独行法反対首都圏ネットワーク


「民主党大学改革WG」座長の見解
2001.3.14 [he-forum 1723] 「民主党大学改革WG」座長の見解


  民主党の大学問題関係のグループ座長の現時点での見解です。「非常に示唆に富む」「主張の一つひとつに説得力があることも事実です。」という発言から、大学問題に関する情報も十分ではなく、また、多様な意見にほとんど接していないことが推測されます。
 種々の方面から、種々の見解、具体的な問題、例、等が伝わるとと良いのですが。

辻下 徹
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<<<内藤正光メールマガジン Vol.32>>>より
http://www.mnaito.com/mailmagazine/vol_32.htm
(2001.3.13)
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            ■大学改革についての民主党内の議論、始まる

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先週の水曜日、「民主党大学改革ワーキングチーム」として東海大学の黒川教授をお招きし、大学改革に関する先生のお考えをお聞きしました。黒川先生は長く米国で教鞭をとり、諸外国の大学事情にも通じ、非常に示唆に富むお話しを伺うことができました。以下にその概要を、私自身の考えも織り交ぜながらお伝えします。

(はじめに)
「科学技術創造立国」を目指す我が国の最重要課題は、言うまでもなく科学技術の振興です。その際、最も重要なことは「人材の育成」であり、その点で大学が果たすべき役割はたいへん大きいと言わざるを得ません。特に米国の大学と比較した時、我が国の大学が取り組むべき課題として、
@ 大学が自らの意思に基づいて運営できる仕組みづくり
A 学長・学部長の権限を保証し、トップダウンの意思決定ができる仕
組みづくり
B 若手研究者の自由な研究環境の確保
C 産学連携の推進
の4点を黒川氏は指摘しています。

ところで、我が国の大学の置かれている位置はどうかと言えば、「IMD2000国際競争力ランキング」によれば47ヶ国中47位。残念ながら、日本の大学は世界的には全く魅力のないものだということです。私自身の米国留学(‘91〜’92コロンビア大学大学院)を振り返ってみても、そこで学ぶ多くのアジアの留学生らの口から「米国へ来られなかった人が日本に行くんだ」と聞いた時には、たいへんなショックを受けました。同時に、正直「むっ」としました。しかし、米国の大学・大学院には世界から多様な経験をもった人材が集まり、その授業は活気に溢れたものであることも事実として認めなければなりません。さらに言えば、米国の大学院で学ぶ学生一人ひとりが「何のために学ぶのか?」という明確な目的を持
っているという事実、当然そうあるべきものなのですが、日本から来た当時の私には非常に印象的でした。

こういった私の思いにも応える形で、黒川先生は以下のような具体的な提案をされました。

(大学システムの改革)
国立大学を廃止して一旦は独立行政法人化しますが、最終的には「公立」として各都道府県に移行します。これは地方分権の流れとも合致します。また、学部や学科、研究科などの新設や組織再編などは現在、国からの認可を受けなければなりませんが、大学自身がより魅力あるものへと自己改革できるよう規制緩和を進めていかなければなりません。

(大学4年間を一般教養を学び将来のことを考えるカレッジに)
現在、殆どの大学において、入学試験を受検する際に既に学部・学科を決定しなければなりません。学部や学科を決めるというのは、ある意味では将来の職業を決めることにもつながっていきます。しかし、果たして高校2〜3年の生徒らに将来のことを決めるのに十分な社会経験や情報などが備わっているでしょうか? また理科系の学部に進むと決めた生徒は生物などいわゆる文科系の教科などを履修しなくなり、逆に文科系に進む生徒は数学などを履修しなくなってしまいます。しかしITやバイオの時代と言われる今日、理科系の学生にとってバイオは基本的知識として必須でしょうし、文科系の学生にしても数学的素養は決して軽んぜられるべきものではありません。そもそも高校2〜3年の早い段階で、
生徒個々の可能性を狭めてしまうのは残念なことです。

そこで大学4年間を必ずしも専門性にとらわれないカレッジにして、学生は一般的教養を幅広く学びつつ興味や関心に応じて専門的科目を履修していきます。このプロセスの中で、学生一人ひとりは自分の潜在能力に気付き、将来の職業観をつくり上げていきます。

(大学院の改革−純血主義との決別)
カレッジで自ら「目的意識」や「将来の職業観」をつくりあげた学生が、より専門的な知識を修得する場として、大学院を位置づけます。あるべき大学院の姿としては、その大学からの学生の受け入れを全体の
20〜30%に抑え、幅広く学生を集めること(※黒川先生はこれを制度化すべきと主張)だと言います。

現在、多くの大学で大学院改革が叫ばれていますが、それらは単に「大学院の部局化」に過ぎないと、黒川先生は鋭く批判します。大学院に進学する殆どの学生が同じ大学から上がってくるようでは、本当の研究のプロは育てることはできないと主張。「純血主義」を廃して、様々なバックグラウンドをもった人材を「混ぜ合わせる」ことで初めて、互いに切磋琢磨するものだというのがその理由の柱です。このことは私の留学経験からも、うなずける事実です。先述したように、私の学んだコロンビア大学では世界中から様々な経験をもつ学生が集まり、授業ではそれぞれのユニークな意見を闘い合わせました。そこから誰も想像してなかったような「答え」が導き出されたことも少なくありませんでした。

(教員の処遇−より競争的に)
米国の公立大学では、教員の給与は公務員給与の75%までしか保証されておらず、残りは教員自らが企業との兼業を始め社会人講座やサマースクールなどで稼ぐと言います。公務員給与に対する教員給与の保証割合は学長や学部長の権限で決めることができ、競争力のある大学ほどその割合は低いとのこと。これは一見厳しいことのように聞こえますが、逆に言えば教員は自由度を与えられているということを意味します。つまり教員自らの努力が給与に反映されるということです。

またポストについては公開公募制にすべきとの強いご主張でした。そのようにすることで若手研究者に対してもポストの獲得機会を平等に確保できると同時に、大学という組織の硬直性を回避することができます。

(Indirect Costの導入−より競争的な研究環境をめざして)
黒川先生曰く、米国大学の競争力の秘密は「Indirect Cost(間接経費)」。Indirect Costとは教員や研究者が国から研究費を獲得した際、その額に応じて大学側にも支払われる経費のこと。獲得した研究費
に対するIndirect Costの割合は、国公立は既に税金で支援を受けているとの理由で低く、国立大は0%、公立大は20〜30%。他方、私立大では優良校ほどその割合は高く、70〜100%に上ると言います。

このIndirect Costの使い方は学長や学部長の権限で決められ、研究環境の整備など、大学の魅力をより高めるために使われます。大学にとってみれば、より多くの研究費を獲得する(=より優秀な)教員や研
究者を抱えていればいるほど、それだけ多くのIndirect Costを得ることができます。つまり各大学にとってIndirect Costとは、一人でも多くの優秀な研究者を自分の大学に惹き付け、さらにそのために研究環
境をより整備するインセンティブそのものなのです。

以上が黒川先生のご主張のあらましです。これらがみな民主党の考え方の中に盛り込まれるわけではありませんが、主張の一つひとつに説得力があることも事実です。皆さんの方でも何かご意見があれ
ば、何でも構いません、お送りいただければ幸いです。

---引用終---

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