独行法反対首都圏ネットワーク


地方大 「存亡の危機」  「切り捨て」反発広がる
20010.6.22 [reform:03570] 単科大学学長の声(朝日新聞記事)


朝日新聞から転載します。

           6月22日 大学改革情報ネットワーク


『朝日新聞』2001.6.21(木)

改革列島 国立大にも再編の波
 地方大 「存亡の危機」 「切り捨て」反発広がる


 「国立大学数の大幅削減」「国公私トップ30育成」……などを盛り込んだ文部科学省の「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)に、国立大が大きく揺れている。プランは法人化に向けた従来の議論を超えた内容で、国立大にすれば突然現れた「黒船」に映る。特に統合再編の例として名指しされた教員養成、医科など単科大にとっては存亡の危機でもあり、「地方切り捨て」と反発が広がっている。


 「再編統合の動きを加速させていただきたい。場合によっては見捨てなければならない」
 今月14日に東京で開かれた国立大学長会議で、文科省の工藤智規・高等教育局長は「荒療治が必要だ」と強調した。
 学長のひとりから出た「1県1国立大の原則を崩すのか」との質問には、「未来永劫(えいごう)というわけではない」とも答えた。
 プランは「国立大民営化論」の代案として同省が急いでまとめ、小泉内閣の経済財政諮問会議に提案した。法人化による民間手法の導入や、教員養成大・学部の再編、第三者評価による資金重点配分などは従来の政策の延長だが、「大幅削減」「地方移管」「トップ30育成」まで表明したのは初めてだ。だが、学長会議では「国公私トップ30」という数の根拠も説明されなかった。私立まで含めた大学評価の機構もない。このためプランは「財界向け、政治向けに書かれたもの」という受け止め方も強い。
 旧帝国大のひとつ名古屋大の松尾稔学長はプランの考え方を評価し、「改革をしなければ国民の理解は得られない。ただ、哲学など私立大がもうからない学科を切っていく中、将来を考えて研究をするのも学問の役目だ」と話す。統合については、申し入れがあっても「新しい価値を生み出さないような統合は受け入れられない」と慎重だ。
 一方、法人化容認に動き出したばかりの地方の単科大の受け止め方は深刻だ。「30大学以外は切り捨てか」「理工系はとにかく国際競争力をつけ、産業に役立たない大学は県立にしろということではないか」など危機感が高まる。また「研究教育を公共事業と同列に論じられてはかなわない」と不快感も強い。
 島根医科大の下山誠学長は「社会情勢からして、来るべきものが来たと受け止めた。文科省もあのぐらい言わないと格好つかないのだろう。ただ、地方移管といっても200億円以上かかる。県が簡単に引き取れるわけがない」と話している。

学長の声 経済と教育は別■「新興」はチャンス■「米百俵」精神で投資を


●帯広畜産大・佐々木康之学長
 学内で法人化の議論も定まっていない。法人化して独り立ちして生き残れるかどうか微妙だ。だが総合大との統合も相手のあることで、簡単にはいかないだろう

●長岡技術科学大・服部賢学長
 今までより強い案で驚いた。再編など動きが加速するだろう。統合の話はないが、今後は情勢急転も考えられ、他大学との連携も視野に入れなければならないだろう
●東京水産大・隆島史夫学長
 背中をげんのうでたたかれたような感じだ。政治主導の動きに文科省としてぎりぎりの線を打ち出したのだろう。東京商船大と単位互換など連携を話し合っている
●山梨医科大・吉田洋二学長
 2年前、山梨大との統合の考えを文部省に伝えたが、特に支援はしないという話だった。それが今になってこうなるとは。小泉内閣の方針にのってのことだろう
●浜松医科大・寺尾俊彦学長
 来るべきものが来たという印象だ。国民的コンセンサスというなら仕方ないが、道路公団と同じように経済効率を人を育てる教育にあてはめていいものかと思う
●豊橋技術科学大・後藤圭司学長
 トップ30は分野別に決めるという説明だった。新興大学は今まで後回しにされてきたから、かえってチャンスになる。うちにも工業なり環境なり優れた分野がある
●愛知教育大・仲井豊学長
 地方大学は地方の教育力向上、文化発展に貢献してきた。地方切り捨てでいいのか。プランには学術文化の発展を考えた部分が見えない。
日本の将来を懸念する
●神戸商船大・原潔学長
 方針を示すのがこれほど早いとは。神戸大と統合の方針を決めている。大学の名が消えるのはつらいが、教養豊かな海洋人育成には他学問分野との提携は欠かせない
●鳴門教育大・溝上泰学長
 文科省にいわれ再編統合するのでなく、こちらから提案したい。上に流されて、徳島県から教員養成大が消えることにでもなれば、地元に申し訳がたたない
●福岡教育大・菰口治(こもぐち・いさお)学長
 国家財政が苦しいのは分かるが、「米百俵」の精神からしても、苦しい時こそ将来へ投資すべきだ。基礎教育を担う我々のような大学をどう考えているのか
●大分医科大・中山巌学長
 30大学を選ぶのは寝耳に水。それ以外は自然淘汰(とうた)と考えているのでは。注がれた予算に差があり、旧帝大などが有利。大分大と統合の是非を協議している


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