独行法反対首都圏ネットワーク


2000.5.1 学長懇談会議事録
2001.3.12 [he-forum 1714] 2000.5.1 学長懇談会議事録


http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00501-kdk-giji.html

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会報第169号(平成12年8月)
学長懇談会 2000年5月1日10:30〜16:20
出席者:各国立大学長
オブザーバ:国立極地研究所長、高岡短期大学長・・・・


以上の報告があったのち、会長から、昨年秋の総会で「国大協としては独立行政法人通則法をそのままの形で国立大学に適用することには反対」ということを確認しているので,その枠内で自由にご意見を頂戴したい旨述べられた。


ついで,主として次のような質疑応答及び意見交換が行われた。


[1]麻生案には,大学の統合・再編について言及があるが,ヒアリングでのニュアンス及びこれが出てきた背景は何か伺いたい。


[2]麻生クループの議員が当大学を視察に来た際,統合・再編の将来構想があるかとの質問があり,これに対し,その考えはなく県内唯一の国立大学として個性化を追求していくと答えたら,納得されたのか,それ以上質問はなかった。


[3]麻生案が出て以後,自民党内の議論で「調整法」というものが浮上しているということが一部の新聞で報道された。ただ,それがどういう性格のものであるかは不明である。


[4]麻生案が5月9日に開催予定の自民党文教部会・文教制度調査会合同会議で了承されたら,文部省は,これについて賢人会議や現職学長の意見を聞いて検討するということであるが,その予定はどうか伺いたい。


[5]現職学長の意見を聞くということは文部省から聞いていない。文部省は賢人会議の意見を聞いて5月下旬に文部省としての考え方を整理し,それを学長会議で示すことになるのではないか。それから,4月28日の新聞報道で,文部省が独法化の方針を固めたとの記事が載っていたが,あれは自民党の中の行政改革推進本部が麻生案の方針を了承したということだと思う。


[6]麻生案の修正案(5月9日合同会議了承)では,独法化が1年早まっているように思うが,そういう方向になっているのか。


[7]文部省からは,平成15年までに決着をつけるという方針に変りないと聞いている。


[8]国会議員との懇談の席上議員から,通則法をそのまま大学に適用するのは問題があることは分かったが,大学の特性を配慮した上で法人格を持たせることも不可という理由が理解できないと言われた。それに対して,我々は独法化は財政難克服の発想から出てきたものであり,政府が国立大学の財政を将来的にどのようにしようというのかが見えないから不安がある。政府が国立大学の予算を欧米並の水準にするということを宣言すれば,我々の対応はもっと違ってくる。多くの地方大学は,独法化したら財政面から破綻することを心配している,と説明した。今度,臨時学長会議があれば,文部省の考えを表明してほしい。


[9]財政面に関し国立大学だけ取り上げての要望は,私立大学との関係があって難しく,高等教育全体の形で要望せざるを得ない。


[10]国立大学は国の政策としてこれが全国的に配置されたものである。国立大学がその設置形態を変えたとしても,私立大学とは区別して教育政策・財政支出が考えられるべきである。


[11]第1常置委員会で目下,財政問題を検討中であるが,通則法のもとでの会計制度では,たとえば,財政投融資,施設費,補正予算の確保,特別会計の維持ができるのか,複式簿記が教育研究を行う大学になじむのか,など疑問点が多い。地方大学は,法人化した場合特に財政面で不安が強い。私の大学では,予算に対する自己収入率は約50%であり,これは欧米の大学の平均的な比率と同程度である。かぎられた予算で地方大学が努力していること,その中身についても国民に理解していただける方法を考えていく必要がある。


[12]「中間報告」等で示した国大協の意見は,その後の文部省の「検討の方向」にも,また,「麻生案」にもかなりの部分が取り入れられた。現在,第1常置委員会で検討願っている財政問題についても,いずれ文部省に示す必要があると思うが,それをどの段階で行えばよいか。


[13]確かに,「検討の方向」には,国大協あるいは第1常置委員会からの要望や問題指摘した点がかなり取り入れられているが,財政の部分の殆どは検討を先送りしていて,我々の不安は払拭されていない。財政問題についても先手を打つことが必要と思うので,そこは動きをみつつ,機敏に対応したい。


[14]「検討の方向」は中央省庁等改革推進本部ではあまり評価されていないという。それは,大学と文部省の考え方が一致しているならばともかく,大学側がこれを認めていないと見做されているためのようである。我々は文部省が「検討の方向」が出た後,これがどのように詰められるのか見守っていたが,何も動きが見られぬまま今日まできた。それが今ようやく動き出した。5月下旬にあるかもしれない学長会議で,文部省がどのように出てくるかわからないが,あるいは大学が法人格をもつということについて,文部省から,一緒に考えてほしいという要請があるかもしれない。その場合,どう考えて対応すればよいかご意見を伺いたい。


[15]今,クリティカルポイントに至ったと思う。文部省の基本的な考え方は,5月,6月にかけて各大学に,国立大学が法人格をもつということを認めて貰い、そのあと1,2年かけて具体的な制度設計をしたいということだと思うが,私は以前から,何よりもまず,国立大学の将来像を検討し,その上で独法化の問題を考えるべきであって,独法化するのであればどうすればよいかということで議論が進んでいくのは納得できないと言ってきた。独法化はこれがどんな形になったにしでも大学に適したものにはならないと思っているので,独法化に賛成できないという立場は今も変らない。


[16]自民党の行政改革関係の会議で,地方大学は整理すべしという意見があったということだが,それは国立大学のことをよく知らずに判断されていないであろうか。行政改革を推進する中枢に対しても,国立大学が努力している実情を説明し,よく理解していただくことが必要だ。


[17]公式には会っていないが,非公式には与党のいろいろな方と会っている。


[18]国大協は,従来,通則法のもとでの独法化に反対ということで一致している。文部省は「検討の方向」で,基本的には通則法をベースにした独法化を考えていたが,今回の「麻生案」では,必ずしも通則法によらない法人化の方向が示された。私自身の意見は,大学にとって最も大事な自主性,自律性は,現在の設置形態でしか護れないと考えているが,国大協として法人化を受けるかどうかはっきり意見を出すべき時にきていると思っている。


[19]通則法による中期計画の方式は大学の自主性を損なわせると思う。「麻生案」は,大学の自主性は尊重されるべきであると書いてあるが,その具体的な点が何も書いてない。第1常置委員会では中期計画のことに関しても検討してほしい。


[20]通則法のもとでの基本的な枠組みを越えた形にならなければ法人化に反対するということであれば,それは結局,今の国立大学の形をそのまま維持するしか選択肢はないということになる。50年にわたる新制国立大学の歴史的評価はあると思うが,今日制度疲労を起こしている。私の大学では,いまだに発足時の割拠主義が根強く,それが改革の妨げになっている。それを打開するには,法人化して大学を極限状態にして考えていくしかないのではないか。


[21]国会の公聴会に出席し,大学の円滑な意思決定を阻害する今の教授会自治の欠点を述べた。私の大学でも,発足時から目指していた大学の役割は終り,新しい役割を見つけていく必要性を痛感しており,今まで通りの設置形態に止まっているかぎり世界の大学に伍していけないと思っている。あるべき設置形態が議論されてしかるべきである。また,これまで大学の自主性,自律性というのはディフェンシブに考えられてきたが,社会との関係の中でその中身を十分議論し,新しい展開が考えられるべきであり,この際,国立大学は大きく脱皮する必要がある。


[22]国立大学の設置形態の話は10年前から出ており,独法化問題についても我々の対応が遅れたことは事実である。独法化問題が浮上したときに,大学審議会を盾に,大学改革を進めることが優先だとして切り抜けようとしたが,政治家は,答申は行政改革の視点が薄弱だとして評価されなかった。しかし「麻生案」を一部修正する形で5月9日には文教部会・文教制度調査会合同会議で法人化についての自民党の方針が出る段階に至った。国大協として必要な行動をとるにしても,政府与党等関係方面と折衝するのは文部省であるから,文部省とは対峙しつつも共闘し,我々の意見がより多く通るようにしていかないといけない。


[23]仮に独法化するということであれば,「中間報告」の次のステップを各大学で考え,また同種の大学で考えを持ち寄り,自分の大学の制度設計を考えていくほか方法はない。


[24]今は,かつての大学紛争の時と同しく緊急事態である。独法化に展望があるとはいえないが,今の国立大学のままでは展望は持てない。話し合わなければ何も問題は解決しない。「麻生案」について,文部省と話を進めるべきである。


[25]独法化の問題は,通則法の特例措置から,特例法,そして調整法という形で一見前進しているようにありながら,各大学が嫌がっているのは,その運びが性急過ぎるということも一つあると思う。「麻生案」は,ある程度大学を理解しているようではあるが,まだギャップや疑問がある。たとえば,戦後新制国立大学の護送船団方式にしても,画一的教育にしても,それらは国の政策としてとられたものであった。地方国立大学はそれぞれ地方都市の重要な機能を担っており,簡単に統廃合などできない。そういうことがあまり理解されていないのではないか。これまでに大学改革は相当進んできているのは明白だ。だから,我々は,独法化を基本とした外からの改革でよいのか,大学の制度設計を大きく変えるには,十分時間をかげてほしいということを強く言うべきである。


[26]「麻生案」では,たとえば職員の身分を公務員型にする点,特別会計制度の維持の点等について欠落があるが,これらは行政レベルで詰められていくことになるのではないか。そうすると,その他の点も合めてまだ我々の意見を反映させる余地はあると思う。


[27]文部省から相談があったときの対応だが,国大協の考え方をある程度詰めてから議論しないと文部省にリードされる懸念があり,また,外部からは条件闘争と見られかねない。第1常置委員会で財政問題などを検討中であり,理論武装した上で話し合うべきである。そのためには少し時間が必要である。


[28]賢人会議その他で我々の考え方を主張することは結構だが,それは個人的意見であっては困る。国大協の中は独法化について異なる意見があるから,そこを踏まえて議論に臨んでいただきたい。独法化を前提とした議論であれば,却って混乱を招く。


[29]文部省が独法化を前提として話し合いたいということであれば,それは会長として拒否する。国大協としては,各大学が共通した意見のみ示すことしかできないと考える。各大学がそれぞれの意見を出すことは結構である。ご意見があった理論武装の点については,第1常置委員会の審議を見守りたい。


[30]昨年,第1常置委員会が学長宛に行った「大学が具備すべき基本的要件」についてのアンケート結果については報告をいただいたが,そのまとめはまだいただいていない。ぜひ結論をまとめ,それにもとづき必要な政策提言をすべきである。


[31]文部省が5月下旬に臨時の学長会議を招集し,独法化についての文部省の考え方を示した場合,そこでは議論をするだけに止め,国大協としての結論を出すとすれば,それは総会の場で行いたい。


[32]今この段階で文部省側と話し合いを始めるべきである。現行の国立大学のまま残るも,法人化するも,どちらにも不安はある。しかし,法人化されようと,されまいと評価機関による大学評価が始まろうとしている中で,法人化の内容が不透明だから困るというだけでは済まされない。具体的な仕組みの提案がなされる中で話し合いを進めなければならない。但し,それは法人化を前提とするものではなく,どういう条件の下であれば法人化の途も選び得るかということである。話し合いは,個人の資格で賢人会議を通して意見を言うのではなく,文部省と正式に話し合う場が必要である。それがまた文部省のバックアップにもなる。


[33]通則法のもとでの独法化には反対であるということを我々は決めた。特例措置とか調整法なども論理的には通則法の傘の中に入るのではないか。そういう提案をしてくる文部省に国大協として会うことは慎重に願いたい。まったく新しいスキームで考える議論であるなら話は別である。


[34]国大協は,通則法のもとでの独法化に反対ということで一致しているが,それは通則法のままでは反対であると理解しており,通則法のもとではすべて不可とは理解していない。通則法とは別個な法人か,それとも通則法の特例措置かといった判断はあろうが,それは選択可能かということも念頭において議論しなければならない。


[35]「中間報告」で提言した国立大学法人法は通則法の枠内という考えであった。通則法とはまったく別の形の法人法をつくった場合,独立行政法人に認められている運営交付金などの点で難しく,勝算も立ちにくいので,「中間報告」も通則法にかかった形で法人化を考える立場に立っている。


[36]通則法そのままは反対だが,通則法そのままを1とすれば,その中身をどれほど0に近づけるかであり,それは我々のこれからの努力にかかっている。「中間報告」は,仮に独法化した場合の間題点等の指摘が中心であり,結論的なことは書いていない。


[37]国立大学が法人格をもつということについて全体を見通して考えている人はいない。通則法のもとで変更できない部分があり,運用でやっていくしかない部分もある。


[38]通則法のもとでは反対ということについて,その解釈をはっきりすべきである。


[39]通則法のもとでは反対との点について,解釈を詰めると,法人化には一切反対というのと,法人格をもってもよいとに分かれる。これまで,そこは敢えて曖昧にしてきた。当面は,第1常置委員会での検討を見守り,国大協として意思表明することは6月定例総会までしないことにしたい。


以上のような意見交換があったのち,会長から次のように述べられた。


本日は種々ご意見を伺った。法人格を取得してもよいという太学でも,通則法そのままでは反対であり,通則法とは関わりなく法人化そのものに反対という大学もある。この二つの考え方を内包しつつこれまでやってきたが,これをいま無理に変えることはできないし,また,このことを外に向って敢えて言わないつもりである。5月下旬に臨時の学長会議が開かれるものと考え,それまでに第1常置委員会で財政問題等について検討願い,そこで文部省と話し合ったらよいと思う。また,各大学では,地元出身議員等と接触し大きな線は外さない範囲で各大学の立場を主張し,独法化問題の理解を深められるようお願いしたい。


以上をもって本日の学長懇談会を終了した。

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辻下 徹

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