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社説=信州大学 地域密着へ試み重ねて
2001.5.18 [he-forum 1943] 信濃毎日新聞社説05/18


『信濃毎日新聞』社説2001年5月18日


社説=信州大学 地域密着へ試み重ねて


 少子化が進み、大学を取り巻く環境は厳しい。学生を引き付ける存在でなければ、存続も危ぶまれる時代だ。信州大学は予算配分の在り方を見直すなど、新たな対応を模索している。地域密着を一つの柱に、一段と魅力を高めるよう期待する。


 十八歳人口が減り、二〇〇九年には「大学全入時代」を迎える見通しである。数字の上では希望者が全員入学できる状況になる。大学が学生を選ぶより、受験生が大学を選ぶといった色彩がますます強まる。


 国立大については行政改革の流れを受けた論議も見逃せない。文部科学省は独立行政法人化を検討中だ。これに絡み、小泉首相が国会で「民営化できるところは民営化する、地方に譲るべきものは地方に譲るという視点が大事だ」と述べてもいる。


 大学としての存在感をどう増していくか。生き残りに向け、それぞれに方策を探るときである。


 信大の将来像は、地域の活力にもかかわる。確かな道筋をつけていかなくてはならない。学部の枠にとらわれない「プロジェクト研究予算」の導入を決めるなど、既にさまざまな動きが出ている。教育、研究の一層の活性化につなげたい。


 まずは、どんな大学を目指すのか基本的な考え方を明確にする必要がある。その際、外せない一つは地域との連携だ。大学が教育や研究を通じて地域に活力を吹き込む。地域は大学を支え、もり立てていく。そんな関係ができれば、心強い。


 これまでも公開講座や企業への支援などで貢献してきた。さらに県民に身近な大学となるよう地域に根差した活動の積み上げを望む。


 一つの試みとして、全学が参加して近くスタートする「諏訪―天竜プロジェクト」に注目したい。諏訪湖と天竜川一帯の「環境」をテーマに歴史や住民意識、産業など多角的に研究を展開するものだ。成果が挙がれば、地方に立脚する総合大学として特色をアピールできる。


 全学の取り組みとして内実を伴わせるのは、必ずしも容易ではあるまい。個別の研究成果を集めるだけでは、物足りない。学部や関係施設が成果を共有し、横断的な研究に発展させるといった姿勢がほしい。


 企業や市民団体にも参加を呼び掛ける考えだ。開かれた形で進めることで地域との連携を望める。折に触れ、経過や成果を分かりやすく伝えていくことも大事である。地域でも関心を注ぎ、かかわれる部分があれば、積極的にかかわりたい。

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