独行法反対首都圏ネットワーク |
明白なミスはすべて公表 医療事故対策 国立大病院長会議
200.3.30 [he-forum 1769] 明白なミスはすべて公表 医療事故対策 国立大病院長会議(共同、NHK、読売、朝日)
明白なミスはすべて公表 医療事故対策 国立大病院長会議
共同通信ニュース速報
医療事故の防止対策を検討していた国立大学医学部付属病院長会議の作業部会(委員長・玉置邦彦東大病院副院長)は二十九日、明白なミスで事故が起きた場合はすべて公表することや患者、家族へのカルテ開示を前提とした記録管理体制の整備などを盛り込んだ事故防止のための最終報告を発表した。
事故を防ぐため、診療から投薬までを管理する情報機器の導入やリスクマネジャーの設置、さらに事故が起きた場合の対処法まで触れており、文部科学省は四十二ある国立大病院の共通した「ガイドライン」として実施を求めていく方針。今後、他の医療現場にも影響を与えそうだ。
最終報告は、事故の公表が最大の再発防止策になると位置付け「結果に影響を与えなくても隠さない」とし、公表の範囲を@軽微なものを除き明白なミスはすべてAニアミスでも、広く知られることで再発が回避できそうな事例など―と定めた。
患者、家族への対応については「医療側の考えを理解させるためでなく、患者、家族らが自ら判断できるよう十分な情報を提供することが不可欠」と強調。
事故の原因について、病院と患者側との間で見解が対立した際もカルテ開示を拒まないとし、患者、家族が十分理解できるカルテ作成のために記録管理体制の改善を提言している。
共同通信ニュース速報
【解説】国立大学病院長会議の作業部会がまとめた医療事故防止対策の提言は、現在の医療現場が抱える問題点を隅々まで洗い出す内容となった。
部会委員長の玉置邦彦・東大病院副院長は「検討を進めるうちに結局、医療の質の問題に突き当たり、検討事項がどんどん増えた」と述べ、今起きている医療事故の原因は、小手先のマニュアルでは回避できないほどの根深さを持っていることを示した。
課題は、提言内容をいかに組織の中で具体化し、個々の医療従事者のレベルまで浸透させるかにある。
同部会が昨年五月に中間報告を出して以降、四十二の国立大学病院本院でどのような事故防止対策の取り組みが進んでいるかをアンケートした結果では、大半の大学が対策の中心となるリスクマネジャーを置き、事故防止委員会を開くなどの変化があったという。
しかし、制度や部署を作るだけでは「仏作って魂入れず」になりかねない。事故防止には個々が意識改革を図り、提言がうたう「患者と医療従事者との対等な関係に基づく患者中心の医療」の考え方を身につけることが不可欠だ。(了)
***********************************************
事故防止報告のポイント
共同通信ニュース速報
医療事故防止のため国立大学病院長会議作業部会がまとめた最終報告のポイントは次の通り。
一、医療事故防止のための基本的な考え方。
ヒューマンエラーが起こることを前提に、エラーを誘発しない環境や、事故に発展しないシステムを整備。自主的な業務改善活動を強化し、継続的に医療の質の向上を図る。患者との信頼関係を強化し、対等な関係を基盤とする「患者中心の医療」を実現する。
二、安全管理に関する総合的な体制整備。
病院長を中心に事故防止委員会を設置。直轄の安全管理部のほか、診療組織ごとに事故防止の中心的な役割を担うリスクマネジャーを置く。
事故やニアミスの報告制度を整備し、担当者に医療分野以外の教育・研修の機会を提供。国立大学病院がブロック単位で相互に評価チームを派遣、第三者的視点から事故防止・安全管理対策を検証。結果はインターネットなどで公開する。
三、医療そのものの改善を通じた安全性の向上。
研修医を指導しながら診療にあたる上席医を増員し、診療責任を強化。所属の異なる医師に手術の際のインフォームドコンセント(十分な説明と同意)への同席を義務づける。
患者の自己決定権を尊重しながら、専門家として患者へ十分な情報を提供。診療科単位でのカルテ管理を廃止し、看護記録も一体化した「一患者一カルテ」体制にする。
診療から投薬までを管理する情報機器を導入し、誤入力や処方ミスのチェックを強化。抗がん剤や抗生物質の病棟保管を禁止するほか、入院患者への投薬や輸血の際にバーコードシステムなどの情報技術を活用する。
**************************************************
NHKニュース速報
医療現場で相次いでいる事故やミスを防ぐために、診療科ごとに作っているカルテや看護記録をひとつにまとめ、患者や家族にすべて開示することなどが必要だとする報告書がまとまりました。
この報告書は、全国の国立大学医学部の附属病院長でつくる会議がまとめたものです。
きょう公表された報告書では、まず医療事故やミスをなくすためには医師や看護婦が患者の情報を共有する必要があるとして、現在、診療科ごとに作っている患者のカルテや看護記録をひとつにまとめることが必要だとしています。
そして患者や遺族が患者の医療情報の開示を求めた場合には原則として応じることを求めています。 また明らかな事故やミスは病院がすべて自主的に公表し、第三者による外部の委員会を設けて事故やミスの原因を調査する必要があるとしています。
病院長会議では、この報告書にもとづいて全国の国立の大学病院で医療事故の防止対策を進めることにしています。
報告書をまとめた作業部会の委員長で、東京大学の玉置邦彦(タマキクニヒコ)副院長は、「報告は多岐にわたっているが、各病院でできるものから対策を実現していってほしい」と話しています。
[2001-03-29-19:06]
国立大病院長会議が医療事故防止で最終報告案
読売新聞ニュース速報
国立大学医学部付属病院長会議の作業部会は二十九日、医療事故防止対策の最終報告案を公表した。医療事故を防ぐための安全体制の見直しにとどまらず、研究業績に偏りがちな大学病院の体質を脱し、患者中心の医療を確立すべきだと提唱。未熟な研修医中心の診療体制の見直しや、患者への情報提供、「一患者一カルテ制」などの抜本的対策を打ち出した。文部科学省は、可能なものから早期に実施してゆくよう、各大学に求める。
医療体制については、経験豊富な医師が未熟な医師とグループを組み治療を行うべき「受け持ち体制」が空洞化しているとして、指導医の増員と、研究業績重視の見直し、指導医が研修医の診療をチェックするルールの確立などを求めた。
患者への情報提供と医療への参加の促進、診療科ごとバラバラのカルテを一患者一つに統一し看護記録と一体化する改善、処方から投薬までのコンピューター監視などIT(情報技術)活用などもあげた。 事故が起きた際の対応については、遺族を含めた診療記録の開示、医療事故の積極的公表が明記された。
安全管理体制については、すでに出された中間報告の提言に沿ってすべての大学に事故防止委員会が設置され、リスクマネジャーが配置された。大学病院間で評価チームを派遣しあい、相互に体制を点検する体制も整えられつつあり、今後教育・研修の充実が重要としている。
*************************************************
遺族へのカルテ開示「拒むべきでない」国立大病院で前進
朝日新聞ニュース速報
国立大学医学部付属病院長会議の作業部会は29日、医療事故防止のための最終報告書をまとめた。これまで訴訟を前提としたカルテ開示は拒否されることが少なくなかった。報告書では訴訟前提でも、患者や遺族への開示を拒むべきではない、と大きく前進させた。このほか、経験が浅く医療事故が多発している研修医の医療行為に対するルール作りや、医療の質を向上させるため研究重視の態勢を見直し、臨床にも力を注ぐよう促すなど医療現場に抜本的な改革を求めている。
報告書は作業部会の上部委員会で検討された後、病院長会議で正式に承認される。昨年5月、この作業部会が医療事故の速やかな公表と警察への届け出を盛り込んだ中間報告を出した。以降、事故を公表する病院が増えた。この最終報告書が承認されれば、医療事故対策が大きく前進することになる。
カルテの開示については、日本医師会がつくったガイドラインで、遺族への開示や訴訟目的などでの開示は「対象外」とされている。多くの病院がこれを理由に訴訟前提の開示には難色を示していた。
今回の報告書では、カルテは原則として開示されるべきものとしたうえで、医療事故にあった患者側と病院の見解が対立するような場合でも、拒むべきでないと記された。遺族もこれに含まれる。
医療過誤が明白で患者が死亡したり重大な障害を受けたりしたケースは、速やかに警察に届け、社会に対して公表するとした。事故原因の調査などにあたっては、第三者による外部調査委員会などの設置を検討することも提案している。
また、大学病院では経験のある医師が研修医らとグループを組み、指導しながら治療にあたる態勢が組まれている。ところが実際には、研修医や大学院生、研究生が診療の中心を担うケースが少なくないという。このため、研修医らによる事故が起きやすい。
そこで報告書では、研修医の医療行為を指導医がチェックするルールを成文化するよう求めた。例として、危険性の高い薬剤を処方する場合は指導医がチェックすることや、抗がん剤の注射などに指導医が立ち会うことを挙げている。
論文による研究業績を重視するあまり、診療より研究を優先しがちな現状にも疑問を投げ、教育や診療もきちんと評価することを求めた。
また、カルテや看護記録などの診療記録についても、安全で質の高い医療の提供に不可欠と位置づけた。診療記録はこれまで、診療科ごとに保管されることが多かった。だが、1人の患者がどの科で診療を受けても、カルテや看護記録を1つにまとめておくことで、医薬品の二重投与や相互作用などを防ぎ、医療従事者間の意思疎通も図れるため、事故防止につながると期待している。
[2001-03-29-23:14]