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国立病院再編*やみくも過ぎないか
2001.5.5 [he-forum 1890] 北海道新聞社説05/04
『北海道新聞』社説2001年5月4日付
国立病院再編*やみくも過ぎないか
厚生労働省が進めている国立病院・療養所の再編計画で、削減対象とされている道内施設がいよいよ正念場を迎えようとしている。
道内にある十五の国立病院・療養所は幸い、これまで手つかずだった。しかし、先ごろ公表された当面の方策は、稚内病院など四施設を二○○三年度までに廃止し、名寄病院など五施設の存廃について本年度中に結論を出すこととした。
同省が再編を急ぐ背景には、国立病院・療養所の○四年度独立行政法人化に間に合わせる狙いがある。
国立の施設再編は、所在する地域ばかりか道内全体の医療体制に与える影響はすこぶる大きい。
命にかかわる医療行政を期限を区切って行う拙速主義では、住民の不安をかき立てかねない。住民の理解を得られる道をもっと探るべきでないか。
再編計画は旧厚生省が一九八六年に作成し、九九年に見直した。
国が担う医療を「高度・先駆的」と位置づけ、がん、重症心身障害、エイズなど十九の専門分野をあげた。分野ごとに全国一カ所の拠点病院を設け、主要な病院とネットで結ぶ計画だ。
経営効率化による赤字解消を掲げ、全国の二百三十九施設(道内十五施設)を最終的に百五十二施設(同六施設)にする目標だ。
これまでに削減対象の全国八十七施設のうち四十二施設が統合されたり、地元自治体などに経営移譲された。
道内で廃止が明確にされたのは、帯広病院との統合を示されていた十勝療養所(十勝管内音更町)、経営移譲が予定されていた稚内、登別、弟子屈(釧路管内弟子屈町)の四病院だ。
この結論に至る経過を振り返ると、再編に向けた国の強硬な姿勢に、不信感が膨らまざるを得ない。
それが地元自治体でも引き受けられなかったのは、厳しい財政事情や過疎の進展などで経営見通しが立たなかったためだ。措置法の限界もあった。
弟子屈では道厚生農業協同組合連合会が運営する新病院が国立の業務を引き継ぐ。しかし、町が建設費三十六億円などを負担する事態だ。
温泉リハビリを特色にした登別の廃院の遠因には、医師配置などを怠った「立ち枯れ作戦」の実施も指摘される。やみくもな手法といえよう。
道内の再編には当初から、無理があるのではないか。地域住民の不安がすっかり解消されるまで、国立としての存続も選択肢だったはずだ。
いま、名寄など五施設の存廃が検討されている。国民の「生命と健康」を守るべき国立病院の動向に、もっと目を凝らす必要がある。
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