独行法反対首都圏ネットワーク


5/21国大協特別委「基本的考え方」についての全大教談話
2001.5.25 [he-forum 1967] 5/21国大協特別委「基本的考え方」についての全大教談話

          国立大学協会設置形態検討特別委員会
「国立大学法人化についての基本的考え方」(案)等について(談話)

                                                    2001年5月23日
                                                    全国大学高専教職員組合
                                                    中央執行委員長 和 田 肇

1. 国立大学協会は、5月21日に開催された設置形態検討特別委員会で「国立大学法人化についての基本的考え方」(案) (以下、「基本的考え方」と略)および「国立大学法人化の1つのありうる枠組」(以下「枠組」と略)を大筋で確認した。今後、一定の修正を加え6月12〜13日に開催予定の国立大学協会定例総会に報告される予定である。


2. 私たちは、2000年7月に開催した第22回定期大会で、独立行政法人通則法を前提とした国立大学の独立行政法人化には、教育・学術研究・文化に対する国の責務が後退する反面、大学等の自律性を侵害する危険性が大きい等、多くの問題があることを指摘し、国立大学等が現在置かれている現状に甘んじることなく、全人類的な課題に果敢に取り組むことのできる大学像を求めて、国立大学等の真のあり方を積極的に提起していく基本的な立場を決定した。さらに今年1月の第23回臨時大会では「独立行政法人通則法を前提とした独立行政法人化に反対し、高い自律性を有する大学・高等教育像をめざす立場」を堅持し、これを具体化する政策の実現を求める決議を採択した。


3. このたび国立大学協会が示した2つの文書は、その総論というべき「基本的考え方」で、(1) 現代社会における教育・学術研究・文化は、全人類的な価値に立脚すべきこと(2) これらが「学術研究の本質」に基づき、大学等において自律的・自発的に行われるところに公共性が見いだされるべきこと(3) 大学等は、社会との間で一定の緊張関係を保ちながらも、これらを社会との開かれた関係の中で遂行すべきこと(4) 国はこれらに対して第一義的な責務を負うべきことの諸点を指摘している。

上述した私たちの立場から見て、これらは大筋で評価できるものである。


4. しかしながら、これを具体化する各論にあたる「枠組」には、総論との矛盾を含めて、無視できない重大な問題点があることも同時に指摘せざるをえない。


(1) 大学等の管理・運営に学外有識者が参加することについて、あまりにも無限定で、総論で指摘した大学等の自律性との関連性に疑問があること。
 私たちは、「大学等の教職員・学生等による自治を必要条件とし、社会に開かれた自治を十分条件として大学等の自律性を完結させる」立場に立つ。したがって、学外有識者の参加を常に否定するものではない。しかし、その場合にも、一方では既にある運営諮問会議の構成等を含め、社会の多様な意見(特に、多数決原理によって代表されにくい構成員の意見や批判的な立場)を反映できる仕組みが、他方では「学術・研究の本質」をふまえ、大学の自主性・自律性が最大限に尊重できるよう評議会・教授会と学長を軸とした執行体制との有機的連携をはかる仕組みを熟慮する必要がある。とりわけ学長の選考については、外部者の意見を聴くとしても、大学構成員の意見を第一義的なものとしなければならない。


(2) 大学等の中期目標を主務省の審査・認可にかからしめていること。

大学等がそれぞれ目標を掲げて、計画的にこれを実行することは当然であるとしても、これを主務省の認可にかからしめることは諸外国に例を見ない。国の関与が必要であるとしても、その性質は「協議」「助言」にとどまるべきものであり、基本的に大学の自主的判断に委ねられるべき性質のものである。


(3) 評価と資源配分を無媒介に直結していること。

大学とその教育研究活動に対する評価にせよ、資源配分にせよ、その目的は、大学の自律性の確保と教育研究活動に対する活性化にある。ところが、「枠組」には、「基本的考え方」で指摘した大学等の本質にとって両者がいかなる意味をもつのかについて、考察が不十分である。


(4) このことと関連して、成果・業績を評価して反映させる給与体系の導入を求めていること。しかし、教育・研究・文化といった、多様で多面的な要素をもつ大学等の営みを、成果・業績という形で一元的に評価することの問題性もさることながら、何をもって「成果・業績」と考えるかもまた、きわめて困難な課題である。結果的に、「競争原理」を絶対的な価値とみなす立場に接近することとなっているのは遺憾である。評価システムのあり方を含めて、根本的な再検討が必要である。


(5) 教員の任期制を積極的に導入し、これを促進する給与体系を設けるとしていること。

これもまた「任期制導入」の自己目的化といわざるをえない。そもそも、このような制度の検討にあたって、目的とすべきは大学等における教育研究活動の活性化である。そして、これを達成する手段を提起するにあたっては、少なくとも、どのような手段が適合的かを考察し、それら手段がもたらす弊害との慎重な利益衡量を経て行うべきものである。ところが、「枠組」では、雇用の不安定化と、それが教育研究活動にもたらす弊害について考察していないばかりか、「任期つき雇用」がもたらす全社会的・副次的な影響に一切の考慮を払っていない。これもまた、「基本的考え方」に立ち返った再検討が必要である。


5.この2つの文書はこれからの国立大学のあり方についての基本的なあり方を提起しようとするものである。今後、その積極面を活かし、問題点を克服することを通じて大学人の共通認識を形成することが、大学改革にとって重要となる。こうした認識を得るために早急に各大学での幅広い討議を私たちは要求する。


6. 私たちは、「基本的考え方」の積極面を評価するにやぶさかではないが、「枠組」がもつ問題点は見過ごすことができない。私たちは、大学等に求められている社会的な責務に応え、その本質である「知の共同体」を継承・維持・発展させる立場から、総力をあげて徹底的な討論を行い、意見を反映させるよう全国的な取り組みをすすめていく決意である。


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