独行法反対首都圏ネットワーク


独行法情報速報

No.1

特集:評価問題

2001.2.19 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター

各国立大学とその連合体(Federation)である国立大学協会(国大協)が繰り返し国立大学の独立行政法人化(独法化)に深い懸念と反対の意思を表明しているにもかかわらず、独立行政法人(独行法)の内実作りが強引かつ急速に進められています。こうしたなかで、独法化への諦めが拡がっていますが、しかし、より深刻なのは、各大学で、情報の部分的流布とその御都合主義的な解釈に踊らされて、個別大学、個別部局の目先の利益追求という生存競争の論理へと縮退する傾向が強まっていることです。 "背に腹は代えられない"と、このまま生存競争に埋没していけば、普遍性を語源に持つ大学システムを大学自らが破壊することになりかねません。そこで、私たちは、「独立行政法人問題千葉大学情報分析センター」を作り、以下のような活動を開始することにしました。

開示 

本来、独行法にかかわる情報はすべての大学構成員に速やかに開示されなければなりません。しかし、現実には情報は十分には行き渡っていませんし、入手された頃には既に決定済みということがしばしばです。幸い全国的な情報については既にアクセスシステムが出来ていますので、その紹介にとどめ、本速報は千葉大学にかかわる情報や資料の速やかな開示と紹介に力点を置きます。

分析

情報は科学的・批判的に分析してこそ意義があります。本速報では、得られた情報・資料について分析を試みます。特に、千葉大学で起こっていることが、独行法とどのような関係があるかについても検討します。

提言

観念的な評論や現実への無批判な拝跪は無力であるばかりか有害です。根本的な改善・変革へと繋がる具体的な方策への提言が今ほど求められている時はありません。分析どまりではなく、変革への展望をもった提言を未成熟な形であっても提示します。

討論

上記の分析や提言は一面的であったり、不正確であったりすることもあるでしょう。また、複雑過ぎて立ち往生することも考えられます。こうした時は、本速報上で、厳しい反論も含めた活発な討論の場を提供します。従って、投稿などの形でご意見をお寄せくださることを歓迎致します。必要に応じて、討論会などを組織することも考えています。

 

学内評価検討委員会報告を批判する

【開示】         

学内評価検討委員会の検討結果報告書2000年12月評議会で承認)【抜粋】

1.学内評価の理念と目的

(略)

千葉大学も、自己点検・評価へは真摯に取り組んでおり、一平成9年度には大学基準協会による相互評価を受け、また、平成11年度からは学長のイニシャティブのもと、外部評価(第三者評価)を積極的に取り入れることによって、学内各部局による評価活動と、それに基づく将来計画の策定、修正が積極的に展開されており、その意義は高く評価されている。          

(略)

学内評価は、学内の教職員が切磋琢磨して自らの教育研究活動のレベルアップ・充実を図り、活性化することを目的として行なうものでもある。評価結果をこのような目的に積極的に資するために、評価委員会から提出される評価理由や改善方法等に基づき、学長には関連の部局に対して適切な助言・勧告を行うことを期待する。その結果、現在まで各部局で行なわれてきた自己点検・評価の努力をさらに発展させ、全学的に相互に評価しあうことによって、それぞれの課題を共通に認識し、大学評価・学位授与機構による評価において高く評価される条件を整備することが可能となるであろう。また、評価結果は、大学としてのさまざまな政策に反映され、弱い部分を補い、強い部分を一層強化することによって、外部評価が行われた際に対応できる体力をつけることにもなる。評価結果の公開は、このような政策展開の透明度を向上させることに繋がる。たとえば、学長裁量経費の配分等に際しても学長裁量の根拠とすることが可能であり、また、さまざまな整備が必要と考えられる個所を特定するために、関連部局が検討する際の適切な素材となる。重要な点は、それらが客観的かつ公開された評価結果にもとづいてなされるということである.

2.学内評価委員会(仮称)の構成についての提案 

学内評価委員会は、当面は学長の補佐機関として位置づける。評価結果は学内に公開され活用されるものであるがとりわけ全学の教育研究活動のレベルアップ・充実あるいは、活性化に積極的に資するために、評価委員会は、「4.評価手順(案)」で述べるように、「改善の余地がある」と評価した項目について、その理由と改善方法を付すこととする。学長には、これに基づき関連の部局に対して適切な助言・勧告を行うことを期待する。   

このような機能を果たす委員会として、次のような構成を提案する。

1)委員は5または7名とする。

2)委員は学長が指名し、評議会の承認を得るものとする。

3)評価の作業にあたっては、委員会のもとに専門部会を設けることができるものとして、その構成は評価委員会が当該年度ごとに決定することとする。なお、「3.評価項目(案)」で示す項目は主として、「教育活動等」、「研究活動等」、「管理・運営体制等」および「国際交流と社会との連携」の項目群からなっており、この項目群ごとに専門部会を設置し、専門部会は必要な分野の評価に適当な者で構成するものとする。

4)「学内評価報告書」は、学長に報告するとともに全学に公開するものとする。

3.評価項目についての提案(略)

4.評価手順についての提案(略)          

【分析】

1.評価の目的は、大学の教育と研究を担う組織、諸個人が一層活力を得て、自律的な活動を展開することへの助力を与えることでなければならない。この視点を欠いた評価は、その逆に転ずる。つまり、評価者が「万能の権力」を得て、支配し、統制することに結果する。これは是非とも避けなければならない。評価が、学問の自由を侵害したり、個々人の学問的、内的価値観を侵害するようなことに至らぬよう、慎重にも慎重であらねばならぬことは、評価に際しての第1原則である。評価委員会報告書は、この点に関する認識を全く欠いている。

 むしろ、報告書で述べる評価の目的は、外的要請への対応と基準への適合を主たるものとしている。「1.学内評価の理念と目的」において、具体的には「大学評価・学位授与機構による評価において高く評価される条件を整備することが可能となる」、「外部評価が行われた際に対応できる体力をつける」と記す。このような外的基準への対応を主たる目的とする「評価」は、学問内在的な論理を無視することに繋がる。実際は、主として独立行政法人化への対応を考えたものだと推測できる。姿勢としては、独法化された場合に重要な意味を持つ大学評価機関による評価への対応を主たる目的にしていると見受けられる。

2.「報告」は、新たに設置されようとしている学内評価委員会を、「当面は」という限定つきながら「学長の補佐機関」と位置付けている。しかし、この点に関しては、国立大学協会(国大協)の「大学評価に関するワーキンググループ最終報告」(2000年3月30日) 〈http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net/nethefo829.html〉で、「大学評価・学位授与機構」をどう評価し、位置づけているかを参照すべきである。国大協の報告書では、「大学評価機関が大学に大きな影響を与えることから、評価機関は巨大な権力を持つことになる」と述べ、「大学評価機関のレイマンコントロール、運営の透明性が保証されることはきわめて重要」と指摘している。そもそも、国大協は、このような形の組織が生むであろう管理運営の問題については、「十分に注意を払う必要がある」と極めて警戒的な構えを表明している。

 大学評価機関と個々の大学の関係に比すべきものが、本評価委員会と大学内の部局、教育組織、諸個人の関係である。報告書が述べるように、「学長の補佐機関」として位置づけ、評価結果に基づいて、学長が「関連の部局に対して適切な助言・勧告を行うことを期待する」とするのは、学長が学内の教育や研究に関して、それぞれの自律性を越えて介入し、干渉することを可能にする強大な権力を与えることになり、極めて危険である。評価委員会は、学長から独立した機関であるべきであるし、評価結果を受け止めてどう対処するかは、被評価者の自律的判断と行動に第一義的に委ねられねばならない。

 評価を行う評価機関が、「強大な権力機関」に転化する危険性を持つのは、評価結果が、被評価者(組織あるいは個人)の研究費、賃金、身分、組織の存廃などに連動するときである。評価のシステムが、このような権力行使に繋がるならば、評価によって大学における学問研究と教育の自由は瓦解してしまう。

3.上記のように、学内評価委員会は「学長の補佐機関」と位置付けられたことに加えて、極めて曖昧な組織となっていることにも警戒が必要である。端的な例をあげるならば、いったい同委員会の任期はいつまでなのか、不明である。学内評価委員会は、「報告」3にある" 評価項目"について4の手順で作業を実行することで任務を終了すると理解してよいのか、それとも引き続き学内評価に関する任務を果たすのであろうか。後者の場合、もし評価委員会が今後独自に対象・項目を決めることができるとなると事はさらに重大である。「学内の教職員が切磋琢磨して自らの教育研究活動のレベルアップ・充実を図り、活性化することを目的」という錦の御旗さえ掲げればあらゆる事柄が評価対象となりうるからである。それはある種の恐怖政治である。

4.今までに実施された幾つかの評価は、どのような効果と弊害をもたらしてかについての具体的な総括なしに、次に進むべきではない。「平成9年度には大学基準協会による相互評価を受け、また、平成11年度からは学長のイニシャティブのもと、外部評価(第三者評価)を積極的に取り入れることによって、学内各部局による評価活動と、それに基づく将来計画の策定、修正が積極的に展開されており、その意義は高く評価されている」という程度の内容にとどめるべきでない。

【提言】

1.評価委員会は学長の補佐機関とせず、学内の諸機関から独立した組織とする。独立性を保持するために、組織の在り方について全面的な再検討を行う。

2.「評価を真に意味あるものとするためは、評価組織と評価対象との関係がどうあるべきか」ということについての原理的検討が必要である。

3.評価問題と予算配分問題を明確に分離する。

4.評価を繰り返してもそれ自体では教育研究の本務が前進する訳ではない。そればかりか、近年の相次ぐ各種評価のために、本務が滞る事態さえ見受けられる。いわゆる「評価疲れ」である。大学評価・学位授与機構の評価が開始された今日、学内評価作業は、この間の各種評価がどのような効果をもたらしたのかということを、そのネガティブな面も含めて分析することがまず必要となろう。

 

【動向】国立大学の独立行政法人化をめぐる当面の焦点

○国立大学の独立行政法人化をめぐる当面の焦点は、文部省が2001年度中に行うとしている「通則法」の枠内での制度設計である。

○文部省の調査検討会議は、本年4月までに中間報告の骨格を作成し、7月には中間報告を出すとしている。さらに2002年3月には最終報告が予定されている。早ければ2月中にも出る中間報告の骨格は、中間報告や最終報告においても維持されるであろう。それゆえ、これから7月にかけて、極めて重要な時期を迎えると考えられる。

○国大協は、文部省の調査検討会議の日程に合わせて、それに対応した「見解」を3月までに出すための作業を行っているとみられる。第8回設置形態検討特別委員会で確認した「法人格の取得について(メモ)」(いわゆる「長尾メモ」、全文はhttp://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/m130110-07.htm)をもとにした「試案」が検討されている。この検討がどのような性格のものになるか、注視しなければならない。

○国大協は、この「試案」の検討の先に、「国立大学法人法案大綱」の策定を見込んでいると思われる。他方、これが実現されない場合、いわゆる「25%定員削減」を甘受して、現行の国立大学で残るという選択肢を検討しようという考えもある。

○国大協内部には、「教育公務員特例法は必要なく、学長が教員の人事権を持つべきだ」、とする「学長権限強化派」ともいうべき一定数の学長が存在する。こうした動向に対する徹底的な批判が必要である。

○現在、名古屋大学において「国立大学法人名古屋大学法(仮称)(案)」が作成されており、また東京大学においてもUT21会議による検討が進んでいる。この検討結果に対しても批判的分析が必要である。

○当面、この2?4月までの文部省、国大協、各大学の動向が、独立行政法人化問題の基本的方向を決定する重要性を持つことになる。問題の焦点は各国立大学の「生き残り」戦術にあるのではない。この時期にどのような行動を取るかが、今後の高等教育のあり方を決定する分岐点となるであろう。

 

【情報へのアクセス】

全国的な情報は以下のHP上で常にアップデートされています。

独立行政法人反対首都圏ネットワーク (http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html)

全大教近畿  (http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/)

北大総長室 (文部科学省、国大協の資料)  (http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency.htm)

なお、評価問題にかんしては、

大学評価・学位授与機構(NIAD)  (http://www.niad.ac.jp/)

 

 

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