独行法反対首都圏ネットワーク


国立大学法人化の枠組(検討案)
平成13年5月7日 国立大学協会・設置形態検討特別委員会 専門委員会連絡会議

独行法反対首都圏ネット事務局です。
国大協設置形態検討特別委員会専門委員会連絡会議がまとめた「国立大学法人化の枠組(検討案)」を入手しましたので紹介します、これは、5月21日の国大協設置形態検討特別委員会 に提案され,6月12、13日の総会で決定される原案です。


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国立大学法人化の枠組(検討案) 

平成13年5月7日

国立大学協会・設置形態検討特別委員会

専門委員会連絡会議 

          国立大学の法人化にあたっての基本的考え方 

国立大学協会は、独立行政法人通則法を国立大学にそのままの形で適用することに強く反対するという従来からの一貫した姿勢を変更する必要があるとは考えない。しかし、同時に、国立大学の法人化は、国が高等教育と学術研究における財政的責任を堅持しながら、国立大学の自主性を拡大し個性化をすすめることによって、教育・研究の質を高め、この国の知的基盤の拡大強化をもたらす契機となりうるものとして、国立大学協会としても、これに真摯に対応すべきであると認識する。

このような観点から、国立大学法人化にあたっての国立大学協会の基本的考え方をまとめると、以下のとおりである。 

l.法人化が高等教育・学術研究に対する国の責務の放棄を意味するものであってはならず、とくに高等教育に対する国の財政的責任は堅持され拡大されなければならないこと。これに対応して、国立大学は、社会の期待に応え理解を深めるよう、最大限の努力をすべきこと。

2.法人化は、従来の国立大学が国の行政機関の一部とされていたことに伴うさまざまな制約を解除し、教育研究の発展のための大学の自主性・自律性を拡大するものでなければならないこと。この自主性・自律性の拡大は、当然に自己責任の拡大を伴うものであること。

3.他方、自主性・自律性を拡大した国立大学は、その活力を源泉に、切磋琢磨して個性化をすすめ、高等教育・学術研究の質の向上と発展をもたらさなければならないと同時に、社会に対する一層の説明責任(アカウンタビリティ)を果たさなければならず、社会に対してより一層開かれた存在となる必要があること。 

1 高等教育・学術研究に対する国の責務

高等教育および学術研究の進展は、国や社会の発展に不可欠である。逆にいえば、高等教育・学術研究が衰退するなら、社会の発展は阻害され、ひいては「国が滅びる」ことにもつながる。その意味で、高等教育・学術研究の成果の受益者は、国・社会の全体である。高等教育・学術研究には、広くて長期にわたる外部効果がある。したがって、高等教育・学術研究に要する費用は、基本的には、国や社会が当然に負担すべきコストであるとしなければならない。そして、大学が、高等教育・学術研究の中枢機関として位置づけられる以上、そのような大学の相当部分をみずから設置し維持していくことは、まさしく国の責務に属することである。「国立大学」(あるいは「国が責任を持つべき高等教育機関」)という存在の必然性は、この点にある。イギリス・フランス・ドイツなどヨーロッパの主要国において、ほぼすべての大学が国立(州立)大学であり、フランス・ドイツでは授業料も基本的に無償とされているのは、こうした認識に基づくものといえよう(なお、大学数では私立大学が7割以上を占めているアメリカにおいても、在学生数では州立大学が7割近くを占めている)。

 のみならず、高等教育・学術研究は、人類全体の福祉の向上にとっても不可欠である。とりわけ、21世紀の人類社会は、文字どおり地球規模の、さまざまな困難に直面しており、この解決のためには、高等教育・学術研究が決定的に重要な役割を担わざるを得ない。こうした時代にあって、国として高等教育・学術研究をどの程度重視するかは、ただちに、その国の人類社会全体への貢献度の指標となる。21世紀の国際社会において、日本が、主導的な役割を果たし、尊敬される国となるためには、高等教育・学術研究の推進を最重要政策とすべきである。そのことがまた、政治・経済面でも、日本の国際的地位を向上させることにつながっていくはずである。

ひるがえって、日本の現状は、すでに多くの指摘がなされているように、決して十分なものではない。日本の場合、大学数でも学生数でも、私立大学が7割以上を占めており、また、高等教育に対する公的支出も、対GDP比0.5%程度と、欧米主要国の半分程度でしかない。本来国や社会全体が負担すべき高等教育コストの多くの部分が、私学設置者や学生等に負わされる形で、いわげ外部化されているのが,日本の現状である。こうした現状を改善し、少なくとも、高等教育に対する公的支出を、欧米主要国並みに対GDP比1%程度にまで拡充することが、緊急に求められる。そうではなく、かりにも、国立大学の法人化が、もっぱら国家財政上ないし行政改革の観点から、高等教育・学術研究コストをさらに外部化するための方策として進められるようなことがあれば、それは、国力の低下、国の衰退をもたらすもの以外のなにものでもありえず、とうてい容認できない。

他方、国立大学の現状にもさまざまの批判があることは事実である。国立大学は、これらの批判を社会の期待のあらわれとして真摯に受け止め、その期待に応え社会の理解を深めるよう、最大限の努力を惜しんではならない。その努力なくしては、公的支出の拡大も期待できないであろう。  

2 大学の自主性・自律性

 大学は、なによりもまず、高等教育機関であり、大学における教育の質の向上は研究の質の向上があってはじめて期待できるものである。その意味で、大学における研究と教育は密接に関連しているといえる。ところで、学術研究は、ときの政治社会状況に左右されない自由な発想や、これまで真理・常識とされてきたことを疑うところから出発する。いわば、既成の価値体系・価値観から自由であることが、学術研究の本質である。憲法が保障する学問の自由は、直接的には、国家から自由であることを意味するが、その背後には、こうした学術研究の本質がある。そして、大学は、学術研究の中枢機関でもある。したがって、大学は、既成の価値体系・価値観に拘束される存在であってはならない。いわゆる大学の自治が要請される実質的根拠は、この点にある。

 以上のように、大学の自主性・自律性が必要とされるのは、高等教育および学術研究の本質に基づく。したがって、国立大学の法人化は、この、大学の自主性・自律性を保障し、拡大するものであってはじめて、議論に値する。とりわけ、従来、国立大学が国の行政機関の一部とされていたことに伴う種々の制約(たとえば、予算上の規制、給与・服務など人事面の規制、組織の設置改廃や定員管理など組織編成面での規制など)は、高等教育・学術研究の本質から要請される大学の自主性・自律性に、必ずしもそぐわない部分があったことは否定できない。国立大学の法人化は、こうした制約を根本的に見直し、高等教育・学術研究の本質に沿って、大学の自主性・自律性を拡大するものでなければならない。

 自主性・自律性の拡大は、当然に、大学の自己責任の拡大を意味する。したがって、法人化後の国立大学の運営組織は、大学が自主的で責任ある管理運営を行うことを可能とするよう、制度設計されなければならない。その基本は、大学が内部に自律的かつ効率的な意思決定と執行の体制を持つことである。そのことによって、国立大学は、期待される役割を果たし、世界的に評価されるものとなることを、みずからの責任として課していかなければならない。  

3 社会に開かれた大学             ・

国立大学は、かりに法人化されても、公の負担において運営されるものであることには変わりはない。したがって、国の財政負担増を伴う組織の新設・改編等について国ないし国民の同意を必要とすることは、当然である。また、教育研究目的以外に公金を使うなどの不正を防止し監視する仕組みも、当然に必要である。このかぎりで、国立大学に対する国の関与は否定しえない。しかし、それ以上に、大学で行われる教育研究活動やそれと密接不可分の大学運営に、外部からの規制を持ちこむことは、高等教育研究のシステムを歪める危険性が強い。大学が、既成の価値体系を前提に成り立っている国や社会に縛られないということは、高等教育および学術研究の本質から要請される基本線である。

もとより、このことがいえるためには、大学白身が、切磋琢磨して個性化をすすめ、つねに教育研究の質の向上と発展に最大限の努力を注ぐとともに、社会の要請を不断にとりいれうる体制をそなえていなければならない。とりわけ、国立大学が公の負担で運営されるものである以上、大学の側には、その教育・研究成果を正しく社会に還元し、それが社会に役立つものであることを説明すべき義務がある。ここで、社会に役立つとは、日本の現実においてときとして受け止められがちな現状の社会に直接的・即応的に役立つという意味においてのみ理解されるペきではない。それのみを追求するならば、高等教育研究は退廃するし、社会の発展にもつながらない。社会に役立つかどうかは、グローバルな視点、長期的な視点、あるいは現状変革的な視点など、幅広い視点で複眼的に観察されなければならない。いずれにしても、大学の側が、それをきちんと社会に説明できるのでなければ、その存在意義を問われることとなるのは必至である。大学の自治は、もはや「閉じこもり」の自治ではありえない。国民に対する説明責任や社会との連携などを明確に視野に入れた自治でなければならない。

以上の観点からすれば、高等教育およぴ学術研究の本質を阻害しないで、かつ、従来以上に社会に対して開かれた大学をいかに創り出すかが、こんにちの重要課題として提示されるであろう。これに答えるためには、大学人自身の意識変革が必要であるとともに、制度上の仕組みとしても、高等教育・学術研究に深い理解と高い識見を有する学外有識者を、一定の範囲で大学運営に参与させるなどのことが、構想されてよいであろう。この場合、どのような学外者をどのような形・範囲で参与させるかは、大学運営に学外者を参与させる意義をどこに求めるかによって、自ずと異なってくるはずである。したがって、大学運営への学外者の参与は、それが何のためのものであるのかを明確にしたうえで、それに適した形で制度設計されることが肝要である。

 

国立大学協会は、このような基本的な考え方にたって、国立大学の法人化にあたって準拠すべきものとして、以下のような、国立大学法人化の枠組み(案)を構想した。この枠組みは、一方で、国立大学側の改善改革への強い意欲を反映したものであると同時に、他方では、時として聞かれる国立大学に対する批判を重く受け止め、改善策を含めて検討した結果である。なお、この基本的枠組み(案)は、(1)法律に定めるべきもの、(2)政令または文部科学省令に定めるべきもの、(3)各大学で定めるべきものを、今のところ十分には区別しないで制度の大綱を示している。今後、この三者の十分な振り分けと法令面の検討を行うことにしている。 

 I. 法人の基本および組織・業務

 

1)法人化の意義:国立大学の自主性と自己責任を拡大し、個性化を進め、国立大学の学術研究と高等教育等における質の向上を図るために法人化を行うものとする。

2)法人の単位:1大学1法人とし、1法人が複数大学を有する方式や大学組織と法人組織の分離の方向はとらない。

3)名称:総称は国立大学法人とし、各大学は国立大学法人○○大学と称する。

4)法人化の方法:移行時点の国立大学(大学院大学・短期大学を含む)を「国立大学法人法」(代替案;「国立大学法」または「国立大学法人特例法」)によって直接に法人化する。

5)設置者:国を法人としての各大学の設置者とする。(代替案;国を各国立大学法人の設立者とし、各国立大学法人を各大学の設置者とする。)

6)法人の目的:国立大学法人は、広く、学術・文化の向上と国民の福祉に貢献することを目的とする。また、各国立大学法人は、その個性に応じて、高度の学術研究、大学院教育、国の科学技術・人材養成計画の達成、個人の能力に応じた均等な学部教育機会の提供、地域の教育・学術文化・産業・医療への貢献を行うことを目的とする。

7)法人の義務:国立大学法人は学術研究と高等教育およびこれに直接付帯した業務を行う。国立大学法人は、直接に収益を目的とする事業は行わない。また、各国立大学法人は、その個性に応じて、分野や大学院・学部の別に応じた教育研究の業務を行う。

8)業務の組織:国立大学法人の教育研究の基本組織を、研究科(研究院等の相当組織を含む)、学部(学群等相当組織を含む)、研究所等とし、直接の付帯業務を行う組織を付属病院、付属学校等とする。

9)法人の基本規則:各国立大学法人は、法人の「基本規則」を定め、文部科学大臣に届け出るとともに、これを登記する。法人の「基本規則」には、法人名、所在地、法人の目的、教育研究の業務・組織、役員(付:役員選考基準)等を記載するものとする。

10)アカウンタビリティ:国立大学法人は、一定様式により毎年、業務と経理を国民に対して公開しなければならない。

11)法人の長:法人の長を学長とする。法人の長(学長)を、法人の意思を決定し業務を掌り職員を統督する、法人の責任者であり、代表者とする。

12)学長の選考:学長の選考は、各国立大学法人の評議会が行う。評議会による学長の選考に当たっては、外部者の意見を反映させる。学長は国民(文部科学大臣)に対して責任を負うとともに、学内的には評議会に対して責任を負う。(注)

13)役員:法人の役員を、法人の長(学長)と監事の他、法人の長(学長)が指名し評議会が承認する副学長(「教授である学長補佐職」?若干名)等とする。法人の長は、役員に副学長以外の、例えば事務職員のトップ、学外からの適任者などを加えることができる。また常勤の役員の他に、非常勤の役員を置くことができる。

14)監事:役員のうち監事は、法人の業務の監査に当たる。監事は複数とし、文部科学大臣が任命する。そのうち1名は大学について高い識見を有する学外者のうちから文部科学大臣が指名する。

15)運営組織:国立大学法人の管理運営の組織として、役員組織(役員会)、評議会運営諮問会議、教授会を置く。また、必要に応じて部局長会議を置くことが出来る。(注)

16)法人化に伴う権限・責任:法人化に伴う大学の権限と責任の拡大(予算・定員の学内配分、給与水準決定、事務職員人事等)は、基本的には役員組織(役員会)で担うものとする。

17)役員組織:役員組織(役員会)を、学長および、副学長その他学長が指名する役員(監事を除く)によって構成し、学長が統括する法人の執行機関とする。役員組織は法人の業務について企案し執行にあたるが、運営の基本にかかわる重要事項については、評議会に提案し、評議会の議を経るものとする。

18)役員の分担:役員組織(役員会)を構成する副学長らの役員は、例えば、総務企画、学務、研究、財務、労務等の任務を分担して担当し、法人の長(学長)を助けこれと連帯して評議会に対して責任を負う。役員は担当事務を指揮する。役員の分担と事務組織については法人において定める。

19)運営諮問会議:運営諮問会議は学長が指名する学外の有識者によって構成し、大学運営の重要事項について学長の諮問に応じて助言・勧告する。(注)

20)諮問事項:運営諮問会議の諮問事項は、大学の基本計画に関する事項、評価に関する事項、学長の選考基準・方法に関する事項、給与水準に関する事項、組織の改編に関する事項、その他大学の運営に関する重要事項とする。(注)

21)評議会:評議会を法人の審議機関とする。評議会の主宰者及び議長を法人の長である学長とする。                       ’

22)評議会の構成:評議会を、学長、副学長、学長が指名する教員、部局選出の教授(部局長等)によって構成する。(注)

23)評議会の審議事項:評議会の審議事項を、(1)学長の選考、解任請求、教員の懲戒、教員人事の基本方針、(2)法人の予算および決算、(3)教育研究等の運営の基本方針、(4)学生の身分、(5)法人の目標評価方針、その他法人の運営に関する重要事項とする。役員組織は、これらの事項に関し必要に応じて議案を提出する。(注)

24)部局長と教授会:学部・研究科・研究所等の教育研究の基本となる組織に部局長と教授会を置く。部局長は、部局の意思を決定し業務を掌るとともに、教授会を主宰しその議長となる。教授会を大学の基本方針に基づいて、教育課程の編成、学生の入退学・学位等在籍、その他当該部局の人事・予算等、当該部局の教育研究の重要事項について審議する審議機関とする。

25)部局人事:研究科長・学部長・研究所長等の部局長の選考は、当該教授会の議に基づき、法人の長(学長)が行う。教授・助教授・講師・助手等の教員の任用・昇進にかかる選考は、評議会の議に基づく基準・方針により、教授会の議に基づき、法人の長(学長)が行う。

26)職員人事:学長・監事を除く法人の職員(教員及び教員以外の職員)の任免は、法人の長(学長)が行う

27)中期計画と予算措置:中長期的な学生数・教員数の増減および設備の改廃をともなう研究教育組織の新設・改組・廃止等については、文部科学大臣が各法人(大学)が申請する中期目標・中期計画を審査し認可するところにより、予算措置を行うものとする。

28)基本組織等の改廃:このうち法人(大学)の新設・廃止は、法律に定める。研究科・学部・研究所・付属病院等の新設・改廃は、政令または文部科学省令に定める。

29)下部組織の改廃:研究科・学部・研究所等に属する専攻・学科・研究部門・講座等については、中長期的な学生数・教員数に変化がない限り、各大学において再編改組を行うことができる。しかし、この再編改組については、中期的な目標・計画に掲げ事後評価を受けなければならない。

30)大学共同利用機関:大学共同利用機関の運営組織で、機関の長の選考方法や評議員会、運営協議員会等、大学と異なる点は「国立大学法人法」(代替案;「国立大学法」または「国立大学法人特例法」)に特別の条項を設けて扱う。 

(注)

学外有識者の運営参画は、制度や人選次第では、(1)アカウンタビソテイ、(2)

運営上の専門的能力・知識の導入、(3)社会の要請の取り入れ、(4)学内諸利害調整上の社会的中立的観点の導入、といった点で有意義である。

そこで役員に外部から適任者を任用できるようにすること(項目13?主に(2)の意義)に加えて、外部有識者の運営への参画を?層拡大する方法として、次の3案を基本形として検討する。いずれとするかによって、学長の選考に外部の意見を入れる方法や評議会等の審議事項などに影響がありうる。 
 

1案:運営諮問会議を改組し、学内者を加えた経営諮問委員会を設ける案

 ○委員は学内者と学外者によって構成。学長は入らない。

 ○委員は学長が委嘱。

 ○経営財務に関して学長が諮問。とくにそのうち一定の重要事項については、評議会付議に先だって諮問が必要。

(論点:運営諮問会議の強化になるか、学長が入らないで学長は委員会具申を責任をもって評議会に提案できるか、委員会の意義は何か)

 

2案:評議会に外部の有識者を入れる案

○評議会を、学内の教員と一定数の外部の有識者によって構成。

○外部の有識者は学長が指名。

○審議事項は、経営財務を含む運営上の重要事項。

 (論点:自律性の究極の基礎が崩れないか、学長選考が教育研究の観点に立てるか、逆に外部の数をあまりに制限すると参画にどんな意義があるか)

 

3案:運営諮問会議を改組し、学長らを加えた新しい機能の運営諮問会議を設ける案                  、

○学長が指名する学外の有識者と学長ら役員によって構成。

○学長の諮問に応じて、学長に助言・勧告あるいは意見を具申。

○経営財務事項その他について学長が諮問。

 (論点:諮問する者が会議に入るのは形式的にどうか、諮問に限定できず実質的

に協議機関化するのではないか、名称は諮問会議ではなく審議会でもよいのではないか)   

II. 目標評価

 

 (目標計画)

1)大学の理念等;各大学は長期的な視野に立った目標(理念・目標)を策定し、公表する。

2)大学の重点目標:大学はそれを踏まえ、中期目標・中期計画の期間を越えて特に重点的に取り組む事柄について、中期目標で言及する。

3) 中期目標・中期計画の策定:中期目標は、大学の意見を踏まえて、文部科学大臣が定める。大学は中期目標を実現する具体的計画を中期計画として作成し、文部科学大臣に申請する。文部科学大臣は、これを審査し認可することにより、予算措置を行う。

4)目標・計画の期間:中期目標・中期計画は大学が掲げる目標(理念・目標)にしたがって、4年から6年の期間で作成する。

5)設定目標の内容:中期目標は、各大学における教育研究の高度化、活性化に資するとともに、社会からの要請にも適切に対応した内容とする。

6)目標の全学性・計画の部局性:中期目標には、原則として全学的な内容を記載し、各部局ごとの内容は中期計画の中で記載する。

7)日標・計画の記載方針:中期目標は、主として大きな方向性を示す内容とし、中期計画には、予算の根拠として必要な事項や法令に定める事項の他、大学の社会に対する意思表示として、中期目標を実現するための数値目標や目標時期を含む具体的な内容を記載する。

8)目標の共通性・個性:中期目標は、全大学に共通する内容を基本としつつ、各大学ごとの特色を踏まえ、一層の個性化を促進するよう工夫する。

9)目標・計画の記載事項:目標・計画における記載項目は、新規事業分・教育研究や管理運営等について改革・改善を図るべき項目の外、大学の業務運営の根幹として継続的に維持すべき事項、競争的経費の項目等、重要な事項に限ることとする。

10)運営等の改善に関する事項:教育研究以外の財務内容や業務運営等の改善に関する事項の記載等に際しては、教育研究活動の質の維持及び向上に支障が生じないよう特段の配慮をすることとする。

11)基盤的教育研究経費;予算(人件費、物件費等)、収支計画及び資金化計画等は一括して記載する。

12)中期日棟・中期計画の見直し:大学の教育研究が非定量的かつ常に変化していく性格を有しているものであるところから、中期日標・中期計画の内容は、必要に応じて期間中にも弾力的に見直すことができるものとする。

(評価)

13)文部科学省・大学評価委員会:大学における教育研究の特性を踏まえ、文部科学省に置く評価委員会(大学評価委員会)は、大学評価に相応しい組織とする。

14)大学評価委員会の評価原則・構成:大学評価委員会は、評価の項目、基準、方法、プロセスなどについて、公正で透明な評価の実施に努めることとする。大学評価委員会の委員となる有識者には、大学における教育研究等について専門的知見を有する国立大学等の者を選任することができる。

15)大学評価委員会の事後評価:大学評価委員会の行う事後評価は、大学あるいは部局レベルでの中期目標の達成度、重要事項の履行水準及び財務等の義務の適正な執行等について、種々の評価軸から多面的に行われなければならない。

16)異議申し立て:大学評価委員会は最終の評価結果を決定する前に、その案を大学に示して異議などの申し立てを聞き、必要に応じ修正する過程を経なければならない。

17)第三者評価の尊重:大学評価委員会は教育研究に係る事項については、大学評

価・学位授与機構、その他の機関の行う評価結果を尊重する。

18)自己点検評価の尊重:大学評価・学位授与機構、その他の機関の行う評価においては、大学の個性や、大学の教育研究活動の多様性・長期性に配慮するために、各大学が実施する自己点検・評価などを尊重する。

19)大学の自己点検評価:大学は運営諮問会議等の外部評価を活用して厳正な自己点検に努める。

20)高等教育・学術政策協議の場:高等教育、学術についての中長期的な政策と大学のあり方について検討する場を設ける。

21)評価結果の予算配分への反映:評価結果は、大学の活性化に資するような方法で、次期中期目標・中期計画において運営費交付金(政策的経費)の配分に反映させる。

22)反映方法の検討:評価結果の予算配分への適正な反映の方法と手続きについては、さらに検討する。

(その他重要事項)

23)基盤的教育研究経費の算定:基盤的教育研究経費は外形標準的に定めることとするが、外形が何かについては慎重な検討を要する。

24)評価負担:評価が大学の加重(ママ)な負担とならない制度についてはさらに検討を加える。

25)一層の検討:教育研究の自由を生かし、大学を活性化する評価制度について求められる要件について、さらに検討を加える。

 

                 III.人事制度 

 

1)人事制度の基本:人事制度は、大学の自主性・自律性を尊重するとともに、厳しい自己規律と社会に対するアカウンタビリティを有するものでなければならない。

2)職員人事の基本:人事制度は、教育研究等に従事する人的資源の潜在的な能力が

発揮されるように、多様性と柔軟性を有し、かつ国際的競争に対応しうるものでなければならない。

3)職員の身分:大学の教職員の身分については、国家公務員型を基本としつつ、非公務員型の可能性を含め、今後の人事制度の設計の過程で最終的な結論を出す。

4)教員に係る特例の考え方:教員人事に関しては、大学の自主性・自律性を尊重し、教育公務員特例法の精神、考え方を取り入れた制度とし、大学の内部規則で定める余地をできるかぎり設ける。

5)法人の長:法人の長を学長とする。法人の長(学長)を、法人の意思を決定し業務を掌り職員を統督する、法人の責任者であり、代表者とする。(再)

6)学長の選考:学長の選考は、各国立大学法人の評議会が行う。評議会による学長の選考に当たっては、外部者の意見を反映させる。(再)

7)学長の任命:学長は、評議会での選考を経た後に、文部科学大臣が任命する。

8)学長の任期:学長の任期については、各大学が定める。再任の可否についても同様とする。

9)学長の解任:法人の長としての学長が適切でないとされる場合には、一定の要件の下で、任命権者は、評議会の審査等の手続きを経た上で、解任することができる。

10)役員:法人の役員を、法人の長(学長)と監事の他、法人の長(学長)が指名し評議会が承認する副学長(「教授である学長補佐職?若干名)等とする。法人の長は、役員に副学長以外の、例えば事務職員のトップ、学外からの適任者などを加えることができる。また常勤の役員の他に、非常勤の役員を置くことができる。(再)

11)役員の任免:学長・監事を除く役員の任免は学長が行う。任免の手続は、各大学で定める。

12)役員の任期:学長・監事を除く役人の任期は、学長の任期にしたがう。

13)監事:役員のうち監事は、法人の業務の監査に当たる。監事は複数とし、文部科学大臣が任命する。そのうち1名は大学について高い見識を有する学外者のうちから文部科学大臣が指名する。(再)

14)教授人事:研究科長・学部長・研究所長等の部局長の選考は、当該教授会の議に基づき、法人の長(学長)が行う。教授・助教授・講師・助手等の任用・昇進にかかる選考は、評議会の議に基づく基準・方針により、教授会の議に基づき、法人の長(学長)が行う。(再)教員の任免に関しては、教育公務員特例法の精神と考え方を取り入れ、かつ、大学全体の人事方針の下で、専門性を有する部局の考えが尊重されるような制度とする。

15)教員の任期制・公募制:内外の優れた研究者の採用が可能になるよう、教員の

職務内容(教育、研究、大学の管理運営等)に適切に対応した弾力的で透明性の高い制度とし、教員人事の流動性を高めるために、任期制及び公募制を積極的に導入する。

16)教員以外の職員の任免等:事務職員など教員以外の法人の職員の任免は、法人の長(学長)が行う。(再)専門性に基づく職種・待遇を可能にするために、選考採

用の範囲を広げるとともに、人事交流を推進する。

17)移行措置:現在、大学間等を移動している一部の事務職員については、当分の間、人事交流の推進を図る仕組を検討する。

18)給与体系:教職員の潜在的な能力が発揮されるように、成果・業績を反映した給与体系とする。そのために、職務の性質及び個人の成果・業績を評価するための制度を設ける。

19)給与基準:具体的な給与基準は各大学において決定する。(その場合、各大学における給与決定に資するような給与モデルの作成を検討する。)

20)任期制教職員給与等:任期制ポストヘの異動を促進するような給与体系を設けるとともに、競争的研究費のオーバーヘッドの一定割合を、任期付教職員の人件費等に充当できる制度とする。

21)服務・勤務時間等:教員の服務、勤務時間等は各大学において決定する。この場合、勤務時間管理の在り方を弾力的なものとするとともに、各大学において多様な勤務形態を認めることが可能となるような制度とする。

22)教員の兼業兼職:厳しい自己規律の下に、本務に支障のないかぎりにおいて、教員の社会的貢献のための活動を広く認め、そのために兼業兼職に関する規制を緩和する(その場合、各大学における基本的考え方が異ならないようにガイドラインの作成を検討する。)

23)人事管理:大学が教育研究を担う特殊性を有する組織であることを踏まえ、人員(人件費)の管理に関しては、短期的な視点でなく、中長期的計画に沿って行う。

24)学内配置調整システム:学内における中長期的な人事計画の策定と組織別の教職員の配置等(人件費管理を含む)の調整を行う仕組を設ける。 

IV.        財務・会計 

1)国立大学法人の財政基盤:大学法人の教育研究活動の高度化を促進するため、科学研究費をはじめとした競争的研究資金の拡充を図ると同時に、基盤的な教育研究活動を維持するため、国は中長期的に安定した財政基盤を形成する。

2)使途・運用の裁量性:教育研究活動の自主性を維持するため、財政資金の使途について国立大学法人の裁量権を確保する。

3)大学財務の原則:国立大学法人の財務についてほ、教育研究活動の自主性を維持

し、納税者たる国民の信託に応えられる内部統制制度を確立し、透明性の確保と説明責任が果たせる会計制度の構築を図る。

4)法人の収入構造:国立大学法人の教育研究活動は、出資、運営費交付金、施設費

等の国からの財政資金、授業料や病院収入をはじめとした自己収入等を基礎として形成する。

5)運営費交付金:国は、透明性を確保しつつ中期計画等を基礎として運営費交付金

を各国立大学法人に措置する。

6)運営費交付金の構成:運営費交付金は、政策的運営費交付金と外形標準的に決まる基盤的運営費交付金によって構成する。なお、災害等臨時的支出については別途措置する。

7)基盤的運営費交付金の算定要素:基盤的運営費交付金の算定に当たっては、収入・支出両面において各国立大学法人の業務内容、財務構造、規模等の違いが反映される算定方式、算定要素を導入する。

8)土地建物等:国は各国立大学が現在使用している土地建物を、各国立大学法人に現物出資または無償使用させる。

9)施設費:国は、施設の維持管理・更新等を図るため計画等に基づいて施設費を各国立大学法人に措置する。

10)国立大学法人共同機関:今後の施設整備や法人の運営を円滑かつ着実に進めるため、財政融資資金等からの借入を行う共同機関の設置を検討する。

11)財務制度原則:教職員数等に関する国立大学法人の自主性を確保し、成果・業績を反映したインセンティブを持つ人事給与体系を実現する財務制度を検討する。

12)外部資金:寄付金をはじめとした外部調達資金等自らの努力により獲得した資金については、積立を含め管理運用等に関する自主性が確保できるようにする。

13)地方公共団体の寄付:地方公共団体から各国立大学法人への寄付を可能にする。

14)寄付金等の税制:寄付金等の税制について優遇措置を維持拡充する。

15)特別会計借入債務返済:国立学校特別会計が抱える財政融資資金からの借入債務返済については、借入を行った附属病院を有する各国立大学法人が使途特定自己収入によって計画的に共同機関等を通じて返済する。その際、研究活動等に支障をもたらさないよう臨床部門を含めた人的、財務的措置が図られる仕組みとする。

16)国立大学法人の出資:国立大学法人は、TLO等に出資を行うことができるようにする。

17)会計基準:国立大学法人の教育研究機能の特殊性を踏まえると共に、各法人ごとの運営形態や業務内容の違いを踏まえ弾力的な取り扱いができるように会計基準を設定する。  

 国立大学協会・設置形態検討特別委員会・専門委員会連絡会議(名簿) 

 

座 長    馬 渡 尚 憲 (東北大学副学長)

委 員    小早川 光 郎 (東京大学教授)

   同   浦 部 法 穂 (神戸大学副学長)

   同   奥 野 信 宏 (名古屋大学副学長)

   同   丸 山 正 樹 (京都大学教授)

   同   内 田 博 文 (九州大学教授)

   同   森 田   朗 (東京大学教授)

   同   若 杉 隆 平 (横浜国立大学副学長)

   同   宮 脇   淳  (北海道大学教授)

 




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