「国立大学の独立行政法人化問題 最新資料集」
東職は5.18集会に向け、「国立大学の独立行政法人化問題 最新資料集」と題した冊子を発行しました。その中から「はじめに」と「目次」をご紹介します。 |
はじめに ≪当面する状況について≫
――国大協総会(6月12、13日)までが大きな山場
「国立大学の独立行政法人化問題」は、1999年の春から夏に、政府の行財政改革の流れの中、とりわけ公務員定数の削減の柱として、急速に現実的な検討対象となってきました。以来、政府をはじめ文部科学省、国立大学協会(国大協)から各大学の教職員組合、学会まで、様々な所で議論が行われてきました。
その間の議論で、主務省・主務大臣の強力なコントロールを基調とする通則法(資料1)にもとづく大学の法人化というのは、大学には相応しくないことが共通了解となってはいます。ですが、昨年5月に自民党が出した提言(資料2)は、実証的な検証など何一つないままに、「国立大学は護送船団」「教授会は既得権の擁護に汲々としている」などの"悪罵"を投げつけ、「学長選考の見直し」「教授会の見直し」「学外者の意見を恒常的に運営に取り入れる」「任期制の積極的な導入」などの「改革」をせまる内容でした。そして、この提言を受けた形で、文部大臣(当時)が正式に国立大学の独法化の検討に着手することを宣言したのです(資料3)。
こうした状況の中、マスコミなどの論調も大学の法人化はすでに決まったかのトーンですし、大学側でさえ、何らかの法人化は不可避との見方が大勢です。しかし、今年に入って行われた東職との交渉の席上で蓮實総長(当時)は、法人化に関しての今後の方向を聞かれ、国立大学のままで残ることもありうることを示唆しています(資料4)。
そして現在、これまでにない極めて重要な局面を迎えつつあります。
今の議論の最も焦点となっているのは、学長−評議会−運営諮問会議など、それぞれの構成と権限です。国大協の中に設けられた「設置形態検討特別委員会」の委員長である長尾氏(京都大学総長)より、「国立大学法人の枠組についての試案」(資料5)が出されています。この「長尾試案」は、独法の枠組みを参考にしている点で、基本的な過ちを犯しています。更に、学長の選考を現在どの大学でも実施されている学内選挙によらず、運営諮問会議を介在させたり、評議会が意思決定機関ではなく審議機関に止まるなど、自民党や文部科学省などの圧力に妥協する姿勢に大きな問題点があります。一方、東京大学は2月20日に「東京大学が法人格をもつとした場合に満たされるべき基本的な条件」(資料6)を承認しました。そこには「長尾試案」とは異なり、評議会を最高意思決定機関と位置づけることや、学長を教授など構成員の選挙で選ぶこと、などが明確に書かれています。
しかし、文部科学省の調査検討会議では、現行よりも大学に対する国のコントロールを強化する方向も含む「独法化後の大学の組織運営案」が発表されています(資料7)。さらに、経済産業省の官僚グループがまとめた、「国立大学法人法案」(資料8)なるものは、科学技術分野を中心として大学を国家戦略に奉仕する機関に従属させようという意図が明瞭です。現在の政治的な力関係を考慮すれば、東大が出した「基本的な条件」を、大学自治・学問の自由を保障する最小限の「砦」とすることさえ、危機的であると言えます。教育や研究の内容を「上」から規定され、学長を自らの意思では選べないとなれば、もはやそれは大学という名には値しない組織です。
文部科学省の調査検討会議は、今までの議論を整理し、連休明けにも「中間まとめ」案、夏〜秋にかけて「中間まとめ」を出すとしています。他方、国大協も4月2日に行われた特別委員会において、来る5月21日に特別委員会として「中間報告」案を出し、6月12,13日の総会で正式決定することを決めました。
今、大事なことは、国大協の「中間報告」を、大学の自治を放棄して事実上の独法化を許すような内容にさせないことです。そのためにも、5月21日に開かれる国大協の特別委員会に対して、学長を大学自身が自ら選考できる(外部の意見に左右されない)ことや、最高の意思決定機関を評議会とすることなどを含め、私たちの声をハッキリと届けることが重要です。佐々木毅
新総長も、雑誌の記事において、独法化の内容やこの間の議論に対しての疑問を示しています(資料9)。
この資料集を活用していただき、1人でも多くの方々が、5.18集会や国大協総会に向けた行動に立ち上がることを願うしだいです。
なお、資料の全文や最新情報については、以下のwebサイトをご参照ください。
◆独立行政法人反対首都圏ネットワーク(東職HP内)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html
◆国立大学独立行政法人化の諸問題(北海道大学教授 辻下氏のサイト)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/
◆はじめに ≪当面する状況について≫ ―国大協総会(6月12,13日)までが大きな山場
◆資料1 通則法の解説
「独立行政法人とはなにか?−通則法の仕組みについて−」抜粋
(1999年8月19日「フォーラム東大改革」No.20 /東大改革 東職特別委員会)
◆資料2 自民党提言
「提言 これからの国立大学の在り方について」抜粋
(2000年5月9日/自民党文教部会・文教制度調査会)
◆資料3 文部大臣説明
「国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明」抜粋
(2000年5月26日/中曽根弘文文部大臣(当時))
◆資料4 蓮實総長(当時)、東職との交渉で発言
「2001.1.10総長交渉報告」抜粋
(2001年1月17日/東京大学職員組合)
◆資料5 長尾試案
「国立大学法人の枠組についての試案」全文
(2001年2月7日/国立大学協会 設置形態検討特別委員会委員長 長尾 真)
◆資料6 東大の「基本的条件」
「東京大学が法人格をもつとした場合に満たされるべき基本的な条件」全文
(2001年2月20日/東京大学)
◆資料7 独法化後の大学の組織運営案
「独立行政法人化後の大学の運営組織について(参考)」
(2001年3月21日/文部科学省「調査検討会議」組織業務委員会(第9回)配布資料)
◆資料8 経済産業省のグループによる「国立大学法人法案」
「国立大学法人法(案)」抜粋
(経済産業省グループによる試案)
◆資料9 佐々木毅 東大新総長インタビュー
佐々木毅「東大はこう変わる 大学らしい大学を目指して」抜粋
(『論座』2001年5月号)
◆参考資料
・東職「職場で話し合おう」シリーズビラ
その1「われわれの職場はどうなるのか?」
その2「国立大学の「独立行政法人化」は、改めて拒否しよう!」
・産業技術総合研究所の人事制度