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国大協第108回総会にあたって(要望)ー全大教
2001.6.7 [he-forum 2049] 国大協第108回総会にあたって(要望)
全大教は下記の要望書を会長ならびに会員全てに郵送しました。
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2001年6月6日
国立大学協会第108回総会にあたって(要望)
貴協会が大学・高等教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立に向けて日頃からご尽力されていることに対して心から敬意を表します。
第1に、大学等の管理・運営に学外有識者が参加することについて、あまりにも無限定で、総論で指摘した大学の自主性・自律性との関連性に重大な疑義があります。
私たちは、「大学等の教職員・学生等による自治を必要条件とし、同時に、大学の社会的責務と役割をふまえ、社会に開かれた自治を十分条件として大学等の自律性を完結させる」という立場に立っております。したがって、学外有識者の参加を必ずしも否定するものではありませんが、その場合にも、一方では既にある運営諮問会議の構成等を含め、社会の多様な意見を公平かつ正確に反映できる仕組みの改善が、他方では「学術研究の本質」をふまえ、大学の自主性・自律性を大いに発揮できるよう評議会・教授会機能と学長を軸とした執行体制との有機的連携をはかり、大学が最終的に決定しうる仕組みについて熟慮する必要があります。とりわけ学長の選考については、外部者の意見を聴くとしても、大学構成員の意思を第一義的なものとしなければならないと考えています。
第2に、大学等の中期目標を主務省の審査・認可事項としていることです。
大学等がそれぞれ目標を掲げて、計画的にこれを実行することは当然であるとしても、これを主務省の認可にかからしめることは諸外国に例を見ないものです。私どもは、国の関与が必要であるとしても、その性質は「協議」「助言」にとどめるべきものであり、中期目標等の作成は基本的に大学の自主的計画に委ねられるべきものであると考えます。
第3に、評価と資源配分を無媒介に直結していることです。
大学とその教育研究活動に対する評価にせよ、資源配分にせよ、その目的は、大学の自律性の確保と教育研究活動の活性化の支援にあります。ところが、「枠組」には、「基本的考え方」で指摘した「学術研究の本質」にとって両者がいかなる目的・意味をもつのかについて、深い洞察が欠落しています。また、欧米では、評価と資源配分は区分けしたシステムによって行われていることにも充分留意すべきです。
第4に、このことと関連して、成果・業績を評価して反映させる給与体系の導入を求めていることです。
教育・研究・文化といった、多様で多面的な要素をもつ大学等の営みを、成果・業績という形で一元的に評価することの問題性もさることながら、何をもって「成果・業績」と考えるかも、きわめて困難な課題です。「枠組」では、結果的に「競争原理」を絶対的な価値とみなす立場に接近することとなっているのは遺憾です。私どもは、評価システムのあり方を含めて、根本的な再検討が必要であると考えます。
第5に、教員の任期制を積極的に導入し、これを促進する給与体系を設けるとしていることです。
これもまた「任期制導入」の自己目的化といわざるをえません。そもそも、このような制度の検討にあたって、目的とすべきは大学等における教育研究活動の活性化にあります。そして、これを達成する手段を提起するにあたっては、少なくとも、どのような手段が適合的かを考察し、それら手段がもたらす弊害との慎重な衡量を経て行うべきものです。ところが、「枠組」では、雇用の不安定化と、それが教育研究活動にもたらす弊害についての言及がないばかりか、「任期つき雇用」がもたらす社会的・副次的な影響に一切の考慮を払っていません。これもまた、「基本的考え方」に立ち返った再検討が必要と考えます。
私どもは、国立大学のあり方として、仮に独立行政法人通則法によらない法人制度を1つの選択肢とした場合にも、下記の枠組みが最低限の重点事項として具備されることが必須であると考えます。
貴職におかれましては、このことを充分ふまえられ「基本的考え方」に基づき「枠組」等の再検討を行われるよう切望する次第です。そのことを抜きに貴総会で現「枠組」文書を拙速に報告・確認することは、社会的責務をになう「知の共同体」の未来に禍根を残すものと言わざるを得ません。
私どもの要望の主旨をご高察いただき、英断を下されるよう重ねて要望する次第です。
1 大学は教育研究活動を通じて学術・文化の形成に寄与する自律的存在であり、国はこれをあらゆる側面から支援する責任を負う。このことを明らかにするため、国が大学の設置者であり、費用負担者であることを明確にする。このことが国立大学の設置形態の議論をする前提となるべきである。
2 独立行政法人通則法を前提とした個別法はもちろん、その調整法、あるいは特例法ではあっても、そうした国立大学の設置形態は、大学の自主性と財政基盤の強化にとって致命的となる危険性を有している。「学術研究の本質」をふまえ、大学の自治・自律性の枠組み、組織原理にふさわしい法律のあり方を追求するべきである。
3 大学は、教育研究活動の目的、これを実施する計画と体制について、自主的に企画立案する。これに対する国の関与は大学との協議にとどめ、助言の性格をもつものに限定されるべきである。
4 大学の意思は、その範囲と対象に応じて、評議会と教授会が分担しつつ協力して決定し、学長が執行する。「学術研究」の本質に基づき、自主・自律性を高める立場から、最終決定は、大学がおこなうものとし、その意思形成に際し、社会の多様な意見を公平かつ正確に反映するための適切な機構を置くべきである。
5 学長等、大学の意思決定とその執行に責任を負うメンバーは、大学の構成員による選考に基づいて任命されるべきである。
6 国の責任として、いたずらに身分・雇用関係を不安定にし、教育研究活動の継承性を損なうことがないようにするため、少なくとも当分の間、大学教職員の身分は国家公務員とすべきである。また、教育公務員特例法の適用は維持されるべきである。
7 大学の教育研究活動の本質をふまえ、校費等の教育研究活動の基礎的基盤を形成する経費については、競争的配分とも中期計画や評価にもとづく配分とも区別して財政支出を受けることが保証されるべきである。 そのことを大前提として、重点的・競争的資金の配分については、その公正かつ透明性を明確にする必要がある。
8 財務・会計制度については、その財源拠出が社会の多様な構成員に基づくことを考慮して、透明性を基礎とし、企業会計原則によることなく、大学の公共性と非営利性にふさわしいものとすべきである。
9 大学の評価は自己点検を基本として行う。外部評価・第三者評価は、専門性・科学性・公平性を基礎として、大学の改善と発展に寄与するために行うものとし、いわゆる資源配分に直結されるべきではない。大学評価は、多面的に行われるべきである。
10 大学の社会的責任を大学総体として果たすため、大学間連合ないし連携制度を確立する必要がある。
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