学長への要望書(愛媛大学教職員組合)
2001.6.15[he-forum 2145] 学長への要望書
愛媛大学教職員組合連合会は、6月11日、国立大学協会が作成した二つの文書「国立大学法人化についての基本的考え方」及び「国立大学法人化の枠組み」には、国大協自身が確認してきた「通則法の枠内での国立大学の独立行政法人化反対」という方針に反する重大な問題点があるので、鮎川学長に対して拙速に決定することをせず、十分な討論の機会を設けるように要望しました。
愛媛大学法文学部 小淵 港
国大協文書の取り扱いに関する要望書
平成13年6月11日
愛媛大学学長 鮎川 恭三殿
愛媛大学教職員組合連合会委員長
小淵 港
次第に蒸し暑さの強まる季節となりましたが、先生におかれましては大学の自治と研究教育の発展、教職員の労働条件の改善のためにご尽力頂きまして、心よりお礼申し上げます。
さて、去る6月1日、国立大学協会理事会が、「国立大学法人化についての基本的考え方」(以下「考え方」)及び「国立大学法人化の枠組み」(以下「枠組み」)の二つの文書について確認し、6月12日・13日の定例総会に報告することを決めたとされております。
「考え方」においては大学の自主性・自律性の拡大、高等教育に対する国の財政責任の堅持・拡大等が明確に提起されており、私たちもその大筋に賛同するものです。
しかし、「考え方」の各論とも言うべき「枠組み」には、以下のような重大な問題点があると思われ、私たちはこれに到底賛同することはできません。
(1)大学等の管理・運営に学外有識者が参加することについて、あまりにも無限定で、「考え方」で指摘された大学等の自律性との関連性に疑問があることです。
私たちは、学外有識者の参加を常に否定するものではありません。しかし、その場合にも、一方では既にある運営諮問会議の構成等を含め、社会の多様な意見を公平・正確に反映できる仕組みの改善が、他方では学術研究の本質をふまえ、大学の自主性・自律性が発揮できるよう評議会・教授会と学長を軸とした執行体制との有機的連携をはかる仕組みを熟慮する必要があります。とりわけ学長の選考については、大学構成員の意見を第一義的なものとしなければならないと考えます。
(2)大学等の中期目標を主務省の審査・認可事項としていることです。
大学等がそれぞれ目標を掲げて、計画的にこれを実行することは当然であるとしても、これを主務省の認可にかからしめることは諸外国に例を見ないものです。国の関与が必要であるとしても、その性質は「協議」「助言」にとどまるべきものであり、基本的に大学の自主的判断に委ねられるべき性質のものであると考えます。
(3) 評価と資源配分を無媒介に直結していることです。
大学とその教育研究活動に対する評価にせよ、資源配分にせよ、その目的は、大学の自律性の確保と教育研究活動に対する活性化にあります。ところが、「枠組み」には、「考え方」で指摘された大学等の本質にとって両者がいかなる意味をもつのかについて、考察が十分ではありません。
(4) このことと関連して、成果・業績を評価して反映させる給与体系の導入を求めていることです。
「枠組み」では、結果的に「競争原理」を絶対的な価値とみなす立場となっており大きな問題があります。評価システムのあり方を含めて、根本的な再検討が必要であると考えます。
(5)教員の任期制を積極的に導入し、これを促進する給与体系を設けるとしていることです。
「枠組み」では、任期制の導入によって生じる雇用の不安定化と、それが教育研究活動にもたらす弊害について考察していないばかりか、「任期つき雇用」がもたらす全社会的・副次的な影響に一切の考慮を払っていません。この点に関しても、「考え方」に立ち返った再検討が必要であると考えます。
以上のような理由により、私たちはこれらの文書を国立大学協会が拙速に採択すべきではないと考えます。学長におかれては、国大協が慎重な検討を重ねるように努力されるとともに、愛媛大学内においても評議会・教授会をはじめとして大学構成員の十分な討論の機会を設けられるように強く要望するものです。
Minato KOBUCHI
Professor: Faculty of Law & Letters
Ehime University
Bunkyo-cho 3, Matsuyama-shi, 790-8577 Japan.
E-mail minatok@ll.ehime-u.ac.jp
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