独行法反対首都圏ネットワーク


経産省官僚グループが試案としてまとめた「国立大学法人法(案)」の解説部分
2001.4.47 独行法反対首都圏ネット事務局

今回発信するのは、経産官僚グループの「国立大学法人法(案)」の解説部分です。
これで、「国立大学法人法(案)」の全文を配信したことになります。

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【大学改革実現のための法律の形態について】

・国立大学法人法における法律事項

 −中核は国立大学法人化のための基本的ルールの設定。法人化については、独立行政法人通則法をベースとして、大学自治・教育機能等に着目して幾点の修正を加えた新たな法人制度として「国立大学法人制度」を定義し、その組織、運営、人事等について共通事項を規定。また、現行の国立大学から法人への移行についても、財産承継、職員の引継、資源配分方法、国立学校特別会計の扱い、同特会の保有する債務の扱い等について規定。

・規定方法
 −基本的には、通則法に定める法人設置の基本原則に従い、特に大学法人の特性に鑑み調整が必要な事項については適宜特例規定をする立法形式−「通則法の特例としての法人制度についての記述に加え、国立大学制度の改善についての一般的事項を規定(関係法令の改正を含む)する二本立て。

・独法通則法との関係
−独立行政法人通則法に規定する@「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、A国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、B民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものをC効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう」との定義をどこまで国立大学法人に適用するか。

 −Bについては私立大学との関係において検討すべき課題。Cについては、基本的に妥当と思われるが、教育上の効率性等をどの程度まで斟酌するかの問題は存在。

【国立大学法人の定義】

●現行の国立大学との関係(維続性)
●設置主体(国ではなく法律に基づく設置)
●設立目的(教育・研究の実施において、私立大学との差異をどの点につけるか)

【法人の設置形態と設置認可について】

●大学法人の設置形態について(オプション)→分校・附属学校の位置付け

@私立大学と同様、経営と教学を完全に分離し、大学の設置者として法人を設置し、当該法人が各大学の設置申請を行う形態。この場合、大学法人法により法人は設立され、大学自体は設置認可を文部科学大臣より個別に受けて設立されるため、一法人が複数の大学を経営することが可能。
A現行の大学をそのまま法人化する形態。個別法の制定・施行をもって大学設置認可を文部科学大臣から受けているものと擬制。なお、大学法人が新たに別の大学を運営することは認められないが、「分校」或いは「附属学校」を附属機関として別に運営することは可能と考えられる。なお、この場合法人内部の組織形態如何により(組織形態は学長の裁量)
 経営と教学については一致させることも、分離させることも可能。

●経営と教学の関係について

・「経営と教学の分離」と「大学と法人の分離」−高等教育機関として、唯一特殊法人が設置する大学として放送大学が存在しており、同大  学に関しては放送大学学園が同大学を設置するという形で明確に設置者(経営者)と大学を区別。
 ※放送大学における経営と教学の分離と、学長選考について
   放送大学学園法では、特殊法人たる放送大学学園を設置し、当該学園が放送大学を設置することを規定。学園には理事長以下の理事により理事会を構成し、放送大学には学長を設置(但し、学長は同時に学園理事となることが定められており、経営に対する学長の発言権を確保)。学長の選考方法については、学長と理事長の協議により学長候補者となるべき者1名を決定し、当該者について教授会の意見を聴取した上で評議会で投票、3分の2以上の多数が得られれば学長候補者として決定されたのち、当該学長候補者について、理事長の申出に基づき、文部大臣が任命を行う。放送大学においては経営を担当する理事長と教学を担当する学長が明確に区分されており、学長選考に関しても理事会側の関与の度合は比較的低く、経営と教学間の適切なチェックアンドバランスが保たれている。 −経営と教学を一致させた場合には、法人化により重点予算配分・組織運営に加え、外部資金獲得や技術移転・共同研究等外部とのインターフェ−スの確保も必要となる等マネジメントに当たることとなる教員の負担の増加が懸念されるところ。効率的な大学マネジメント遂行のためには、大学運営を専門的に実施する機関(理事会・理事長等)を教学と分離して設置し、当該機関に対する教学面からのチェックが確保されることが適当。

 ※学校教育法においては、大学と設置者の分離を前提としており、経営と教学の一致については、そもそも現行制度上においても国立大学は文部省の内部機関として「国」が設置主体であり、その点は経営と教学は明確に分離されている(東大検討会中間報告における 「経営と教学の一致」については、具体的にどのような体制を想定しているのか明確にする必要がある)。

【大学関係法令との整合性】
<学校教育法>

●学校教育法における「国立学校」の規定について全面的に再整理が必要。 −なお、本法律により法人格を付与されるのは国立の大学のみであるが、その他の国立の小中高校についても、現在では全て国立大学の附属学校として設立されていることから、本法の施行に合わせて国立大法人が当該小中高校を設立する形態に整理することが適当。

●大学内の組織編成の自由化 −学校教育法における大学内組織設置の規定についても合わせて見直すことが必要。→学科・専攻科・教授会等の設置については、各法人の裁量によって設置させるべき−また、大学内組織編成等について詳細にわたり規定した省令・通達については全面的に廃止することし、専門分野別の学生収容定員の必要数の見通し(需給調整機能)や教育・研究水準の確保については文部科学大臣が定める中長期目標(後述)や各専門分野別の学協会や産業界の声を反映したアクレディテーション機関等により定める、オープンなプロセスによって決定されるべき。

(1)学校の設置者(2条)

   学校の設置主体として列挙されている国・地方公共団体・学校法人に、国立大学法人を追

  加。「国」を除外するかどうかについては、国立大学付属学校を中心とする国立の小中高

  校の扱いの検討結果に依る。

(2)設置基準(3条)
  大学設置基準並びにその他大学設置に係る文部省の省令・通達・内規については原則として廃止することとし、同条の規定を削除。各専門分野別のアクレディテーション機関や文部科学省の中長期目標等によって学生収容定員の需給調整や教育研究水準の確保を目指すシステムに移行。

(3)設置者負担主義(5条)
   学校教育法上、大学の設置者がその経費を負担することとされているが、国立大学法人は法律に基づき設置されその財産等も法人自身が所有することから、国立大学法人に対する国の公的資金負担の根拠を同法の設置者負担主義に求めることは論理的に困難。国立大学法人に対する公的資金負担の根拠を求めるならば、国立大学法人で行われる高等教育・学術研究という機能については国として取り組むべき課題であり、そのために公法人が設立されたという事実に根拠を見出すべきであって、そのことを学校教育法あるいは大学法人法において明確に規定することが必要。

(4)学部の設置(53条、54条、54条の二)
   各大学において原則として分野別の学部を設置するシステムについては特に変更する必要性はないと考えられるが、個別の学部設置に関しては、各大学における学部間統廃合や、 学部以外の学問領域毎の編成について柔軟かつ機動的な対応を促進する必要性に鑑み、各大学の自主的判断による学部設置を認めるべき。

(5)教授会の設置(59条)
  学長のりリ−ダーシップによる機動的な複数学部問に渡る案件調整を実現するため、学部単位での意思決定機関である学部教授会については、各大学の自主的判断のもとこれを設置しないことを認めるべき。
  学部教授会設置の法律上の規定については、これまで行政機関や学長による不当な学部自治に対抗する措置として憲法に定める学問の自由を守る一手段として捉えられてきたという経緯があり、学部教授会を法律上規定しないこととする場合、学問の自由確保のための学部自治に替わる新たな手法を換索する必要がある。

(6)大学院研究科の設置(66条)
   大学における学部設置の自由化と同様、大学院における研究科設置についても原則として これを自由化する方向で検討すべき。

●大学院の位置づけについて
 −大学院は、学校教育法「第五章 大学」の章において「第62条 大学には、大学院を置くことができる」と規定され、学部から独立した機関として明確に位置付けられていない
  (「大学院大学」は、特例措置としての位置付け)。 −大学院における教育・研究は明確に学部教育とその目的・内容を切り分けて議論することが必要であり(専門大学院構想や研究者養成型大学院の創設とも連動)、大学学部とは切り分けて独立した位置づけを与えることが必要。

<国立学校設置法>
●高専、附属学校、共同利用機関の法人化の必要性について検討した上で、国立学校設置法の廃止を前提として見直すことが必要。
●職員の任免規定、学科等の設置、授業料の免除規定について見直し。

<私立学校法>
●国立大学における組織編成、人事等の自由化に伴い、当然私立大学についても学則認可についての文部科学大臣の関与を廃止すべき。

<国立学校特別会計法>
●各大学法人の財務運営の自主性を確保するため、国立学校特別会計は廃止する方向で検討。
●授業料、寄付金、受託収入等の外部収入については、各大学法人の会計に直接帰属させることとし、その使途についても各大学法人の裁量によって決定できることとすべき。
●国立学校特別会計が有する約1兆円と言われる借入金の返済については、統一的な清算管理機構に帰属させる等、その処理について検討が必要。

【「国立」の名称について】
●「国立」の名称については、独立行政法人制度ににおいては従来より「国立」名称を冠していた法人においてのみ「国立」名称の継続が認められていることにも留意。

【評価体制及び高等教育政策の実施主体について】
●「独法評価委員会」の機能
  評価については独法制度に倣って専門の審議機関を設置することを想定。その際、審議機関の機能について以下の各類型が考えられる。

@国立大学法人の業績評価のみを実施
A@に加え、資源配分額の決定・業務是正勧告等を実施
B国立大学法人の評価だけでなく、公私立大学含めた公的資金を受ける大学に対する評価を実施
CBに加え、資源配分額の決定・業務是正勧告等を実施
D公的資金の配分とは関係なく大学一般の教育・研究に関する評価を実施。その中で国立大学法人については中期目標達成度を評価(研究と教育については別の機関構成とすることも有効=イギリス型HEFCEとRCに倣った資源配分方式)
 −上記の各類型について、AとCについては、実質上の「高等教育政策」の実施機能を同審議機関が負うことになる。高等教育政策の方向性の設定については、文部科学省にその権限を残すとして、実施的な高等教育政策の企画・実施機能が同審議機関で担当することになるため、審議機関は八条機関ではなくむしろ総理直属の審査機関とすることも視野に入れて検討すべき。 −ここで定義した「国立大学法人審議会」はC。政府の機関として大学に対する公的資源適正配分に責任を持つ評価実施機関として位置付け、同時に大学に対する資源配分額の決定、業務改善勧告等を実施する高等教育政策の実施機関として位置付け。−国立大学法人審議会の法律上の業務としては、国立大学法人の5年毎の評価を実施し(実際は大学評価機構等第三者評価機関による教育・研究評価を取りまとめ)、当該評価結果を基に、次期中期計画期間中の公的資金配分額を決定する。

●政府による大学法人の評価
 −基本的にマネジメントに関する評価が中心※で、法人の統一的会計基準をもとに客観的評価結果によるものとする。高等教育・学術研究の成果に関する専門的評価は行わず、教育上の成果については大学評価機構及び各種アクレディテーション団体等第三者評価に任せ、研究成果については競争的資金を提供する各グラント機関による評価が中心。
 ※そもそも独立行政法人の評価については、各法人の業績を含め適正な運営が法人の庁にってなされているかどうかを評価するものであって、法人業務の具体的内容についての専門的視点からの業績評価を行っているわけではない。

●公的資金の配分方法
 −大学運営経費(教育・研究経費を除く)については国立大学法人審議会による評価、教関係資金については第三者機関による評価を中心に国立大学法人審議会が最終確定させた評価結果を基準に、資金配分額を国立大学法人審議会が決定し、運営費交付金の形で各大学の学長に交付。研究関係資金(公的資金が中心)については、公的補助を受けている各グラント機関が独自の評価をもとに競争的に資金を配分することになる。

【総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会との関係】
●総務省及び独法評価審議会による設置審査・運営評価等の実施−総務省設置法上、総務省は独立行政法人に関する制度の企画立案、設置審査、業務の評価を行うこととなっており、総務省審議会においては各省所管の独法の運営改善について主務大臣に意見を提出する等の権限を有している。
−総務省は特殊法人を含め、法律により特別に設置される法人の設置審査・運営評価・勧告等を行っており、国立大学法人の運営についても同様に総務省の管理のもとに置くべきか否かについて検討が必要。併せて、総務省審議会による大学法人の運営に関する文部科学
大臣への意見提出等の必要性についても検討すべき。

【設立手続及び設立委員の指名について】
●設立手続については基本的に通則法のスキームに準拠
 −私立学校を含む公法人においては、設立に際して法人の設立目的・役員等について定めた寄付行為の認可を必要とするが、国立大学法人は独立行政法人同様、現行の国の機関が法人格を得るため、事前に寄付行為の認可は要しないとの整理。
●法人の長又は監事となるべき者並びに設立委員の指名 −独法通則法の規定による場合、設立準備を行う当事者の任命権について大学内組織の関与が組み込めず、大学自治との関係で問題が生ずる可能性有り。設立委員については学長となるべき者(実質的には法人移行前の学長が任命されることを想定)が直接任命することが適当。

【大学の内部組織の構成について】

●法人の自律的な組織編成
 −法人の自主的運営を確保するため、独法制度に倣い、大学法人内部の組織編成についても法律上の規定はせず、基本的に学長の裁量に任せることとすべき。
 −学部・学科・課程・講座等の教学上の組織編成についても、基本的に各大学内部で策定することとし、組織編成を記した業務方法書を文部科学大臣が国立大学法人審議会の意見を聞いた上で承認する形で一定のチェックを介する形が適当。

●役員の設置
 −国立大学法人は、民法33条に定める「特別の法律により設置される法人」として運営の責任を負う代表者としての役員を設置する必要がある。
 −従来国立大学に設置されていた学部長・評議会・運営諮問会議等の組織については、法律上各大学一律に規定せず、学長の運営権のもとで自由に定めることを認めるべき。

【役員等の人事権について】
<学長人事について>
●学長選考に係る大学内外の意思の関与
 −大学運営の責任者たる学長の選考に際しては、大学自治の原則に基づき大学内部の意思を反映させると同時に、大学の適正な運営を確保するために外部有識者の意思も反映させることが必要。そのためには、大学内部の代表者及び外部の有識者を含む運営会議に学長の

  選考を行わせ、文部科学大臣がこれを承認する方法が適当。

 ※国立学校設置法改正によって設置された「運営諮問会議」は、大学運営に係る重要事項について審議を行う或いは学長に対する運営上の助言等を行うのみで、学内の予算配分や人事面等も含めた具体的な権限を有していないことが問題。

<役員人事について>
●役員人事に係る大学内の意思の関与
 −役員は、学長を補佐して大学経営の責任を負う者として位置付けられる。学長によるトップダウン型マネジメントを確保し、学長による大学の適切な経営を確保する観点から、役員の任命については文部科学大臣は関与せず学長が全ての権限を持つこととすべき。

<部局長等の人事について>
●学部自治との間の整合性確保
 −部局の設置及び部局長の人事権については業務方法書で定めることとなる。業務方法書の策定については一義的に学長がその策定権限を有するが、大学内の代表者を含めた運営会議の議決を要することにより、大学内の意思も反映させることが可能。
 −学部自治をどの程度確保するかは、学長を含めた運営会議の議論に委ねることにより、各  大学の自主性を尊重した意思決定システムを構築することが可能。

【学長及び役員の解任権について】
●文部科学大臣による学長の解任権について
 −大学の自治的な学長選考の慣習に鑑みて、学長の解任権を文部科学大臣が専属的に持つことは困難※。しかし一方で学長が法人運営に失敗したと明らかに認められる場合や学長が心身の故障等により学長としての任務を果たせないと認められる場合は、学長の解任について監督官庁としての文部科学大臣に一定の権限を認めることも必要。

※教特法第六条(降任及び免職)

  学長、教員及び部局長は、大学管理機関の審査の結果によるのでなければ、その意に反して免職されることはない。教員の降任についても、また同様とする。

 −学長の解任についても、任命と同様、外部有識者を含めた運営会議の議決に基づき文部科 学大臣が行うこととすることが適当。

●役員の解任権について
 −役員の任命については、法人運営の責任を負う学長による専属的任命権を認めることが適当であり、役員の解任についても、大学管理機関の承認を経ずに学長が解任権を発動できることとすべき。

【運営会議(ボード)の設置について】
●外部有識者・役員等からなるアドバイザリーボードの必要性
−国立大学法人の運営については、学長のトップマネジメントを確保するため基本的に学長 による役員任命、内部組織の決定、運営上の方針決定等が行えることを原則とするが、@マネジメント能力を持った学長の選考A産業界・地方自治体との連携を促すための外部意見の聴取B文部科学大臣の任命に係る学長が法人運営の全権を担うことについての一定の歯止めの機能の必要性 等を考慮することが必要。
 −上記理由に基づき、産業界・地方自治体・その他学外有識者に加え、学長・役員・学内の代表者(部局長等を想定)を含む法人の最高意思決定機関としての運営会議を置き、学長の選考、法人運営に関する重要事項の審議、法人の適正な運営が行われているかどうかに  ついてのチェック等を行わせることが適当。

【法人の業務の範囲について(個別法)】

●移行前の国立大学の業務との関連性
−独法事務の肥大化を防止する観点から、独法の業務の範囲は移行前の国の機関としての業務の範囲をベースに決定され、また国から承継している業務を行う範囲内で税制上の非課税措置が受けられる等、業務の範囲の決定に関し様々な制約要因が課せられているとこ ろ。また、独法が行える業務の範囲についても、個別法に規定した業務及びその付随業務 のみに限定。

●教育・研究に係る「附帯業務」の規定について
−大学法人については、国の機関として定義されていた業務の範囲は基本的に教学のみに限 定されており(学校教育法)、法人化以降、成果普及・コンサルタント業務等、営利活動 を含めた様々な業務を行う際、業務規定が足かせとならないよう留意すべき。

【法人と政府の関係について(法人業務と高等教育政策とのリンケージ)】
●中期目標、中期計画の扱いについて(大学の個性化等の観点からの検討)
 −独法制度に倣って、各大学(全99大学)に対し文部科学大臣が個別に各大学で行うべき教育・研究についての中期目標を提示し、それに対して各大学が中期計画を提出して個別に調整を行うことは、各大学の自発性に基づく個性的な業務運営を阻害する恐れがあるのみならず、物理的業務量を勘案しても現実的に導入可能な選択肢とは言えない。
 −その上で、政府による高等教育・学術研究政策と各国立大学法人で行われる業務の方向性を融合させるスキームについて検討が必要。
●高等教育・学術研究政策と各大学法人の業務運営の方向性の融合手法について
 −本案では、文部科学大臣が中長期的な高等教育・学術研究政策の方向性を「中長期政策目標」として提示し(必要に応じ大学審議会等、外部有識者を含む審議会の審議を経て決定)、当該目標に沿って各大学が中期的に行うべき業務の目標及び計画を策定し、文部科  学大臣との調整を行うこととしている。

●「中期目標」の策定権者及び提示対象について
 −各大学法人が中長期的にどのような業務を行うかの目標設定・計画策定については各大学の自主性に委ねることとした場合、文部科学大臣が大学法人の運営について示す中長期的な方針は、各大学毎に出すのではなく(各大学毎に中期目標を設定するとしても結局は各大学が同様の内容の中期目標・中期計画を策定することとなり目標・計画を分かつ意義に乏しい)各大学への横断的目標として提示することとすべき。

●中長期政策の内容について

 −文部科学大臣が示す中長期的政策目標の内容としては、各大学の個別の教育・研究内容に立ち入らず、むしろ横断的な政策課題を規定することとし、その際には科学技術基本計画等の大学活動に関連する他の国家政策目標との整合性に十分配慮する。具体的内容として以下のものが考えられる(なお、具体的記載内容については大学運営の自主性との関係も考慮して検討)。
 ・専門的人材育成のための高等教育の確実な実施(医師・法曹・教員等の専門的職業人の育成目標や、IT・バイオ分野等における専門的な技術人材育成の重点的推進等)
 ・我が国の知的基盤構築のための学術研究の推進、研究成果の社会への還元
 ・国立大学法人の健全な運営の確保
 ・大学改革の推進(人材の流動性確保、柔軟かつ機動的な大学組縛の構築、産学官連携の促進、生涯学習の振興、等)
 ・国立大学施設の整備目標(施設整備計画については社会インフラ整備として別途5カ年計画等を策定することも検討)
 ・高等教育への公的支出の拡大

【中期計画のあり方について】
●文部科学大臣が提示する中長期目標(中長期政策目標)との関連性
 −大学の自主的運営を確保するためには、大学が中期的に実施する業務計画については大学法人が独自で作成し、文部科学大臣との協議により内容の調整を行い、確定させることが適当。

 −なお文部科学大臣が中期計画の調整を行うに当たっては、外部の有識者を含めた審議会からの意見聴取を義務づけることが適当。また、中期計画は具体的な運営費交付金療の算定根拠となる数値目標を含むことから、財務大臣との協議を要することとする。
●大学の長期的目標設定について(「大学憲章」の要否)
 −各大学運営の長期的目的については、各大学が独自に策定することが望ましく、文部科学大臣による認可・修正勧告等の関与を介するべきではない(法律上明確に規定する必要性は乏しい)。

●中期計画の内容について
 −中期計画は中期計画期間終了後の法人評価の基準、或いは運営費交付金額算定の根拠となることから、客観的評価を確保するため具体的な数値目標を示した計画とすることが必要。

●中期計画に関する文部科学大臣の認可の必要性
 −大学運営の自主性確保のためには、文部科学大臣の関与は中期計画案の修正勧告に留め、認可を要件とすべきではない。大学法人が社会ニーズに沿った適正な運営を行うことを確保するためには、中期計画の策定に関して外部有識者を含めた各法人の運営会議の承認に係らしめること及び、国立大学審議会の了承を得て必要に応じ文部科学大臣が中期計画案の修正についての勧告を行い、公表することを以ってするべき。

●中期計画に規定すべき事項
・専門的能力を持つ人材の育成目標の設定
・学術研究に関する達成目標の設定(論文数、特許取得件数等)
・産学共同研究、受託研究の拡大
・中期的予算額
・収支計画、資金運用計画
・財務健全化の目標(経常収支の向上、借入金限度額、負債の償還目標 等)
・流動的人材活用の目標(教員の○%を外部から登用、等)
・社会人学生や留学生の受入拡大
・施設整備計画

【中期目標・計画と法人の業績評価について】

●法人の適正な運営確保の手
・評価内容について(何を評価すべきなのか)の整理が必要
 −法人の運営状況、教育・研究の水準、中長期目標・中期計画の達成度等について評価を実施。評価主体は評価委員会(=国立大学法人審議会)であるが、実際上、個別の国立大学の業務について専門的観点からの評価を実施するためには大学評価・学位授与機構やアクレディテーション団体等の第三者評価機関の評価を積極的に活用し、評価委員会は当該評価結果の取りまとめをおこなうことが適当。
 −評価結果については、法人の業務改善勧告、次期中期計画期間中の運営費交付金額算定の基準として活用することにより、高等教育・学術研究政策の適正な実施の確保、公的資源の効果的・効率的配分、大学運営の自主的改善へのインセンティプ付与等を確保することが可能。

●事業年度毎評価の位置付け
 −事業年度毎評価については、中期計画期間中の定期的な法人運営の適正性を把握するため 一定の必要性が認められるが、法人運営の自主性確保の観点から年度毎評価の必要性について再検討が必要。
【中期計画期間終了後の措置について】
●主務大臣による業務の停止・組織編成・業務全般に関する必要な措置について
 −公法人である以上、主務大臣による業務改善勧告は可能。
 −業務停止命令(設立認可取消)については、大学運営が自由競争的環境の下での選択淘汰を原則として法人の自主性・自律性を認める大学改革の趣旨からは、敢えて政府による業務取消命令を規定する意義には乏しいと考えられる。
 −大学自治の観点から大学内組織のあり方について文部科学大臣が勧告することは困難であり、文部科学大臣による大学内組織編成への過度の関与を排除するためにも勧告権限は規定すべきでないと考えられる。

【国立大学法人の財務・会計について】
●企業会計原則を適用することは適切としても、独立行政法人会計基準が適用可能か検討が必要。その際、行政サービス実施コスト計算書等の適用の可否にっいても留意。
●財務諸表の文部科学大臣承認・国立大学法人審議会承認の必要性について検討。

【企業会計原則の適用】

●会計基準の適用
 −大学法人の会計基準については、法人財務の明確性・正確性・透明性を確保して国民及び外部投資家等からの客観的評価を容易にするようなものとすべき。また各大学間相互の 比較等を可能にするため、基本的には各大学法人共通の会計基準を定めるべきであり、私立学校法人会計基準との一定の整合性も確保すべき。
 −その上で、大学法人の行政目標の達成度や財務の健全性等の指標を明らかにする会計基準として、独立行政法人会計基準の適用可能な範囲、修正すべき点等について検討が必要。

【借入金について】

●各大学の信用力を補強するための、全大学共同の借入機関の設立の是非
 −各大学における信用力向上のためのインセンティブを確保するためにも借入は共同で行う形をとらず各大学毎で行うことが適切
●各大学が発行する債券に対する政府保証の必要性
●借入金・債権発行の限度額について
 −借入金・債券発行の限度額については法人の健全な運営を確保するために中期計画にあらかじめ規定しておくことが必要。
 −長期借入金・債券発行を行う場合、あらかじめ個別法に規定しておくことが必要か否かについて、検討が必要。特に大学の施設整備のため長期借入・債券発行が必要となる可能性が高いため、独法制度以上に長期借入・債券発行に係る個別法の規定を詳細に整理してお くことが肝要.

【政府による公的資金負担の根拠について】
●国立大学法人に対する公的資金負担の根拠について法律上明確にする必要性有り。国立大学法人は国が設置するわけではなくこ法律によって設置され法人による登記をもって設立が公に認められるため、公的資金負担の根拠を設置者負担主義に求めることは困難。
●上記案では、1項で政府による中長期政策目標実現のための必要経費を国立大学法人に交付する義務を定め、2項で中長期政策目標実現とは別に法人業務に対する政府からの支援が可能であることを規定。

【教職員の身分について】

●独法制度における特定・非特定独法(公務員身分付与)のメルクマールが適用できるか
 −@法人業務の停滞が国民生活・社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものAその他当該独法の目的・業務の性質等を総合的に勘案して役職員に公務員の身分を与えることが必要と考えられるもの(通則法)Bこれまで維持されてきた良好な労働関係に配慮(方針本部決定)
 −@、Aの適否に関しては、私立大学との関係に留意が必要。特に@については、私立大学の担う責務に鑑みても、国立大学のみがこうした条件を満たすとの説明は困難。
●教員の企業役員兼業や出向等を柔軟に認め教員の流動性を確保する必要性や、優秀な教員に対する適切な処遇の実現、さらに公務員数の削減圧力等を排する観点から、身分は非公務員を原則とすべき。
●事務局職員の身分について
 −事務局職員の身分についても、教員も含めた一体的な労務管理の必要性に加え、教員をサ ポートする事務局職員の役割上、身分は教員と同一とすべき。

【教職員に国家公務員の身分を付与する場合】
●人材の流動性、適正な処遇体系、労務管理上のメリットを確保するための関係法令の適用
−給与、勤務時間、定員管理等の側面では特定独法と同じ法的整理を行う。
 −退職手当の算定については、国家公務員退職手当法の算定基準を適用せず、任期付教員等、流動的雇用による教員が不利にならないような算定基準を各大学毎に設定可能とする。

【給与基準の設定について】

●給与水準の設定について(公務員身分を付与した場合の留意点)
 −独法制度において職員の給与水準の設定に際しては、非特定独法においては法人業務の実績と社会一般の情勢への適合性を考慮して設定することとされているが、特定独法においては、これらの考慮要素に加え、国家公務員の給与・民間企業の従業員の給与・中期計画
 における人件費の見積その他の事情を考慮して定めることとされている。
 −仮に国立大学法人を公務員型とする場合、法人職員の給与水準については公務員の俸給表とほぼ同等のものに制約される可能性が高く、これらの制約については適用除外とする方向で検討すべき。

【文部科学大臣による法人運営に対する関与について】
●法人からの報告徴収、法人への立入検査の権限について
 ※私立の学校法人に対する所轄庁の権限について
 −私立学校法上認められている所轄庁(文部科学大臣)の権限は以下の通り。
  ・閉鎖命令(法5条1項2号)〔大学設置・学校法人審議会の意見聴取が必要〕
  ・報告書提出命令(法6条)
  ・収益事業の停止命令(法61条)〔大学設置・学校法人審議会の意見聴取が必要〕
  ・解散命令(法62条)〔 〃  〕
 −独法通則法で定める違法行為の可能性がある段階でわ違法行為是正命令、
●大学自治との関係
 −最高裁判例(最判昭和38・5・22、最判昭和29・7・30)によれば、大学の自治の内容として@研究・教育A教官人事B施設管理@学内秩序維持の自主的な判断と処理の権能を大学に認め、これらの外的な侵害及び司法的統制からの原則的解放を認めることとされている。
 −これによれば、教育研究の実施を確保するため、人事・施設管理を除く大学運営について  文部科学大臣が意見を述べることについては、公的資金の適正配分、政策目標の円滑な遂 行のためと位置付けられる限り、大学の自治には反しないと考えられる。
●教育基本法10条1項「不当な支配」との関係
 −最高裁判例(最判昭和51・5・21)によれば「教育に対する行政権力の不当、不要の介入は排除されるべきであるとしても、許容される目的のために必要かつ合理的と認められる
それは、たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても、必ずしも同条(注:教基法10条)の禁止するところではない」としており、教育行政による大学の教育・研究に対する権力的介入が教基法10条による「不当な介入」として教基法違反となる可能性は認めつつも、必要かつ合理的理由による行為目的があれば合法的行為となりうることを示している。


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