独行法反対首都圏ネットワーク


国大協総会にむけた富山大学での取り組み
2001.6.8  [he-forum 2065] 富山大学長に申し入れ,独法化を考える会

浜本@富山大学 です.


国大協総会にむけた富山大学での取り組みを紹介します.


「独立行政法人化問題を考える富山大学教職員の会」が6月8日,小澤次期学長に面会し,以下の申し入れをおこないました.


なお,小澤浩氏は現在は副学長で,6月13日に学長に就任します.国大協総会には,12日は学長代理として,13日は学長として,両日とも彼が出席します.


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富山大学次期学長  小澤 浩 様


                                           2001年6月8日


                          独立行政法人化問題を考える富山大学教職員の会

                                           世話人  別本 明夫
                                                   広瀬   信
                                                   坂口 正志
                                                   浜本 伸治


             6月1日づけ国大協理事会案に関する申し入れ


  国立大学協会(以下,国大協と略記)は6月1日の理事会で,「国立大学法人化についての基本的考え方」および「国立大学法人化の枠組」からなる国立大学の法人化案(以下,理事会案と略記)をまとめました.またこれとは別に,「国立大学の法人化についての要旨」が同日の記者会見で資料として配布されました.この「要旨」は,長尾国大協会長が設置形態検討特別委員会委員長として個人的に作成されたものです.6月12,13日に開催される国大協定例総会にこの理事会案が提案される予定と聞いています.「要旨」によって補強された理事会案は,別紙に述べますような多くの問題点を含んでいると私たちは考えています.この案は本質的に独立行政法人通則法による独立行政法人化に道をひらくものです.しかもこれは,各大学での十分な検討をへて練りあげられたものでもありません.このような案を総会で拙速に決定するべきではありません.もしそのようなことをすれば,この国の将来の高等教育と基礎研究に重大な損失を与えるであろう行為に国大協自身が率先して加担したことになってしまいます.


  富山大学は1999年10月の臨時評議会で,『通則法による国立大学の独立行政法人化には反対である』との意思を表明しました.小澤次期学長は「学長選に臨んで」(2001年4月4日)において,『本学としては、今後ともこの立場を堅持』すると言明されています.また,富山大学教職員組合あての「質問状へのお答え」(2001年4月3日)のなかで,理事会案のもとになった「長尾試案」にふれて,『こちらから向こうの土俵に乗っていった感があります。……このままでは悲惨なことになると思います。』と述べておられます.国大協総会をひかえたこの重大な時期にあたり,私たちは小澤次期学長に次のことを要請します:


1. きたる国大協総会において,理事会案のはらむ問題点を多面的に指摘する こと.そしてそのような案を拙速に承認することのないよう強く訴えるこ   と.


2. 理事会案を早急に全学に配布し全学的な検討に付すこと.そのうえで民主   的な意見集約をはかり,それを国大協の方針に反映させる努力をすること.


[別紙]


             6月1日づけ国大協理事会案の主な問題点


T.6月1日に承認された理事会案は次の2つの文書からなっています:

  ・「国立大学法人化についての基本的考え方」(以下,「考え方」と略記)
  ・「国立大学法人化の枠組」(以下,「枠組」と略記)
またこれとは別に,同日の記者会見で次の資料が配布されています:
  ・「国立大学の法人化についての要旨」(以下,「要旨」と略記)
この「要旨」は,長尾国大協会長が設置形態検討特別委員会委員長として記者会見用に個人的に作成されたもので,理事会に諮られたものではありません.
まず問題になるのはこの3つの文書の整合性です.各論にあたる「枠組」の内容が,総論としての「考え方」から決定的に乖離しています.しかも「要旨」の記述は,もっぱら「枠組」の内容を要約しさらにそれを理論的に補強するものになっています.理事会に諮られていないこの「要旨」が2つの文書に補足された結果,「枠組」のみが強調され「考え方」が後方に追いやられることになりました.一貫性を欠いたこの全体の構成が理事会案の最大の問題点です.


U.「考え方」は,

1)高等教育および学術研究は,国や社会の発展および人類全体の福祉の向上に  不可欠であること
2)これら諸活動の遂行には学問の自由と大学の自治が必要であり,その根拠は 『高等教育および学術研究の本質』そのものにあること
3)大学は,社会とのあいだで一定の緊張関係を保ちつつ社会との開かれた関係  のなかでこれら諸活動を遂行すべきこと
4)国は,これら諸活動の発展に対して第一義的な責務を負うべきことの原則的諸点を指摘しています.これらは大筋で評価できるものです.もしこ
れらの原則を真摯に考慮するならば,通則法にもとづく独立行政法人化は拒否せざるをえないというのが自然に導かれる結論のはずです.


V.ところが「枠組」は,みずから掲げたこれらの原則を棚上げし,通則法に大枠で依拠しつつそれを手直しすることに終始しています.その結果,『高等教育および学術研究の本質』に反した枠組が,学問の自由と大学の自治を危うくする枠組が提案されることになりました.「枠組」の持つ主な問題点を以下に列挙します:

1)学長選挙や大学運営に学外有識者が参画することを無限定に認めています.学長・部局長の権限を強化し,その一方で評議会・教授会の権限を縮小することがはかられています.
2)中期目標・中期計画の策定にあたって,審査・認可の権限を文部科学大臣に委ねています.
3)文部科学省に大学評価委員会をおき,そこがおこなう事後評価を予算配分に直結させることを謳っています.
4)教職員の身分について非公務員型の可能性に言及しています.成果・業績を反映した給与体系の導入を求めています.
5)教員人事にさいして,教育公務員特例法はその『精神』の適用にとどめ,大学の内部規則による選考を強調しています.任期制を積極的に導入し,これを促進する給与体系を設けるとしています.


W.「要旨」は,「国立大学法人化の趣旨」(以下,「趣旨」と略記),「改革によって実現すべき基本的目標」(以下,「目標」と略記)および「改革の枠組みの要点」(以下,「要点」と略記)の3つの部分からなっています.
要点」は「枠組」をおおむね忠実に要約したものになっています.ところが「趣旨」と「目標」の部分は「考え方」の要約にはなっていません.ここで強調されていることは,1)高等教育および学術研究の国際的競争力の強化が緊急の課題であること
2)そのためには,国立大学を競争的環境に置く必要があること

3)国立大学は運営の透明性を確保し,その時々の社会の要請に適切に対応する  必要があることの諸点です.この記述は「考え方」から大きくはずれ,むしろ「要点」と「枠組」を理論的に補強する内容になっています.このようなものを理事会に諮らずに独断で作成し記者会見で配布することは委員長権限を逸脱した行為です.
「要旨」は最後に,『この内容は、国立大学が自ら、競争的環境を実現し、大学の運営に社会の意見が反映される組織に作り変え、自主性・自律性とともに自己責任を明確にする改革を行う決心をしたもの』であり,『社会の意見を反映する仕組を持たない独立行政法人通則法にくらべて、はるかに良い制度設計になっている』と宣言しています.通則法に依拠した国立大学の独立行政法人化には,学問の自由と大学の自治を擁護し発展させる立場から多くの人々が疑問を呈してきました.「要旨」のこの自画自賛的言辞は,これらの意見に対する挑戦であると言わざるをえません.




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