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<社説>公務員制度改革 官と民の境目をなくそう.
2001. 6.29 [he-forum 2217] <社説>公務員制度改革 官と民の境目をなくそう(毎日新聞)
<社説>公務員制度改革 官と民の境目をなくそう
毎日新聞ニュース速報
1府12省庁という器はできたが、巨大な権限が集中する霞が関の中央省庁の中身の改革は正にこれからだ。
入省時の年次主義、一定年齢までの横並びといった人事慣行も、なかなか改まらない。業績や能力を評価する仕組みを作り、器にふさわしい中身をどう盛り込むか。
政府の行革推進本部が29日決めた公務員制度改革の「基本設計」は、できるだけ従来の「お役所」固有の人事慣行をなくし、民間に近づけたい、という狙いではある。掲げる看板は「能力主義」だが、これでは不十分に過ぎるのだ。
しかし、能力主義を徹底させるなら、賃金やボーナスに相当な差をつけないと意味がない。労働条件の切り下げも場合によっては必要だろう。それには労使の合意も必要になる。ところが、日本の公務員はスト権や団体交渉権などの労働基本権が制約されている。
労使対等ではないのだ。
「基本設計」では、労働基本権については結論を先送りした。それをあいまいにしたまま、能力主義を徹底させるのは無理だ。
労働基本権を民間並みに与え、場合によっては労働条件の引き下げなども含めたリストラもできるという仕組みにしないと、本当の改革にはなるまい。
なにより「採用試験時の1、2、3種の区分にとらわれない能力本位の人事管理の転換」や「若手の抜てき」を掲げるなら、なぜキャリア制度をなくさないのか。
大学卒業時の試験だけで、決まるキャリア(1種採用者)制度はさまざまな不祥事や特権的天下りの温床ともなり、その弊害が近年目立つばかりだ。
採用試験時の1種と2種の区分をなくし、入省後の適当な段階で、例えばなんらかの管理職試験などで振り分けるハードルを設けた方が競争原理が働く。
ところが近年「官民交流」を掲げながら、一向に進まないのは、給与体系や給与水準の違いもある。雇用保険も公務員にはないなど社会保険制度も違う。こうした垣根を取っ払わねばなるまい。
官から民間企業への天下りについては、人事院による「事前承認制」をやめ、一定の基準を定めた上での「大臣承認」に切り替えるという。しかし、それだけでは不十分だ。第三者機関によるチェックは必要だろう。
「基本設計」は「能力主義」や「官民交流」を唱えながら、それに逆行するキャリア制度や労働基本権には手を触れない。あまりにも「生煮え」の部分が多過ぎる。
官と民の境目をなくす。そのためにより説得力のある改革案に練り直してもらいたい。