独行法反対首都圏ネットワーク


国立大学再編 地域との関係も重要だ
2001.6.29 [he-forum 2213] 佐賀新聞論説06/28

『佐賀新聞』論説2001年6月28日付


 国立大学再編 地域との関係も重要だ


 国立大学再編の動きが急ピッチだ。佐賀医科大学も他大学との統合を検討する委員会を近く発足させる。統合先候補の一つとして名前の挙がった佐賀大学も、独自に将来像を模索している。改革は必要だが、自主性、地域性を重視したものでなければならない。
 国立大学(九十九校)の改革は、橋本内閣時代に打ち出された行政改革論議から浮上した。大学自治の特権にあぐらをかいて、非効率な大学運営が行われ、教育・研究の停滞を招いている、というのが、自民党を中心とした見直し理由だった。
 競争意識の導入に欠かせないとして、独立行政法人化の方針が打ち出され、単科大学については、周辺大学との統合検討が要請されていた。
 今月中旬の国立大学長会議で、遠山敦子文科相は「運営基盤強化のためには大胆かつ柔軟な発想で再編、統合を進めることが不可欠」と述べ、同省が積極的に再編を推進していく方針を強調した。
 再編、統合を主張する自民党と、慎重論の大学側との中間点にいた文科省が、小泉内閣の構造改革推進方針を受け、自らの責任で具体化を急ぐ方向を打ち出したわけで、改革は一気に加速しそうだ。
 個別説明で、「私立も含め評価の高い三十大学に資金を重点配分する」など競争主義を打ち出した上、「一県一大学は未来永劫(えいごう)の原則ではない」とし、地方大学にとっては脅しとも取れる厳しい内容だった。
 独立行政法人化を柱とする大学改革について、大学の自由と自治を脅かす選別・淘汰(とうた)策だ、という反発が強かった。しかし、少子化による教員養成課程の見直しなど、環境は大きく変わっている。私立大学が存亡の危機に直面し必死で経営改善に取り組んでいるとき、国立大学としても、時代の要請にこたえる必要がある。
 全国には十三の国立医科大があるが、山梨医科大は単科大学統合の方針に沿って来年度に山梨大学と統合する。大分、宮崎、香川などでも検討が始まっている。
 佐賀医大は統合先として(1)佐賀大学(2)隣県の大学(3)全国の医科大学連合−の三案を選択肢として、来月上旬にも委員会を発足させ、年内の成案を目指す。
 一九七八年に開校した佐賀医大は、人間味あふれる"赤ひげ医者"養成をうたうユニークな教育方針で多くの人材を育て、地域の高度医療に貢献してきた。こうした機能の一層の充実を期待する県民は、統合によるマイナス効果を懸念するに違いない。
 また、統合先として名前の挙がった佐大も、県内の有識者らをメンバーとする運営諮問会議を昨年秋に発足させ、改革の時代にふさわしい運営の在り方を検討している。
 同大は一九四九年に文理、教育の二学部でスタート。県内外の多くの人材を送り込み、現在は四学部で、海洋温度差発電や国際交流事業の取り組みなど特色ある大学づくりに取り組んでいる。
 佐賀医大と佐大が統合するかどうかは別として、独立行政法人化は必至の状況にある。この中で、大学の自主性、自立性をどう確保できるかが最大の課題だろう。文科省は、この点を十分に尊重し進めなければならない。
 地方の立場としては、大学の地域性がいかに保たれるかに注目したい。有明海問題やC型肝炎の多発など、佐賀独自の問題を解決するためには大学の研究が欠かせない。画一的な大学づくりが独自の研究を妨げるような再編、統合には強く反対する。(田中好美)

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