独行法反対首都圏ネットワーク |
調査検討会議「作業委員の立場」
2001.4.16 [he-forum 1823] 調査検討会議「作業委員の立場
国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議「組織業務委員会」(第9回)(平成13年3月21日)配付資料より
大学の運営組織について、作業委員の案の他に、従来の評議会と別の新たな審議機関として,学内者と学外者少数のものからなる運営協議会や経営評議会を設ける案がある。また大学組織とは別に理事会を設ける案もりうる(「未定稿」、参照)。これらを一括して別案と呼ぶことにし、別案について問題と考えるところを記す。
1 基本的前提
1-1 学問の発展、高等教育の充実は、国や社会の発展に不可欠であること。
・学問が廃れ、あるいは高等教育機会が縮減されるなら、社会の発展は阻害され「国は滅びる」。
・学問研究・高等教育にかかるお金は国・社会が当然に負担すべきコスト。
・金を出す以上口も出すべきか?
1-2「口を出さない」のは学問の本質からの要請であること。
・学問はこれまでの「真理」「常識」「価値観」を疑うところから出発する。
・大学における研究と教育は不可分一体。研究における質の向上がなければ、教育の質の向上もありえない。
1-3「社会の要請」にこたえるとは、「いまある状態での社会」に直接役立つことのみを意味しないこと。
・学問研究・教育は、社会の発展や人類の福祉の向上に役立たねばならない。
・ただし、既成の価値観や社会通念に拘束されてはならない。→大学は、「いまある状態での社会」から一定の距離感をもつことも必要。
・「いまある状態での社会」に直接的に役立つ成果のみを大学に求めるなら、学問は停滞、社会の発展も阻害される。
2 大学の運営組織のあり方
2-1 大学の運営組織のあり方は、「いまある状態での社会」から一定の距離を保ちつつ社会の要請に応えることを可能にするものでなければならない。
・研究・教育にたずさわる者の自律的運営を基本に、しかし、それが独善ないし既得権益保持に陥らないようにする仕組みが必要。
・公の負担で運営される以上、研究教育目的以外に使うなどの不正を防止し監視する仕組みは当然必要。ただし、それ以上の口出しは、学問の本質に反する。
2-2 大学運営は、研究・教育と不可分。
・大学運営の中枢に位置する者は、学問・教育に通じている者であることが必要。→たとえば、各部局への適正な予算配分や定員配置は、当該部局で行われる研究・教育の内容を十分に理解していなければ不可能。
・多様化する学問領域のすべてに通じている万能者はいない。
・経済合理性のみを大学運営の指針とすることはできない。一見無駄にみえる研究にも意味があるし、成果がみえるまで時間がかかる場合も多い。
3「運営協議会(審議会)」・「理事会」案の是非
3-1 大学運営の中枢への学外者の参与について
・大学運営の基本にかかわる部分に学外者を参与させるについては、学外者の資質が重要なポイントとなる。
・学問・教育に十分通じていない学外者が大きな発言力をもつ場合には、大学の研究・教育体制は破壊される。
・学外者が「いまある状態での社会」の価値観や社会通念を前提に大学運営の基本を決めてしまうなら、学問の進歩は止まり、社会の発展を阻害し「国を滅ぼす」。
・学外者が、研究・教育に十分通じ実績もある者であれば、学外者の参与も考えられないわけではない。
・理事会方式は、文部科学大臣指名の理事長が大学のトップに立つ点で、制度上も事実上も、大学の自治の直接的な侵害になる。
→かりに国立大学に理事会方式をあてはめるとするなら、理事会は、・その大学を束ねて運営していく能力をもち、・政府・政治家に対して独立で(大学の自治)、・特定企業等の財政支援者にも従属しないことが要求されるが、現在の日本の国立大学をとりまく人的・政治的・財政的状況のもとで、学内選考によらない政府任命の理事長を置くこととすれば、上記要求に反する事態が生ずることは避けられないのではないか?
3-2 経営と教学の意思決定プロセスの分離について。
・大学運営と研究教育の不可分性に反する。
3-3 変革の「論じ方」について。
・目標評価・実績の事後評価に加えて外部者の運営参加を強制するのは、自己責任の拡大や規制緩和という、そもそもの出発点に反する。
・国としての高等教育ビジョンの欠如、実利指向で学問を尊重しない社会、と