独行法反対首都圏ネットワーク


大学改革  めざすべきは活性化だ
2001.6.24 [he-forum 2192] 朝日新聞社説06/24


『朝日新聞』社説2001年6月24日付


  大学改革  めざすべきは活性化だ


  護送船団方式の大学行政をやめる、と文部科学省が宣言した。国立大の独立法人への移行方針を踏まえた改革である。
  「遠山プラン」と名づけられた新方針は、(1)国立大の再編・統合を大胆に進める(2)民間的発想の経営手法を導入する(3)第三者評価による競争原理を導入する、の3大目標を掲げた。「国立大の数の大幅な削減を目指す」「国公私トップ30を世界最高水準に育成」という文言も盛っている。
  国立大を独立法人という組織形態に変えることは、とかく閉鎖的、硬直的な日本の大学の体質を改める格好の機会になる。
  移行時期は03年度がめどとされているが、遠山敦子文科相はこれを繰り上げたい考えのようだ。それによって国立大の改革に弾みをつけようというのであれば、検討されてよいことだ。
  ただし、めざすべきは教育と研究の活性化である。大学関係者らの関心が「削られるのはどの大学か」などと、再編や削減の形にばかり集まるのは建設的でない。  数を減らすというわかりやすい目標に気を奪われて、本当に必要な制度の改革をなおざりにすることのないよう、政府にも大学当事者たちにも強く求めていきたい。
  活力あふれる大学にするには、どんな制度設計が望ましいのか。それを考えるのは、どこよりもまず大学自身であろう。
  全国99の国立大が加盟する国立大学協会はこれまで、独立行政法人通則法のもとでの法人化に反対してきた。
  通則法では、主務大臣が中期目標を立て、法人はそれを実現する中期計画をつくって大臣から認可を受ける。こうした仕組みは、時々の政府と一線を画して自由に真理を探求すべき大学にはふさわしくない、という大学人が多い。同感である。
  期待外れなのは、代わる仕組みとして国大協が6月半ばの総会でまとめた案だ。
  「中期目標は大学が申請し、文部科学大臣が認可する。もしくは、大学の申請を踏まえて大臣が定める」としている。中期計画も「大学がつくって申請し、大臣が審査して認可する」という。これで果たして大学が「自主性・自律性さらには柔軟性を拡大する」ことになるだろうか。
大学の活性化には、専門分野の異なる多様な教員が学生と触れ合うことや、教員が同じ地位に長くとどまらないことが欠かせない。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界高等教育会議も、人の流れを国内的にも国際的にも容易にすることが高等教育の質の確保に不可欠だと宣言している。  例えば、そのために大学の制度はどうあるべきか、という大きな発想が求められているのだ。
  世界高等教育会議は、改革には学生の要求を中心に据えなければならない、とも提言している。もっともなことだ。大学のあり方に学生の意見が反映されるような仕組みもつくっていきたい。

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