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国立大法人化 教職員の非公務員型も 国大協原案 任期制の導入提言2001.5.17 [he-forum 1932] 東京新聞05/17
『東京新聞』2001年5月17日付
国立大法人化 教職員の非公務員型も
国立大学の法人化について検討を進めていた国立大学協会(会長・長尾真京都大学長)の法人化案が十六日、明らかになった。焦点の一つだった教職員の身分は国家公務員型を基本としつつ、非公務員型の可能性も含めて最終結論を出すとしている。成果や業績を反映したり、任期制ポストへの異動を促すような給与体系の導入も提言。法人(大学)運営の基盤となる国からの交付金を、教育・研究の評価結果に基づいて配分すべきだとするなど、全体に"脱護送船団"を色濃く打ち出した案となった。
国立大学協会は二十一日に開く設置形態検討特別委員会で原案を検討した後、現時点での考えをまとめるとみられる。
その上で組織・業務について▽学長の選考は各法人の評議会が行うが、学外者の意見も反映▽各法人は毎年業務と経理を国民に公開する▽学科などの再編や改組は原則として各大学で行う▽高等教育・学術についての中長期的な政策などを検討する場を設ける―などと具体案を提示した。
各法人が定める中期目標や評価の期間は「四年から六年」と設定。期間中でも必要に応じて弾力的に見直すようにした。
教職員については、任期制や公募制の積極的導入を提言。各教官らが獲得した競争的研究費(科学研究費補助金など)の一定割合を任期付教職員の人件費に充てる制度などと合わせ、流動性の向上を図った。
財務・会計面では、現在ある国立学校特別会計の調整機能を引き継いだ共同機関の設立を検討することや、地方公共団体から各法人への寄付を認めるようにすることが盛り込まれた。
法人化大学に具体像
国立大学協会がまとめた法人化案は、これまでのあいまいな姿勢を一変させる現実的なものとなった。文部科学省が進める検討会議の議論の流れとも近い内容で、二〇〇四年度にも第一陣が移行するとみられる国立大学法人化の具体像がようやく浮かんできた。
国大協では、独立行政法人の大枠を定めた通則法の直接適用には反対の姿勢を崩していない。このため「国立大学法人」という大学独自の法人化の設計図を作ろうと検討を進めてきた。
法人化案の基調にあるのは、大学の自主性・自律性の拡大と、競争的な環境づくりの促進だ。
例えば、教職員の給与は、成果や業績を反映して各大学で決めることとした。任期制の教職員は給与を優遇し、教官の兼業・兼職については規制緩和を打ち出した。
教職員の身分は「国家公務員型を基本」としたが、より自由度・不安定度の高い非公務員型にも含みを残した。
四―六年の研究・教育実績を運営費交付金に反映させることを提示したのは、大学間で基盤的経費にまで格差が出ることを国大協として容認することを意味する。
ただ自由度を高めるだけでは、大学の勝手放題の恐れもある。そこで、文部科学省の評価以外に「学長選考への学外者の意見反映」「監事の一人は学外者に委嘱」「業務・経理の毎年公開」などの歯止めを示した。
法人化の検討が進んだ今になって、小泉純一郎首相が突然民営化や地方移管に言及するなど、国立大学をめぐる無責任な発言が散見される。しかし、高等教育は印刷や車両検査のような定型的な業務とはまったく異なる。日本の将来を支える高等教育、研究充実のために何がベストか―そうした視点で考えるなら、国大協の法人化案は「検討に値する」と言えるのではないか。(加古陽治)
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