独行法反対首都圏ネットワーク


ある記者の発言より
2001.6.5 [reform:03498] ある記者の発言より


新潟の渡辺です。


 以下の様な趣旨の発言を、私のような者は常にしたいと思っているのですが、日本の科学ジャーナリストの一人である「日経サイエンス」biotechnology 担当の記者の、広い視野で生物学の領域を比較した上での公言ですので、喜んで引用する次第です。


=日経バイオ Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満氏の発言=


 国家公務員が、研究の自由という名の下に伸び伸びと、明日の雇用を心配せずに、好奇心の赴くまま研究に150年真面目に励んできた日本の国立大学には、極めて幅広い生物現象にわたってフェノームを見る目を持つ、この道一筋の研究者がいます。米国や欧州でもこれだけ、生物・医学研究の多様性を保存している国はないのではないでしょうか。今まで非効率だなんだと、国立大学の文句をいっておりましたが、皮肉にも非効率が生んだこの多様性だけは貴重な財産と認識しています。


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 現在日本の大学のほとんどの教員は、外部からの「効率性」「透明性」「納税者への説明責任」などの言葉に強い圧力を受け、また更に独立行政法人を目の前にして、次々と余裕のある研究体制を破壊していいっている。


 その最大の愚作が、波のように模倣が伝わっている、公費の5ー15%吸い上げ、project 研究指向の流れである。一体これまでの研究と projectと称される研究の内容にいかほどの差が生じているのだろうか。また、部局を越えたスケールの大きな project 研究なるものが、ちっぽけな大学内部の異なる部局程度の協力でそんなに急に多数発案されるものなのか、このような使い方こそ、納税者への説明が困難なもの(少なくとも当方には通常の公費より無駄に思われる)ではなかろうか。
 既に、昨年投稿したので、お忘れの方もあるやも知れないが、科学技術白書の以下の記事が何よりも事実を物語っている。

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科学技術白書 1997(平成9)年度


第一部 開かれた研究社会の創造をめざして

  第二節 研究者や民間企業はこう考える


p.23  最大成果をあげた研究資金の性格 (図1-2-7)


第一位)研究所の経常的研究費(均等配分)50.2%

第二位) 国の助成費・政府出資金    43.8%
第三位) 研究所の重点配分                       26.3%
第四位) 官民の共同・受託研究費    11.5%
第五位)  その他の研究費                         11.8%


 もう一つ、プロジェクト研究などを行えば、その書類の申請、審査事後チェック(これが最も弱いのは、もうそれを行う気力と余裕を喪失していると言わざるを得ない)に大変な時間と労力を費やすことになる。
 このような時間は、本来研究そのものに使われるべきものである。これに限らず、現在の種々の「改革」なるものの中には、会議を含めて不必要な時間を空転させるものが大変多い。このような時間は授業の準備、(当方は月曜日の授業に土日を投入)、大学院生の指導、自分の研究に用いられるべきではないだろうか。


 改革が表看板だけになって、研究費の配分を変えたり、教育の制度を変えたりすることばかりにエネルギーを注いでいるが、肝心の研究の中味、授業の中味がどんどん薄くなっている現実を、教員は直視しなくてはいけないのではないだろうか。そもそも教育・研究に投入する時間そのもの(成果とはいわずとも)が極限に向かって減少しているのであるから、一体数年後はどうなるのであろうか。


 再び科技白書の内容を引用して終わる

 以下の内容から見ると、現在の大学に起こっている事象のほとんどは 自殺行為とみなさなくてはいけない。


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p.21  最大成果を上げた研究についての、促進的・阻害的要因   (図 1-2-5)


 ++成果に促進的に働いた因子+++++ (高いものから順)

P1)自分の関心・意欲が生かされた
P2)自分の知識・技術・経験
P3)研究者に許されたテーマ運営の自律性
P4)所外研究者との研究交流
P5)学会参加・発表の自由度
P6)研究に注力できる個人生活・研究所生活


 −−研究に阻害的に働いた因子−−−−−(低いものから)

M1)研究雑務の処理体制(不備)
M2)研究資金使用期間の制約(予算年度などの)
M3)研究者の処遇システム
M4)研究所を対象とした評価制度
M5)研究資金用途の制約(費目間の流用制約など) 


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