独行法反対首都圏ネットワーク


.佐賀新聞社への手紙
2001. 6.29 [he-forum 2215] 佐賀新聞社への手紙

佐賀大学の豊島です.

[he-forum 2213] で紹介された佐賀新聞の論説に関して,次のメールを同社に送りました.


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佐賀新聞御中

         佐賀大学理工学部 豊島耕一
     (国立大学独法化阻止 全国ネットワーク事務局長)
      http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet.html
      phone/fax  +81-(0)952-28-8845


拝啓

貴紙2001年6月28日付の論説,「国立大学再編 地域との関係も重要だ」を拝読いたしました.内容は多岐に亘っておりますが,ここでどうしても重大な点を一つだけ指摘させて下さい.それは,最後の方にある次の一文です.


「佐賀医大と佐大が統合するかどうかは別として、独立行政法人化は必至の状況にある。」


国立大学の独法化は閣議決定され,文部科学省ではそのための準備が進んでいることは事実です.しかしその本格的な検討のプロセス,すなわち国会審議(国立学校設置法の改正が必要)はまだ始まっていないどころか,その法案の骨格さえもありません.このような段階で「必至」と報道することは,そのアナウンス効果によって国会を蔑ろにする事につながらないでしょうか.


あるいは,独法化が誰が見ても当然で,特に対立意見もない,という問題であれば,このような報道態度も自然でしょう.しかし決してそうではありません.学長を含む多くの人が未だに反対を表明しています.すなわち,「必至」であれば反対意見や反対運動が無駄となることも「必至」で,このようなアナウンスによって推進者に一方的に肩入れすることにもなっています.

仮に国会ですでに可決されそうな状況にあるとしても,もしそれが悪法であれば,それにあくまでも反対するというのがジャーナリズムとしてもまっとうな在り方ではないでしょうか.


国立大学の独法化が悪法であると言うだけでなく,現行の教育法体系に反する違法なものであると言うことを認識していただきたいと思います.それは,次のような文献をご覧になることで判明すると思われます.これらと,独立行政法人を定義した「中央省庁等改革基本法」と制度の詳細を決めている「独立行政法人通則法」とを比べていただければ,このことは十分ご理解いただけると思います.法治国である以上,たとえ賛成意見がどんなに多数であろうとも,違法な政策への批判が緩められてはいけません.


さて,悪法であるか,あるいは違法かどうかの貴社の判断はどうなのでしょうか.ぜひともその点を明らかにしていただきたいと思います.
なお,この手紙は文通団(メールグループ)等にて公表いたします事をお許し下さい.

                                    敬具
2001年6月29日


 --- 資料紹介(ほかにも多数ありますが) --- 


三省堂,模範六法,21ページ,1995年
 「大学の学問の自由と自治は、直接には教授・研究者の研究・発表・教授の自由とこれらを保障するための自治を意味する。・・・・・・・−ポポロ座事件−(最大判昭三八・五・二二刑集一七−四−三七〇)」


(すなわち,憲法23条の「学問の自由」は「大学の自治」を含むとされています.)


大学の独立行政法人化はまた,憲法23条だけでなく教育基本法10条にも抵触すると思われます.たとえば,川合章,室井力編「教育基本法 歴史と研究」(267ページ,新日本出版社,1998)には次のようにあります.


 『不当な支配』とは政治的・官僚的教育行政という形式自体の不当性を含む. 『不当な支配』禁止の原理は教育全般に適用され、内的事項の領域のみならず、外的事項にも及び、外的事項による内的事項の『不当な支配』も許されない.


また,拙文「『独立行政法人』の大学への適用は違法か合法か?」をお読みいただければありがたく存じます.

http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/legality.html


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