独行法反対首都圏ネットワーク


北大ネットワーク緊急声明
2001.5.31 he-forum 1995] 北大ネットワーク緊急声明


「独立行政法人化問題を考える北大ネットワーク」は国立大学の独立行政法人化問題が国大協総会を目前にして最終的局面を迎えているとの判断の下に、北海道大学構成員に対し以下の緊急声明を発表したのでご紹介します。 北大ネット世話人


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                       2001年5月31日 

     
      国大協特別委員会の法人化案に関する緊急声明


              独立行政法人化問題を考える北大ネットワーク


北海道大学構成員 各位

  国大協は昨年6月の総会で、文部省が国立大学独立行政法人化のために設置する調査検討会議に参加協力することを決めた。それと同時に、独立行政法人化への対案を独自に模索するための設置形態検討特別委員会を設置した。この委員会が5月21日に<国立大学法人化案[1]>(以下「原案」と呼ぶ)を了承し、「原案」を6月1日の国大協理事会で最終的に調整して、6月12・13日開催予定の国大協総会に報告する予定である。仮に国大協がその報告を了承すると、単に国立大学が独立行政法人化を容認するだけではなく、独立行政法人制度をあえて積極的に国立大学に取り入れる意思を表明することになる。

独立行政法人化問題は最終局面を迎えていると言ってよい。


  委員会のこれまでの議論を追うと、日本の高等教育・学術研究体制全体の未来に関心を持つ発言は少なく、独立行政法人化を前提とした議論に終始しており、それが忠実に「原案」に表われている。


  「原案」は、四角を丸と言いなす詭弁・事の軽重を知らない言説・社会の批判を聞こうとしない姿勢等が目立つ。このような文書を了承することは、「最高学府」の一角を担う99大学長の集う国大協としてふさわしいものではない。
また、日本社会を支える知的・倫理的市民を育てる6万人有余の国立大学教員集団が国大協による当該文書了承を看過することは、由々しいことではないだろうか。


 どこで、四角を丸と言いなしているか? 

 「原案」では、「独立行政法人化」を「法人化」と呼び、独立行政法人化とは無関係であるかのごとき印象を与えようとしている。しかし、後半の「国立
大学法人化の1つのありうる枠組」が描く法人像は、独立行政法人通則法の骨組みに忠実に従っており、通則法を一度でも読んだことがある者ならば、これを通則法に基づく独立行政法人でないと主張できる者は誰も居ないであろう。


 どこが、事の軽重を知らない言説か?

 大学の自治にとって、何が重要なのか。現制度で受けている障害「予算上の規制、給与・服務など人事面の規制、組織の設置改廃や定員管理など組織編成面での規制」と、独立行政法人化による障害「大学の存在基盤の不安定化」「官僚参加の役員会によるトップダウンの大学運営体制」等と、いずれが大学の自治・学問の自由にとり深刻な障害であるか、少し考えれば自明なことであろう。


 どこで、日本社会の批判の内容を聞こうとしていないか?

 「これらの批判を社会の期待のあらわれとして真摯に受け止め、その期待に応え社会の理解を深めるよう、最大限の努力を惜しんではならない。」という「原案」の表現は、批判があったことだけ気にとめるが内容は無視する、という宣言でしかない。
 国立大学は多方面から種々の批判を受けている。木を見て森を見ない罵詈雑言から、国立大学が取り組むべき諸問題「研究優先・教育軽視」、大学入試の初等中等教育への悪影響、大学間の格差、大学教育人事の不透明性等、常勤教員と同数と言われる非常勤講師の問題、学生・院生・若手教員の人権侵害等)に関する批判もある。この中には教育行政こそ責を負うものも少なくない。しかし、この委員会では批判に右顧左眄する発言は多いが、内容を冷静に分析する提案はなく、当然のことながら、これらの諸問題の解決に向けた内容は「中間まとめ」には見られない。


  以上に止まらず、「原案」は、大学組織の設計においても大学自治をほぼ壊滅させる提言・競争原理の導入・大学種別化促進・任期制の広汎な導入・非公務員型の容認等、行政側の希望を大学の希望であるかのように語った部分が夥しい。われわれ大学構成員には、国大協がこの「原案」を了承する理由として、政治的状況に追随すること以外の理由を、考えることはできない。


  国大協が、独立行政法人化を最善の選択肢と判断するのであれば、その根拠を学生・院生を含む全国立大学構成員に説明し意思を問うべきである。なぜならば、独立行政法人化は国立大学を知の共同体から知の企業体へ変質させ、国立大学という場に関わるすべての者の知的活動の基盤を変えてしまうからである。知の企業体を好むものの方が多いのかどうか、確認すべきであろう。


  独立行政法人化問題を考える北大ネットワークは、北大の各部局・各学科・各教職員に、「原案」を吟味し意思表明を行うことを要望する。それは大学の自治を支える最も基本的な行動であると考える。


 また、北大ネットワークは、北大評議会が、少なくとも5月16日の評議会で報告された法人化問題検討WGの「検討経過の中間報告」[2] に基づいて「原案」を批判的に吟味し、学生・院生を含む北大の全構成員に対し、独立行政法人化を選択する必要性の有無について現時点の見解を明確にすることを望むものである。


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資料へのリンク


1. 国立大学協会・設置形態検討特別委員会専門委員会連絡会議5/21了承文書

http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/01521-kdk-an.shtml
(1-1)国立大学法人化についての基本的な考え方
(1-2)国立大学法人化の1つのありうる枠組


2. 法人化問題検討WGの5/16北大評議会における「検討経過の中間報告」

http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/01516-dgh-wg.shtml
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服部 昭仁(Dr. Akihito Hattori )
北海道大学大学院農学研究科
生物資源生産学専攻
畜産資源開発学講座 
畜産食品開発学研究室
Meat Science Lab. 
Division of Bioresource & Product Sci.
Graduate School of Agriculture
Hokkaido Univ.
060-8589 Sapporo, JAPAN
(tel) 81-11-706-3881
(fax) 81-11-716-0879
e-mail: hattori@anim.agr.hokudai.ac.jpnethe1995



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