の、特に基
110 礎研究の重要な部分を担っております国立大学でありますとかあるいは国立の
111 研究所のファシリティー、研究施設が大変貧弱なわけでございます。そういう
112 ことで、十分な研究環境が整っていないのをどうするかというような問題もご
113 ざいましょうし、それからさらには、もう少し先を見ますと、大学に来るまで
114 の間の子供たちの科学教育をどうやっていくかというような問題ももちろん絡
115 んでまいります。
116
117  と同時に、大学の中で私が非常に大事だと思われる点は、先ほどの運営の柔
118 軟化ということにも関連いたしますけれども、すぐれた研究者を国際公募して
119 いくぐらいの意気込みでやらないといけないのではないか。私はトルコでの滞
120 在のときに、トルコの大学というのも数が必ずしも多くはないわけですけれど
121 も、私立の大学でも、教官、教員を募集するときには、国際公募しているんで
122 すね。そして、国際的な評価にたえ得る教員を持ってきている。そういう努力
123 をしています。
124
125  日本の大学の場合は、まだまだその辺は十分でございませんし、競争的資金
126 を配分する際にもきちんとした評価がなされているかどうかというような面で
127 も、さらに改善を尽くしていく必要があろうかと思います。
128
129 ○斉藤(鉄)委員 大臣の御答弁、私も同感でございます。競争的資金、また
130 人事の面でも競争的な部分をふやすべきだということ、その点については、私
131 は異論もございません。
132
133  しかし、それにプラスして、やはり基礎的な研究という場合、大学の中で自
134 由な発想が許される、そしてその自由な発想が濶達に議論される、そういうこ
135 とが奨励されるような場面、雰囲気ということも、基礎学問、基礎的な研究に
136 ついては非常に重要ではないかと思います。
137
138  このことは決して、先ほど大臣がおっしゃった競争的な環境、競争的な雰囲
139 気とは矛盾するものではないと思いますけれども、運用を間違えますと、往々
140 にしてその二つは相反するものになってしまう、そうであってはいけないわけ
141 ですけれども。そこら辺、競争的な雰囲気、つまり、評価をきちんとやって、
142 その評価に対してフィードバックをするということと、それから自由な発想。
143 少々とっぴなことを言っても決してつまはじきにされない、かえってまた、そ
144 ういうとっぴな発想なり、これまでの価値観に基づかない発想の方が尊敬され
145 る、そういう雰囲気。この二つはなかなか共存は難しいと思うのですが、共存
146 するような大学、そういう大学を目指すことが真の大学改革なのではないか、
147 このように思うわけでございます。
148
149  この点については、そういう意味では今の大学には評価がないということで
150 ございますが、ある意味では全く別な評価軸を持ってきて、基礎的な学問、こ
151 こ五十年、百年では役に立たないかもしれないと思われるようなものについて
152 もきちんと評価をする全く新しい評価軸を持ってくること、これも大学改革の
153 非常に大きな点ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
154
155 ○遠山国務大臣 基礎研究の評価に当たりまして、御指摘のように、早急な成
156 果を求めるということは決してすぐれた研究を生み出す条件にならないと思い
157 ます。したがいまして、長期的にすぐれた研究をはぐくむという視点をもちろ
158 ん重視しながらも、しかし、どれが本当にすぐれている研究であるかというこ
159 とをきちんと見分ける目ききの存在というものも大変大事でございます。
160
161  それから、新しい発想で出てきた論文であるとか、あるいはアイデアに対し
162 て、今までなかったではないかとか、これは大先生の何々に反するというよう
163 なことで排除するようなことは絶対にあってはいけないと思うのですね。それ
164 はまさに、知の殿堂たるゆえんをみずから崩壊させているようなものだと思い
165 ます。
166
167  ですから、それぞれの分野での目きき、自分もすばらしい成果を上げられた
168 研究者のような方が、次代を育てるという観点で、新しいものもどんどん奨励
169 をし、むしろ励ましてそれをやってもらうような、そういう風土でなくてはい
170 けないと思います。
171
172
173  それは、もうまさに、あすからでもやろうと思ったらできるのですね。何か
174 物的な条件が整わなくてはとかいうことではなくて、日本の大学が、みずから
175 の大学なり研究所なりがみずからの使命を自覚して、そしていい研究を伸ばし
176 ていこうという姿勢になれば、それはすぐにでも取りかかれることだと思って
177 おりますが、しかし、そういうことを可能にしていくいろいろな手だても必要
178 かと思います。
179
180  例えばピア・レビューですね、その分野の研究者による評価というものを重
181 視する。その中に若手研究者の視点も入れていく、さらには論文の量ではなく
182 て質の観点からの評価というものを重視していくようなこととか、いろいろや
183 るべきことはあろうかと思いますが、でも、大事なのは、やはり大学人なり研
184 究者の自覚であると私自身は見ております。
185
186 ○斉藤(鉄)委員 その観点から今回の飛び入学という制度を考えてみますと、
187 大学の使命が教育と研究であるということから考え合わせますと、やはり飛び
188 入学の場合、将来のすぐれた研究者を教育する一つの制度、ある意味では、研
189 究のトップを、頂上を上に上げる制度、このようにとらえることもできるかと
190 思います。
191
192  そういう意味では、大学の使命が基礎研究ということから考え合わせて、そ
193 して、それには非常に柔軟な発想、新しい考え方、これまでの物の考え方を壊
194 すような、そういう思考方法が非常に有効だということを考えますと、ただ単
195 に成績がいいということではなくて、研究仲間から見て、非常に自由な発想に
196 よる独創性があるとか、既成の概念を超えた発想、そういう新規性を持ってい
197 るとか、そういうことで飛び入学ということをとらえ直した方が、より、大学
198 の改革ということからも生きてくるし、飛び入学をするその本人にとっても、
199 将来自分は研究者になるのだ、これはどの分野でもいいと思います、数学、物
200 理に限らないと思いますけれども、そういう形でとらえ直した方がいいのでは
201 ないかと私は個人的に考えておりますが、大臣、いかがでしょうか。
202
203 ○遠山国務大臣 飛び入学の考え方は、全教科で成績優秀な、いわゆる受験エ
204 リートを対象とするものではございません。特定の分野で他にぬきんでてきら
205 りと光る才能を有する者というふうに言えると思います。それは、だれでもな
206 れることではなくて、衆目の一致するところ、非常にすぐれた能力があるな、
207 何かこう、光っているな、そういう能力を持つ人がいるとすれば、既存の学校
208 の枠内で何年ということで抑えるのではなくて、さらに可能性を伸ばすために、
209 まあ十七歳からですけれども、上級の大学がきちんと責任を持って指導するよ
210 と。自分たちの目で見て、その才能なら伸びるよということを確認できた者が、
211 選ばれて飛び入学をできるということであると思っております。
212
213  その意味では、先生の御指摘のとおりですが、ただ、従来にない発想ができ
214 るような子供というようなことに全部変えていきますと、なかなかそれは規定
215 の仕方が大変難しいわけでございまして、とにかく規定の仕方としては、その
216 分野を広く求めて、そして受け取る大学側のいろいろな準備条件も考えながら
217 そういう制度を開いていくというところに、今回の制度改正の意味があると思
218 います。
219
220 ○斉藤(鉄)委員 一つの提案でございますので、また参考にしていただけれ
221 ばと思います。
222
223  最後に、きょうは大学改革ということで、評価ということが重要だという議
224 論がございました。現在も、大学評価・学位授与機構というものが文部科学省
225 の中にあるわけでございますけれども、これは一体、大学改革という観点から
226 踏まえて大学の何を評価しようとしているのか、この点についてお伺いします。
227
228 ○池坊大臣政務官 我が国の大学が、各国のトップレベルとともに発展してい
229 くためには、多元的な評価システムが必要だというふうに思っております。そ
230 のような観点から、昨年四月に、今おっしゃいました大学評価・学位授与機構
231 というものを創設いたしました。国立大学の教育研究について、透明性の高い
232 第三者評価を開始したところでございます。
233
234  この機構においては、大学関係者はもとより、産業界、その他の大学以外の
235 幅広い分野の有識者も参画して、全学テーマ別評価、分野別教育評価、研究評
236 価を行っております。平成十二年度には、全学テーマ別評価として、教育サー
237 ビス面における社会貢献、教養教育を、また分野別教育評価、研究評価として、
238 理学系、医学系の分野の評価に着手したところでございます。また、機構の評
239 価結果は、各大学にフィードバックして、その教育研究活動の改善に役立てる
240 とともに、広く社会に貢献し、大学に対して研究費などの資金を提供してくだ
241 さいます機関や団体が、より適切に、かつ効率的な資源配分を行う、そのよう
242 な参考資料として活用していただけたらというふうに考えております。
243
244 ○斉藤(鉄)委員 大学の本来の使命が知の殿堂、そして基礎的な学術研究に
245 あるということを踏まえていただいての正当な評価をその機構がしていただく
246 ことを望みまして、私の質問を終わります。


-------
辻下 徹
北海道大学大学院理学研究科数学専攻
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
TEL and FAX 011-706-3823
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst

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