独行法反対首都圏ネットワーク


民主党 国立大学の独立行政法人化に関する中間報告
2001.4.14 [he-forum 1820] 民主党中間報告


 http://www.mnaito.com/diet_no151/kokuritudaigaku.htm


年4月12日

国立大学の独立行政法人化に関する中間報告


民主党 文部科学部門会議

国立大学独立行政法人化検討W.T.


大学の果たすべき役割とは何なのかと考えたとき、


○教育の面では、世界に通用する知性・教養・個性を有する人材を供給すること、
○研究の面では、競争力のある新しい産業や技術の源泉として最先端の研究開発を行うこと、
○社会の面では、生涯学習の拠点として地域・社会に開かれた存在たること、です


しかし、今の大学は以上のような役割を十分に果たしているでしょうか。


大学は就職前の単なる一通過点と化し、大学は活力を失い、学生も入学すると同時に学習意欲を途端に喪失するばかりか、最近では基礎学力そのものも問題視されるなど、日本の大学が抱える問題は山積しています。また、優秀な人材が日本の大学から海外へと研究の拠点を移す「頭脳流出」、日本企業による研究機関への投資が海外へ流れる「資金流失」などは、日本の大学にとって深刻な問題を提起しています。


実際、日本企業による大学や国立研究所などへの投資額は、国内向けが907億円なのに対し、海外向けは1,755億円と実に約2倍(98年度)です。日本の大学が取得した特許数は99年度で僅か119件、対する米国は3,870件。研究投資額に対する科学論文数はG7国中最下位。「IMD2000国際競争力ランキング」によれば、47ヶ国中47位。残念ながら、日本の大学は世界的には全く魅力のないものだといわざるを得ません。


ではなぜ、そのような事態に陥ってしまったのでしょうか。


米国の大学は学生を消費者と捉え、「真に学びたい人が、学びたい時に学べる大学教育制度」を前提に、現実の社会がどのような人材を求めているのかを考え、絶えず多様で魅力的な選択肢の提供と自己改革に努めています。さらに大学や教員は、学生や外部評価機関による評価にさらされています。他方、日本の大学は学部・学科の設置や改廃を始め、人事や財務、さらには意志決定においてもその自由を束縛され、大学や教員どうしの競争環境が全くと言っていいほどありません。


このような現状を踏まえたとき、日本の大学を改革するにあたっては、
○大学自身が自己改革を進めることができる環境(大学ガバナンス)づくり
○学びたいひと本位の大学づくり
○大学や教員が互いに切磋琢磨する競争的な環境づくり

以上3点が重要になってきます。


現在、国立大学の独立行政法人化が検討されていますが、以上申し述べてきた理由からこの問題については白紙に立ち返って検討しなければなりません。なぜならば、日本の大学の問題は、国立か私立かといった問題に矮小化されるべきでもなく、また一律に公務員という身分を温存したまま独立行政法人化しても、何ら解決策とはなり得ないからです。


民主党の基本的な考え方としては、先ず現在99ある国立大学の統廃合が必要と考えています。個々の大学の専門化を進め、グループとして一つの大学を形成することもあり得ます。また、学部・学科の設置や改廃などの組織面を始め、教員の給与や任用などの人事面等の自由度を増して、大学自らが創意工夫できる環境を整備します。さらに競争的研究資金や間接経費の導入、教員の任期制の原則義務付けなど、大学間や教員間の競争環境づくりを進めます。以上のことを大前提としつつ、地方分権の流れに沿って国立大学の地方移管や、大学運営の自由度を重視して民営化を進めるべきだと考えます。当然、国の支援は国立・公立・私立といった運営形態を区別することなく、公平に行われなければなりません。ただし例外的に、研究や人材育成などの面で国家戦略上必要と認められる場合においてのみ、国立大学を残すことを認めます。


以上を踏まえ、現在、政府で検討されている「国立大学の独立行政法人化」については、

(1)将来、地方移管あるいは民営化するまでの過渡的な形態と明確に位置付けること、
(2)身分を非国家公務員型とすること、
(3)国益的見地からのみ国立大学院大学を残すこと、
以上3つの条件をすべて満たす場合にのみ、初めて検討に値するものと考えます。


以上


大学改革に対する考え方


(1) 大学の創意工夫を活かすために

  学部・学科の設置および改廃の完全自由化
  大学経営の強化


(2) 学びたいひと本位の大学を目指して

  奨学金制度の抜本的な拡充
  大学評価制度の導入
  単位互換制度の弾力化
  海外との共同研究体制の整備


(3) 大学の自由で競争的な環境を実現するために

  教員公募制の義務化
  教員の給与の自由化と任期制の導入
  競争的研究資金の導入
  間接経費(Indirect Cost)の導入
  民間資金の活用
  大学教員の特許取得の促進


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大学改革に対する考え方


戦後、国立大学は文部省の強い規制や指導の下、東大を頂点とするピラミッド型の護送船団方式がとられてきました。文部省に従っていれば一律に予算が配分され安定した運営を約束されていました。


しかしこれは一方で各大学の運営の自由が制約を受け、独自の教育・研究内容の提供という意味での大学の自治は機能せず、研究活動の源泉になる斬新なアイディアや奇抜な発想が生まれにくい環境を作り出しました。


大学が個性と特色を発揮し、高等教育としての質の向上をはかるためには、人事、予算、学部の設置などにおける大学の自主性が不可欠です。各大学の創意工夫が可能な環境を早急に整備すべきです。


さらに、独創性を育む研究環境を作るためには、研究者の意欲と能力が報われるシステムを構築すべきです。自由で競争的な大学・活力ある研究環境を実現していかなければなりません。


(1) 大学の創意工夫を活かすために《学部・学科の設置および改廃の完全自由化》

大学が自らの責任で教育・研究を行う以上、学部・学科の設置および改廃を完全に自由化します。教育課程そのものも、例えば4年制のリベラルアーツカレッジと、海外を含む他大学出身者に広く門戸を開いた大学院とに再編制するなど、各大学が大胆に特色を打ち出せるよう改めます。


《大学経営の強化》

教学と経営とを明確に分離し、経営に関する過度な教授会自治を排するとともに、経営権限を明確化したうえで学長の大学経営におけるリーダーシップを強化します。またそのために、経営の専門家を拡充するなど学長を補佐する執行部体制の強化をはかります。


(2) 学びたいひと本位の大学を目指して

《奨学金制度の抜本的な拡充》
  学びたいひとが金銭的な理由に囚われることなく自由に大学を選択でき、また国公立及び私立大学間の競争を促進するために、国の支援は大学という機関への補助から学びたい個人への補助に移行させ、奨学制度を大幅に拡充させます。


具体的には、希望者全員に奨学金を支給し、またその額についても生活費をも賄うに十分なものとします。そして新しい奨学金制度の普及にあわせて、大学や大学院そのものへの助成は順次削減します。この結果、表面的には学費が高くなりますが、奨学金制度の拡充により、資力がないために進学できない事態を阻止します。


さらに成績に応じて累進的に支給金額を増額したり、返納学を減額あるいは免除するなど、学ぶことに対するインセンティブにも充分に配慮した奨学金制度へと移行させます。


《大学評価制度の導入》

国立大学は公共機関のひとつとして、その運営は競争原理の外に置かれてきました。大学のトップたる学長や学部長らの選出にしても、主に過去の研究活動実績だけが問われ、経営(マネージメント)能力を問われることはありませんでした。
しかし、国立大学のあり方の検討をせまられている今、大学を「経営する」という視点、つまり大学は学生という顧客に対し「より効率的でより良質な教育サービス」を提供するという発想が不可欠です。短期大学を含む大学進学率が49.1%にまで上昇し大衆化が進んでいる今日、この点はより大切なものとなってきました。


そこで、透明で客観的な大学運営ができるように、

○全ての大学・学部へアクレディテーション(大学が自らの意思で、自らの理念・目的に基づいてその質の改善・向上をはかるシステム)を導入します。
○学生による教員やカリキュラム等に対する評価制度を確立します。
○外部第三者評価とその公表(但し評価委員のうち教員は半分以下とする)を徹底させます。
○教育と研究の評価は分離します。


この発想が、結果的に研究や教育の質の向上をもたらすことになります。大学ごとの財務会計・教育内容の情報公開のルール化、各大学ごとの外部評価・外部監査機関の設置、教育の質への客観的かつ公平な評価体制づくりを進めます。
さらに、希望者全員が利用できる奨学金制度への移行に伴い、教育というサービスを受ける顧客つまり学生の選択が、大学の評価そして経営に直結するようになります。学生の評価を高めることと研究資金を獲得することを目標に、大学が不断の自己点検と教育・研究の質の向上を目指すよう促し、学生から見ても魅力ある大学はどこかが一目で分かるよう改めることが重要です。


《単位互換制度の弾力化》

大学間の単位互換制度、さらには他大学への転籍を弾力化し、学ぶ側の自由な選択権を拡大します。これによって教室には多様な学生が集まり、授業の活性化が期待できると同時に、大学間の競争が促されます。


《海外との共同研究体制の整備》

海外の大学との単位互換制度の確立、外国人教員の待遇の向上、国際的共同研究などを推進し、世界に通用する高等教育を目指します。


(3) 大学の自由で競争的な環境を実現するために

  《教員公募制の義務化》
ドイツでは自大学出身者の教員就任が禁止されています。しかし講座制がしかれる日本の大学は、同一の大学内で助手、助教授、教授へと昇格していく純血主義をもち、若い研究者は完全に所属講座の教授の指導下におかれています。
これでは多様な経歴の研究者は排除され、概して意欲や能力以上に人間関係が大きくものを言うことになります。日本の研究開発力を強化するためにも、意欲と能力さえあればいくらでもチャンスが与えられる研究環境をつくりあげなければなりません。


そこで、

○自大学出身者の教員任用の制限措置をとり、形だけの公募制=純血主義を排します。
○若手研究者の研究環境(ポスト)の獲得機会を平等に確保できる公開公募制を導入します。
○教員ポストを単に公開することに止まらずに、教員公募計画の作成を大学評価の基準に組み込みます。


《教員の給与・任用の自由化》

教員や職員の給与および任用の自由化をはかります。退職金も含め年功序列で一律の処遇体系を見直し、業績に応じた給与体系の導入により、場合によっては学長以上の給与の可能性もあります。これによって、海外から優秀な教員の招聘や民間からの積極的な登用を可能にします。


また教員は全て任期付を原則とし、業績や教育評価により任期を更新するものとします。これによって、安易な内部昇格を制限するとともに、純血主義の排除、つまり教員の流動化をはかります。


《教員の業績評価》

教員はすべて任期付きを原則とし、業績・教育評価により任期を更新します。
教員の完全公募制の義務付けと併せて、教員の流動化を促進させます。


《競争的研究資金の導入》

国が一律に資金配分してきたこれまでの中央集権的管理をやめ、研究者自らが自在に使える競争的研究資金を導入します。具体的には、国からの研究資金の配分は大学の設置者・経営形態あるいは役職を区別することなく、研究者が提示する研究内容の独創性や意義に基づいてなされるものとします。これにより、若手でも研究資金の確保が可能となり、研究者同士の競争を活性化します。


《間接経費(Indirect Cost)の導入》

競争的研究資金の導入に合わせて、間接経費(Indirect Cost)を導入します。これは、国により研究資金の一定割合が大学にも配分されるというもので、大学側が一人でも多くの優秀な研究者を自分の大学に惹き付け、さらにそのための研究環境をより整備するインセンティブとなり、大学側の経営努力を促します。


《民間資金の活用》

研究開発費に関しては、民間からの資金協力を基本に置き、TLO(技術移転機関)活動を活性化させます。また私立大学に対する民間からの寄付、受託研究費に関わる税制優遇などの措置を導入します。


《大学教員の特許取得の促進》

最近、日本でも大学院大学が設置され、基礎研究に力を入れるようになりました。人口あたりの研究費、対国内総生産比では世界一です。論文数も世界第3位の多さです。しかし、研究投資額に対する科学論文数は先進国(G7)中最下位です。日本人の研究論文からの引用数は世界第18位という低さで、しかも引用の3〜4割は日本人によるものです。


また、特許に関して、大学から出願登録されたものは119件(99年度統計)と全体の僅か0.08%です。同じ時期、米国の大学では年間3,870件もの特許が登録されており、もはや比較になりません。このように、日本の研究投資は非効率で研究成果は世界に通用しなくなっています。「科学技術立国」に相応しく、世界や実務社会に通用する研究活動を推進すべきです。そのためには、大学で研究された成果としての特許を管理し、研究結果が実際の社会で活用されるよう技術移転を促進すること、及びその特許収入を大学と研究者に還元し、
次の研究に役立てることを目的としたセンターの整備が急務となります。大学の技術シーズと企業ニーズのマッチングを行い、技術移転を促進しなければなりません。


そこで、

○シーズとニーズのマッチングを行うためデータベースの拡充や専門的なスタッフを育成し、特許等知的財産権の管理、研究者評価法、運営機能を整備します。
○技術移転の実績も研究評価の対象に加え、研究開発を行うインセンティブを高めます。


2. 国立大学の地方移管・民営化に向けて


〜大学による責任ある自主運営を確立するために〜


(1) 国立大学の地方移管・民営化

明確に経営責任を負う能力を備えた経営陣と、競争的資金を導入した研究環境のもとで、活発に教育・研究活動を展開する教員で構成される大学は、その責任に見合った完全な自主運営を実現する必要があります。


このためには、地域の選択を尊重し独自色溢れる大学作りを目指して地方公共団体へ移管、あるいは経営の自由度を重視して民営化すべきです。



ただし、グローバル化、情報化の進展する激動の国際社会で、国際戦略として
重点的に行うべき研究などは国の直轄機関で行うことが考えられます。そのた
め、一部の大学院大学はむしろ戦略的に国立とします。


(2) 組織と運営の改革

 99の国立大学の地域統合やグループ化、合併、廃止を前提に、地方移管・民営化を実現します。それに伴い授業料の自由化、国立学校特別会計の原則廃止と各大学への資産譲渡を行います。教学と経営を分離して、学長スタッフとして経営の専門家を拡充し執行部の経営権限を拡大するとともに責任を明確化します。


教職員の身分は、その趣旨に鑑み非国家公務員になりますが、最低年俸は保証します。



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