独行法反対首都圏ネットワーク |
大学独法化 知的基盤脅かす愚策
(2001.4.30 しんぶん赤旗 主張)
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国立大学を独立行政法人の枠組みをふまえた「国立大学法人」に移行しようと、昨年五、自民党が提言して一年。これを受けて具体的検討に入っている文部科学省の「調査検討会議」が、この夏には中間まとめを発表します。
国公私立のすべて「に
独立行政法人は、「行政組織の減量化、効率化」を目的に人員と予算の大幅削減をすすめう一方で、業務や運営について政府の関与を強めようとする制度です。自民党政府が「省庁再編」にともなう公務員削減の一環として導入したもので、もともと学術、教育をになう機関である大学とは相いれない制度です。
自民党や文部科学省は、「大学の教育研究の特性を踏まえ、独立行政法人通則法との間で一定の調整を図る」としています。しかし、その内容は通則法の基本的なしくみをかえるものではありません。
そればかりか、「調査検討会議」の議論には、大学の意思決定機関となっている評議会の役割を弱めるなど、独立行政法人化によって大学制度を改悪する意図がみられます。自民党などが、「大学自治の根幹」といえる教員による学長選挙を敵視し、学外の有識者などによる学長選考を主張していることも重大である。
文部科学省は、「大学の教育・研究の効率化」が「評価結果を踏まえた適切な資源配分を通じて高められる」といいます。文部科学省の評価委員会から「効率が悪い」と評価されれば予算を削られることになり、教育・研究の自由な発展が損なわれます。また、大学間の財政基盤の格差をいっそう大きくするものです。
いまでも予算が少ない地方の国立大学は、財政基盤が窮地に陥ることが避けられません。「地方国立大学は、地域にとって教育、学術、文化の振興や経済・産業の発展にかかせない」とし、独立行政法人化の「慎重な審議」を求める地方議会の意見書が、すでに五十六自治体からあがっています(四月十日現在)。
文部科学省は、公立大学についても「国立大学に準じた対応を検討する」としました。自治体からの大学運営費がいっそう切り縮められることになります。
国立、公立の大学がこのような状況になれば、私立大学への国庫助成も大きな影響をうけるのは必至です。国公私立にわたって、学費が大幅にあがることも強く危惧されます。
東京大学の前総長の蓮実重彦氏は〇・五パーセントしか高等教育に投資せず・・・・効率化という視点からのみ国立大学に『独立行政法人通則法』を適用しようとしているのですから、政治家たちの発想はあからさまに国益をそこなうものだ」と批判しています(『世界五月号』)。
文部科学省が大学院の狭あいな施設や筑後三十年以上の老朽施設を整備するとした「国立大学施設等緊急整備五カ年計画」を明らかにせざるを得なかったように、大学、学術関係者の粘り強い運動と日本共産党の九〇年代はじめからの提案におされ、やっと腰を上げたものです。
大学予算の増額こそ
いま国がなすべきことは、欧米諸国の水準にも遠くおよばない高等教育予算を抜本的に増額し、国公私立にわたる高等教育全体の豊かな発展をはかることであり、わが国の知的基盤である大学の役割と発展の道を根底から脅かす国立大学の独立行政法人化ではありません。
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