独行法情報速報 No.5
特集:独法化、校費重点配分
2001.5.25 [he-forum 1972] 千葉大独行法情報速報 NO5
独行法反対首都圏ネット事務局です。
千葉大 独行法情報速報 No.5
特集:独法化、校費重点配分です。
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独行法情報速報 No.5
特集:独法化、校費重点配分
2001.5.25 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
【提言1】各教授会は国大協文書の厳密な検討とその結果表明をさる5月21日開催された国大協設置形態検討特別委員会に同専門委員会連絡会議から、「国立大学法人化についての基本的な考え方」と「国立大学法人化の1つのありう枠組」という2つの文書が提出された。これらの文書は本センターホームページに全文掲載されているが、その最も重要な部分の抜粋を本速報P2に抜粋してある(【開示1】)。この文書は、通則法そのままの適用に反対すると表明しながら、実際は通則法に基づく国立大学独法化の設計書とも言うべきものである(P2〜4の【分析1】参照)。特別委員会はこの文書の修正版を6月1日の国大協理事会へ提出し、理事会は6月12-13日の国大協総会に提案して承認を得ようとしている。独法化を巡る緊迫した事態のなかで、本センターは以下の緊急提言を行うものである。
各部局教授会あるいは教授会下の関連委員会は、国大協特別委員会文書(取りあえず5.21文書、最終的には修正版)が、「通則法による独法化反対」という2000年6月の国大協総会決定を堅持したものなのか、あるいはそれを否定するものなのかを、国大協総会までに厳密に検討すべきである。そして、もし総会決定に反している恐れがあるとの結論に至ったならば、対外的に公表すべきである。議論の放棄やその結果の公表躊躇が、独法化推進に力を貸すことになるとしたら、その教授会は歴史的な責任を問われることになろう。
【提言2】校費に重点配分制を導入すべきではない
5月17日千葉大学評議会において学長より、「校費重点配分を導入している他大学の状況、さらには重点配分を行っていない大学への外部評価が下がる懸念を考慮すれば、千葉大学でも重点配分を行わざるを得ない」という認識が示され、『配分の委員会』の設置が決められた。委員は学長が任命するとされたが、委員数、任期等は不明である。6月28日開催の評議会にこの『配分の委員会』から、具体的な重点配分に回す割合が提案されると思われる。P4の【分析2,3】に基づき以下の提言を行う。なお、東大、京大は本年度においても重点配分を導入していないことを重ねて指摘しておく(本速報No.3参照)。
6月28日評議会において、校費「大学分」に競争的配分導入の決定をすべきではない。大学財政のあり方、評価のあり方に関する科学的な分析と方針確立こそ先行させねばならない。なお、この問題に関する部局の意見を取りまとめることが求められているのであるから、各部局教授会はシミュレーションも含めて厳密な検討を行ない、反対の意思表示を行うべきである。
【開示1】国立大学協会・設置形態検討特別委員会専門委員会連絡会議(2001.5.21)文書:本センターHPに全文掲載されています。
「国立大学法人化についての基本的な考え方」(略)
「国立大学法人化の1つのありうる枠組」(抜粋)
I. 法人の基本および組織・業務
4)法人化の方法:移行時点の国立大学(大学院大学・短期大学を含む)を「国立大学法人法」(代替案;「国立大学法」または「国立大学法人特例法」)によって直接に法人化する。
11)法人の長:法人の長を学長とする。法人の長(学長)を、法人の業務を掌り(最終意思決定を含む)職員を統督する、法人の責任者であり、代表者とする。
12)学長の選考:学長の選考は、各国立大学法人の評議会が行う。評議会による学長の選考に当たっては、外部者の意見を反映させる。(注)
13)役員:法人の役員を、法人の長(学長)と監事の他、法人の長(学長)が指名し評議会が承認する副学長(「教授である学長補佐職」―若干名)等とする。法人の長は、役員に副学長以外の、例えば事務職員のトップ、学外からの適任者などを加えることができる。また常勤の役員の他に、非常勤の役員を置くことができる。
15)運営組織:国立大学法人の管理運営の組織として、役員組織(役員会)、評議会運営諮問会議、教授会を置く。また、必要に応じて部局長会議を置くことが出来る。(注)
16)法人化に伴う権限・責任:法人化に伴う大学の権限と責任の拡大(予算・定員の学内配分、給与水準決定、事務職員人事等)は、基本的には役員組織(役員会)で担うものとする。
17)役員組織:役員組織(役員会)を、法人の長(学長)および、副学長その他法人の長(学長)が指名する役員(監事を除く)によって構成し、学長が統括する法人の執行機関とする。役員組織は法人の業務について企案し執行にあたるが、運営の基本にかかわる重要事項については、評議会に提案し、評議会の議を経るものとする。
19)運営諮問会議:運営諮問会議は学長が指名する学外の有識者によって構成し、大学運営の重要事項について学長の諮問に応じて助言・勧告する。(注)
20)諮問事項:運営諮問会議の諮問事項は、大学の基本計画に関する事項、評価に関する事項、学長の選考基準・方法に関する事項、給与水準に関する事項、組織の改編に関する事項、その他大学の運営に関する重要事項とする。(注)
21)評議会:評議会を法人の審議機関とする。評議会の主宰者及び議長を法人の長で
ある学長とする。(注)
役員に外部から適任者を任用できるようにすることに加えて、外部有識者の運営への参画を−層拡大する方法として、次の3案を基本形として検討する。
第1案:運営諮問会議を改組し、学内者を加えた経営諮問委員会を設ける案
第2案:評議会に外部の有識者を入れる案
第3案:運営諮問会議を改組し、学長らを加えた新しい機能の運営諮問会議を設ける案
II. 目標評価
3) 中期目標・中期計画の策定:中期目標は大学が申請し、文部科学大臣が認可する。(代替案:中期目標は、大学の申請を踏まえて、文部科学大臣が定める。)大学は中期目標を実現する具体的計画を中期計画として作成し、文部科学大臣に申請する。文部科学大臣は、これを審査し認可する。
20)評価結果の予算配分への反映:評価結果は、大学の活性化に資するような方法で、次期中期目標・中期計画において運営費交付金(政策的経費)の配分に反映させる。
III.人事制度
3)職員の身分:大学の教職員の身分については、国家公務員型を基本としつつ、非公務員型の可能性を含め、今後の人事制度の設計の過程で最終的な結論を出す。
4)教員に係る特例の考え方:教員人事に関しては、大学の自主性・自律性を尊重し、教育公務員特例法の精神、考え方を取り入れた制度とし、大学の内部規則で定める余地をできるかぎり設ける。
15)教員の任期制・公募制:内外の優れた研究者の採用が可能になるよう、教員の職務内容(教育、研究、大学の管理運営等)に適切に対応した弾力的で透明性の高い制度とし、教員人事の流動性を高めるために、任期制及び公募制を積極的に導入する。
18)給与体系:教職員の潜在的な能力が発揮されるように、成果・業績を反映した給与体系とする。そのために、職務の性質及び個人の成果・業績を評価するための制度を設ける。
20)任期制教職員給与等:任期制ポストヘの異動を促進するような給与体系を設けるとともに、競争的研究費のオーバーヘッドの一定割合を、任期付教職員の人件費等に充当できる制度とする。
IV.財務・会計
6)運営費交付金の構成:運営費交付金は、政策的運営費交付金と外形標準的に決まる基盤的運営費交付金によって構成する。なお、災害等臨時的支出については別途措置する。
7)基盤的運営費交付金の算定要素:基盤的運営費交付金の算定に当たっては、収入・支出両面において各国立大学法人の業務内容、財務構造、規模等の違いが反映される算定方式、算定要素を導入する。
【分析1】 独立行政法人反対首都圏ネットワーク声明(抜粋)
1.本文書は、三つの論点からなる前文と「国立大学法人化の1つのありうる枠組」と題する個別の論点整理の二部からなる。しかし、前文の全体を読了したのちも、それがなぜ「法人化」という設置形態変更の結論につながるのか、まったく説得的でない。
2.国立大学が公権力から一層自立した自由な大学を建設するために法人格を取得するという課題は、独立行政法人化によっては達成されない。大学の「自主性・自律性」を高めるために独立行政法人化を利用するという考え方に現実性・実行可能性はない。
3.本文書の最大の特徴は、「社会に開かれた大学」という論点によって、もっぱら大学運営への「学外者の参画」を実現しようとしている点にある。独法化された諸機関の事例からもすでに明らかなように、「学外者の参画」とは、財務と労務を中心に官僚や財界、政治の代表を多数受け入れることを通じて、大学を国策遂行の道具とし(ミッションドライブ型の実施機能への特化)、かつ企業化・商業化することに他ならない。文書は、大学の自治の根源を放棄し、大学を、大臣による中期目標、中期計画の認可を通じて基幹的活動を規定されるような「実施機関」に変貌させるものである。学長はそうした実施機関を指揮命令するものとして位置づけられ、その実施に当たってさえ、「学外者の参画」が要求されることになる。
4.「国立大学法人化の1つのありうる枠組」という部分は、実施機関としての組織改変の問題に終始している。そもそも、「国立大学の現状にもさまざまの批判があることは事実である」と文書は述べるが、具体的な批判を何ら示してはいない。どのような批判か、「自民党提言」か、批判をその根拠を含めて具体的に分析することなしに、改革を行うことはできない。大学運営の具体的な分析とイメージを欠いた組織いじりは、何ら意味を持たない。しかも、文書においては、「個性化」の名の下に「自民党提言」の要求する大学の選別と淘汰を容認している。
5.通則法に記された独立行政法人の業務の基本的流れは、中期目標→中期計画→評価というサイクルである。本文書は、種々の条件を付してはいるものの、根元的にこの通則法のサイクルを踏襲している。また、目標・計画・評価のすべてにわたって主務大臣(文部科学大臣)の「認可」や主務省(文部科学省)の評価委員会の評価を必要と
すること、評価に基づく資源配分が行われること、いずれも通則法のスキームと同一である。これは、まさしく独立行政法人化であって、通則法そのままの適用である。
6.大学運営への「学外者の参画」については、三つの案が示されており、そのいずれもが「学外者」の「経営諮問会議」「評議会」「新たな運営諮問会議」への参画を容認している。そこでは各案に付記された「論点」が示しているように、最初から大きな問題を抱えることが予期されている。報道によれば、各大学の判断で三つのうち一つを選択すべきだというが、そもそも三案とも選択肢の名に値しない。
7.大学自治の根幹をなす、学長、評議会、教授会の位置付けについても、文書は基本的に文部科学省調査検討会議の議論にすりよっている。本来、大学運営において執行機能を担うべき学長が「最終意思決定」者と化している。学長選考への学外者の容喙、学長権限・部局長権限の強化(大学や部局の意思の決定者となり、人事権さえ独占する)、評議会・教授会権限の縮減(審議機関化)など、行政改革の本来の主題であった「権限の下方への委譲」「分権化」にも逆行したトップダウンの運営が大学に持ち込まれようとしているのである。これは独立行政法人という手足としての「実施機関」の組織形態に他ならない。
8.教職員の身分については突如として重大な問題が提起されている。教員選考において、教育公務員特例法の適用は廃止され、全学的な基準・方針に基づく上からの選考が強調される。さらに、教員に対する任期制の一層の拡大がうたわれている。そのうえ、文書は「任期付教職員」について語っている。成果・業績主義による賃金、任期付ポストへの異動を促進する物質的インセンティブなど、ことがらは教員任期制についての法的規定をこえて、すべての教員・職員に適用することが意図されている。また、職員についても初めて非公務員型の可能性を提起している。これは従来の国大協の議論においては全く存在しなかった論点である。
9.財務・会計についても問題が多い。運営費交付金は「政策的運営費交付金」(つまりは国策に基づく競争的資金)と「外形標準的に決まる基盤的運営費交付金」によって構成するとしている。これは、大学間、大学内部において競争を促進し、物量的成果を強制するものである。本来、コスト削減を目的とする独立行政法人化において、競争的資金の争奪とは、限られた資源の「共喰い」を強いることなのである。国立大学相互が協力するfederationたる国大協は、「共喰い」によって自らの存立基盤を掘り崩そうというのだろうか。
【分析2】5.17千葉大学評議会「校費重点配分方針」の問題点
1) 目的が不純である。千葉大学における財政運営上重点配分が必要であるという論理ではなく、明らかに文科省や大学評価機構から“良い評価を受ける”ためである。
2) 目的に内在的必然性がないから、当然、まだ、重点配分の対象も方法も決まっていない。
3) 当初“評価に基づく配分”(これには本センターは疑念を表明しているが)は「学内評価委員会」(山口委員長)は具体的な審議が進められていることとなっていたはずだが、同委員会の審議状況は配分問題へ提言をできる状況ではない。これでは、評価制度が配分方法に逆規定されるという、倒錯が起る。
4) そもそも昨年と同額の予算が千葉大学へ配分されるということが明らかでない段階で、重点配分など議論できるはずがない。
5) 「財務会計WG」(松田委員長)の調査においても、現在の校費は水道・電気電話・図書・コピー・教材等のいわば経常経費(ランニングコスト)で精一杯であり、研究などに回せる余裕はない、というところが大半であった。このことは、もし、重点配分のために校費配分が減少するならば、経常的な活動もできなくなることを意味する。
【分析3】シミュレーション:5%(対校費総額)の重点配分計上は、教員当り研究費の12%減少をもたらす。
H12実績は全学=16.8%、部局全体=83.2%である。H13も同額が文科省から配分され、全学分16.8%を維持したまま、総額に対して5%を「重点配分」分として“天引き”されると、部局全体=78.2%.今、もし、部局レベルの共通経常経費がH12で50%かかっており、部局共通経常経費はこれ以上切り詰められないので同じ金額(割合でいうと全体に対して41.6%)がH13も必要であるとすれば、共通経常経費を引いた後の学科教員段階への配分は、78.2-41.6=36.6となる。これは、(41.6-36.6)/41.6=0.12、即ち12%の減少を意味する。つまり5%重点配分は、学科段階では12%の“校費配分減少”となることに留意しなければならない。そのような減少分拡大の理由は、共通経常経費は既にぎりぎりまで切り詰められており、これを削ることは不可能であることにある。すなわち、重点配分は、全学共通経費や部局の共通経費が限界値に達している現状では、教員一人一人への配分経費の大幅な削減なしには行えない「共喰い」政策である。ところで、「財務会計WG」報告で松田委員長は、「個人家計との類推が許されるとすれば、前年に比べて5%以下程度の所得減少はノ..節約、支出先送
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