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[国立研究機関]「独立法人化を科学立国に生かせ」
2001.3.19 [he-forum 1733] 読売新聞3/18


 

『読売新聞』2001年3月18日付社説


 [国立研究機関]「独立法人化を科学立国に生かせ」


 国立試験研究機関の大半が四月から、独立行政法人に移行する。そのための準備が今、大詰めを迎えている。


 通称「国研」と呼ばれるこれらの研究機関は、大学や企業の研究所などと並んで、わが国の研究開発活動の重要な柱と位置づけられてきた。関係者は、独立法人化を活性化の機会として最大限に生かして欲しい。


 施設の老朽化が指摘される大学や、景気の影響を受けやすい民間企業の研究所と比べ、国研は予算面や研究環境の安定性で恵まれていると言われてきた。


 ところが、成果となると低調な研究機関が多く、「国際競争が激化する最近の科学技術の流れに、十分には対応しきれていない」という批判が強い。


 これに対して国研側には、「予算の細かい使い道まで枠をはめられ、人事制度でも制約が多い。柔軟な活動を行える体制がない」との言い分があった。


 硬直化を国研のせいばかりには出来ない事情があったのは事実だ。だが、独立法人化にともない、こうした弊害は大幅に緩和されるはずだ。


 具体的な人事運用や予算の使い方などは、国の基本目標に沿う限り、研究機関の長にゆだねられる。能力や成果に応じて研究者を処遇することも可能になり、研究の場に競争原理が導入できる。


 四月に独立行政法人化される国研は、約七十機関(職員数約一万四千人)だ。各機関が中期計画作りをほぼ終えて、移行の最終作業に追われている。


 経済産業省では「世界に通用する研究所」を旗印に、旧工業技術院に属する十五機関を「産業技術総合研究所」に一本化する。海外へ頭脳流出している優秀な人材を呼び戻して研究リーダーを任せたり、大学から多数の若手を招くなど、積極的に人材の流動化を図る。


 他の研究機関にも様々な工夫を望みたいが、忘れてはならないのは、民間や大学との密接な協力関係を築くことだ。


 大学や国研の生み出した特許などの成果を民間に移転し、技術競争力の強化につなげるための技術移転促進制度が三年前に出来たが、満足な結果が得られていない。研究機関側の支援体制が十分でないことが、大きな原因とみられる。


 四月には、国の二期目の科学技術基本計画が動き出し、五年間で二十四兆円の研究開発予算が投じられる。


 「施設・設備」「体制」「人」という研究開発を支える三本柱のうち、前二者は整いつつある。あとは「人」だ。研究所トップや一線研究者がいかに意識改革を進め、科学技術創造立国の先頭に立つかが、問われている。


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