独行法反対首都圏ネットワーク


共同通信「6兆円の負債・・・」報道の真意
2001.6.16 [he-forum 2149] 共同通信「6兆円の負債・・・」報道の真意


he-forum ML 各位


北大の法人化問題検討WGが5月初め頃に公表した資料の中に以下の表があります。

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国立学校特別会計独法的会計処理結果


貸借対照表(平成12年度)

#単位は百万円


資産      8,628,832

負債・資本 8,628,832
   負債     6,498,707
       借入金   1,037,210
    建設公債 4,559,352
       引当金     814,316
 資本     2,130,125
       期本金      312,539
       調整差額  2,648,962
       剰余・欠損 -831,376
(註)負債・資本の内書きは主要項目のみ
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これは第8回設置形態検討特別委員会専門委員会D(財務会計)議事概要
(2001.2.22)
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130319-22.pdf
の中にある宮脇委員(北大)が説明の時に使った資料
 2 .国立学校特別会計独法的会計処理結果について
   (1)貸借対照表(平成12 年度)
   (2)コスト負担計算書(平成12 年度)
の一部と推測されます。


  昨日の共同通信ニュース速報[he-forum 2139]の以下の記事は、この資料に基づくか、両者は同じ資料に基づいているものと思います。


独立行政法人会計原則では「負債」には債務以外に予算(運営交付金)が計上されます。事業(国立大学法人では教育・研究という事業)の進行と共に「負債が収益に転換」される(その方式は今なお未定)わけですが、上の資料ではその操作が行われていないために負債6兆円という数字が残っています。しかし、これは高等教育予算そのものであり、それを建設公債で調達したのは政府側の問題であり、4兆5千億は国立学校特別会計の債務ではありません。


高等教育予算を「負債」と呼び、負債=債務という誤解を利用して高等教育が予算を無駄にしているかのような印象を与えようとしている、と言われても仕方のない記事だと思います。国立大学削減の準備として、文部科学省が意図的に行っている世論誘導であるという推測すら成り立ちます。


 記事の内容を会計学の方が検討し、正確な解説を日本社会へ示すことを望みます。


  なお、高等教育フォーラム(http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/)に、この記事に関連した投稿「破たん寸前、日本の国立学校:ツケはまた国民が払う?」

http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/3099.html
があったのに対し、北大医学部の藤田博美教授が以下のように反論しています。適切な基本的視点を呈示していると思いましたのでご紹介します。


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http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/3100.html◆破綻?◆2001年06月15日


「国立大学が何に対して破綻しているのでしょうか?


授業料収入で学校を運営できている高等教育機関は多分世界でも稀でしょう。では、何に対する破綻でしょうか?予算に対して超過すると云うことでしたら、予算そのものが絶対的に不足している(危険校舎の修理もままならない)のですから、予算のきめ方が意図的に破綻するように決められているだけではないですか?それとも、必要経費は充分計上されていてそれでも赤字ということですか?それは、絶対にありえません。1960年代から70年代に建てられた手抜き工事(?)の校舎が全国に存在して、メインテナンスすら行われずに放置されているのが現状です。


これを破綻というのならば、政府の高等教育政策そのものの破綻に過ぎません。」

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辻下 徹
北海道大学
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst



>共同通信ニュース速報2001年6月15日
>
>6兆4900億円の負債 国立学校特別会計の財務
>
> 文部科学省が予算を管理している国立大学などの国立学校特別会計が、二○
>○○年度までの累計で約六兆四千九百八十億円の負債を計上していることが、
>自民党のガイドラインに沿って同省が十四日までに作成した財務諸表で明らか
>になった。          
> 小泉純一郎首相が「聖域なき構造改革」を目指している中で、国立学校特別
>会計を維持するための国庫負担が国民に重くのしかかる結果となっており、今
>後も教育分野に必要な投資として容認していくのかどうか、政府、与党内で議
>論となりそうだ。       
> 文部科学省は国立学校特別会計の財務状況を背景に、国立大学の独立行政法
>人化や大学数の削減を検討しているが、自民党内では「民営化する方が、自由
>な教育、研究活動ができるのでは」(幹部)との声も出ている。      
>
> 公会計貸借対照表などの財務諸表によると、一般会計からの繰入金は二○○
>○年度までの累計で約四兆五千五百九十億円、政府からの借入金は累計で約一
>兆三百七十億円に達している。      
> 同特別会計は一九九八年度に約百七十億円の剰余金があったが、九九年度に
>は約二千九百六十億円の欠損金が生じ、二○○○年度には約八千三百十億円に
>膨らんでいる。国立大学などの敷地や建物、機械器具などの固定資産などは約
>八兆六千二百八十億円。    
> 国立学校や付属病院、研究所などの事業収支は二○○○年度で約一兆九千七
>百億円の赤字となっているが、一般会計から約一兆四千八百七十億円を繰り入
>れ、最終的な赤字を約四千八百三十億円にとどめている。         
>
> 自民党行革推進本部が作成したガイドラインは、減価償却を実施し、退職金

>引当金を計上するなど、民間に準じた会計基準となっている。       

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