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<社説>大学院改革 未来を左右する重要課題だ
2001.5.31 [he-forum 1999] <社説>大学院改革 未来を左右する重要課題だ(毎日新聞)
<社説>大学院改革 未来を左右する重要課題だ
毎日新聞ニュース速報
新しい法曹養成機関、法科大学院(ロースクール)構想が具体化してきた。政府の司法制度改革審議会は、開校目標を04年度とした。司法はもちろん、大学制度にも大きな影響を及ぼす改革として、注目したい。
国立大学の独立行政法人化など大学では今、多くの改革が進められつつあるが、特徴的な変化の一つは、大学院に重点が移ってきていることだ。「大学院の規模を10年間で2倍程度に」との大学審議会答申(91年)をきっかけに、新しいタイプの大学院の設置や、定員増などの施策がとられ、大学院の量的拡大は、一挙に進んだ。大学院在籍学生は20万人余に達し、答申の目標を超えた。
社会環境の変化が背景にある。多くの学生にとって、大学は就職のためのステップという意識が濃厚だった。いい大学に入れば、いい会社に入れるという認識が定着し、子供も親もそれなりの大学に入ることを目標に掲げた。
右肩上がりの時代には、現実に多くのいい会社は大学のブランドで採用したから、大学が最終ゴールとなり、大学に入れば、勉強は打ち止めとなる。世界にもまれな「勉強しない大学生」があふれることになった。
しかし国際化、情報化が進み、成熟社会に入った今、それでは済まない。安易な採用は会社自体を危うくする。大学の空洞化は社会の停滞、衰退にもつながる。
大学にとっては正念場だ。すでに量的には飽和状態にあり、後は海外を含む大学間でいかに個性、特色を打ち出すかの競争となる。自らを魅力ある存在にするための努力なしには、生き残れない。
大学院の充実は大学の魅力アップの有力な方策であり、日本の未来を活性化する手がかりとなる。今必要なのは「大学で何をやったか、将来何をやりたいか」を胸を張って語れる個性的な若者を数多く送り出し、一方でそれを生かす社会の構築を目指すことだ。
注目されるのは、影の薄かった文科系の大学院の動きである。経営管理などの分野で高度専門職業人を養成する専門大学院(プロフェッショナルスクール)が、制度化された。米国で一般的なビジネススクールの日本版を目指す大学も出てきている。ロースクールも、実用的な専門職業人を目指す流れの延長線上にある。
大学院重点化は、一方で大学の開放、流動化ももたらす。東大大学院では、他大学からの入学者が急増した。ロースクールでは、思考力、表現力などを問う適性試験の導入も検討課題になった。大学院時代には、銘柄大学に入る意味が薄れる。それは受験システムの転換にもつながる。
方向は示されつつあるが、課題も多い。学部学生に対する大学院生の比率は8%ほどで、なお米国などの半分以下だ。質的にも貧弱だ。公的支出が少なく、奨学金制度も米国に比べ格段にお粗末なことが影を落としている。
大学・大学院のありようは、日本の未来の盛衰に深くかかわる。さらなる努力が求められる。
[2001-06-01-00:30]