独行法反対首都圏ネットワーク


「国立大、非公務員型に」 尾身・科学技術担当相に聞く
2001.5.10 [he-forum 1902] 読売新聞05/09

『読売新聞』2001年5月9日付夕刊

「国立大、非公務員型に」

尾身・科学技術担当相に聞く

規制緩和でベンチャー支援も

  1月の中央省庁再編で、総合科学技術会議が政策推進の司令塔として発足し、4月には今後5年間の政策方針を定める第2期科学技術墓本計画が動き出した。先端科学技術をめぐる激しい国際競争を、21世紀の日本は勝ち抜けるか。科学技術担当相に就任した尾身幸次氏に、課題と抱負を聞いた。
(聞き手・平山定夫科学部長)


尾身幸次氏(おみ・こうじ)


科学技術庁官房総務課長、通産省中小企業庁指導部長を経て1983年、衆議院議員に初当選。94年に科学技術基本法を立案。第2次橋本内閣で経済企画庁長官。主著「科学技術立国論」(読売新聞社)。68歳。


―まず、抱負を一言。


  「第1期基本計画に5年間で17兆円、第2期に24兆円の研究開発投資を行うと明記し、科学技術といえば結構難しい予算も通る状況になった。日本全体が科学技術創造立国に向けて動き出した。我々も全力でやらねばならない」


―旧科学技術会議と総合科学技術会議の違いは。


  「旧会議は年1回程度、報告書などを読んで終わりだった。今度は月1回、首相ら閣僚、有識者が戦略の議論をする。問題提起があり、解決策も出てくる」


―旧会議は調整の役割も果たせなかった?


  「各省の力の方が上だった。今の会議は予算・人員、システム変更などについて議論し、方向付けした政策を私の責任で実行に移す。それができる体制だ」


―IT(情報技術)やゲノムの分野は、縦割り行政で国家戦略がなく、米国に水をあけられた。


  「ITは弾力的な規制緩和ができなかった。ゲノムはバラバラに推進したため、構造解析は米ベンチャー企業『セレラ社』が先行し、米も含め、官は皆遅れた。今後の機能解析は総力で追いかけたい」


―研究の場に競争原理を持ち込む具体策は。


  「優れた研究テーマを持つ研究者に優先的に資金を出す制度を5年ほど前から導入し、今年度は3000億円の枠がある。だが大学内は講座制によって競争原理が働かず、若手が独立できない。国立大は非公務員型の独立行政法人にすべきだ」


―公務員制度の根幹に関わる問題で、一朝一夕にはいかないのではないか。


  「それこそ改革断行内閣の仕事だ。経済への寄与という観点でみた日本の大学教育の充実度は、先進国最低の49位。産官学が共同研究しにくく、年功序列でボスの教授が後任を決める講座制など、古色そう然とした体制が原因だ」


―東大が定年をほぼ一律に65歳に引き上げると決めた。研究、指導能力の個人差は大きいと思うが。


  「大学教授が、雇い主の国民の意見を聞かず、労働条件を勝手に変更するシステムにがく然とした。大学の自治は学問の自由。勝手なマネジメントまで許せるものではない」


―業績に応じて大学教授の待遇も変えろという意見もある。


  「それも本来、文部科学省が決めるべきだ。それができていない現在の大学のあり方がおかしい」


―人材流動化のため、任期制の導入などが進められているが、実効が上がらない。どうするのか。


  「非公務員型にすれば、すべて動く」


―新基本計画に掲げた「ノーベル賞を50年で30人」は実現可能か。


  「私がこの目標を主張した。日本全体の科学技術を底上げしたい。ノーベル賞を欲しいのではなく、それだけの人材を出すことが重要。日本の技術力からみて、戦略的に進めれば、このくらい受賞する人材は出てくる」


―江崎玲於奈博士が「米国のようにベンチャー企業で億万長者になる研究者が続出すれば、一気によくなる」と述べているが、起業家を増やす具体策は。


  「公務員は企業との付き合いに制限が多い。国立大を非公務員型にし、民間との交流を促し、起業意欲のある研究者が外に出やすいようにする。規制緩和でベンチャーを支援したい」

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