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国立大学の独立行政法人化と「国立大学法人」(三輪定宣・論文要約)
2001.1.24 [reform:03303] 独立行政法人問題の資料です
独立行政法人問題の資料です。
下記の論文の要約です(要約者:岡山大・白井浩子)。
題:「国立大学の独立行政法人化と「国立大学法人」 問題 (年表: 国立大学の国立大学の独立行政法人化問題)
目次は全部で、「はじめに/1. 問題の展開と現段階/2. 国立大学の設置形態/3. 諸外国の例/4e. 三輪私論/註/年表」です。
要約の見方:1p、2p、などは、パラグラフの順番です。
eは、endの意味であり、最後の章や、また、章や節内での最後のパラグラフであること、などを意味します。
目次細目
●1. 問題の展開と現段階 (1p2p3p4pe)
●2. 国立大学の設置形態 (1p2p3pe)
●3. 諸外国の例 (1p2p3p4p5pe)
●4e. 三輪私論 (1pe。5節)
(1) 大学の本質と設置形態 (1p2p3p4pe)
(2) 国立大学と独立行政法人 (1p2pe)
(3) 国と法人と大学との関係 (1p2p3p4pe)
(4) 大学の組織・業務 (1p2p3pe)
(5e) 大学財政の独立性、国と大学、大学間の調整 (1p2p3p4pe)
●註、●年表が続きます。
…・・・・・・
以下要約です。
●1. 問題の展開と現段階
1p国立大学・法人化の問題の扱われてきた経緯。
1971中央境域審議会の答申。教育改革論として。
1984臨時教育審議会の答申。教育改革論として。
1996政府の「財政構造改革」「行政改革」の一環として浮上。
1997「行政改革最終報告」では、「大学改革方策の一つの選択肢」にとどまる。
1998中央省庁等改革基本法でも、大学審議会の答申でも、独法化ではなく、競争・管理強化が指向されていた。
1999自民党が国家公務員10年25%削減案をだす。89機関の独法化の閣議決定。国立大学は2003年までに結論と。
2p転機。2001年度からの定員削減に備え、その概算要求期限の2000・8までに国立大学の独法化も方向決定が必要と。
1996・6藤田論文、公表(註1)。
1996・7「独立行政法人通則法」の成立。文部省が通則法の特例措置による国立大学・独法化を検討始め。
1999・9文部省が案を学長会議に提起(註2)。以降、多くの大学でその案に沿った検討始まる。
かつ、教授会、教職員組合、関係団体、教員・学生の反対も続き、個別大学の枠を越え、学部長会議(理学部、人文系、農学)、学会、団体、学生自治会、有志ネットなど、全国的・地域的な組織から批判・反対の声が広がる。
3p自民党が独法化の枠内での法人化を確定。
1999・11 自民党が法人化の検討チームを組織。
2000・5自民党が独法化の枠内での法人化を確定(註3)。
文部省が、これに従うことを学長会議で説明(註4)。2001年度中の文部省の検討会議報告を経て結論を出すと。
国立大学協会は、見解をだす:通則法の国立大学への適用反対、検討委員会の設置、文部省の検討会議への参加、と。
4pe現段階。
1999・8〜文部省「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」。
2000・7〜文部省「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」予その付置の5委員会での検討が進む。
2000・7〜国立大学協会「設置形態検討特別委員会」 (註5)。
●2. 国立大学の設置形態
1p 「国立大学法人」問題が焦点に。自民党・政府案、各団体、個別大学で検討中。それらは多様で、大別すれば、次の類(@〜Fなど):@通則法のよる、A通則法の部分修正による、B通則法の抜本修正による、C学校法人への統一、D特別の法人(独立行政法人でもなく、学校法人でもない)による、E民営化、F「国の施設」(現行制度)など。@ABの例を以下に。
2p @の例。自民党提言・文部省方針(2000年5月)。「国立大学についても充分適合する」と。
3pe Aの例。国大協の中間報告(註6)、および、それに準じて作成された名古屋大学の案(「国立大学法人名古屋大学法(仮称)案」)(註7)。通則法の個別法でなく、特例法、または、「国立大学法」の制定。
Bの例。東京大学研究会報告(註8)。「国立大学基本法」、または、「国立大学法人法」を定め、国が法人格の大学を設置し経費を負担し、大学が管理・運営する「国立大学法人」(1大学1法人、「国立大学法人何々大学」とする案。
いずれも、大学の自主性・自律性・特殊性や公的財政の拡充が強調されている。
ただし、@の「大学の自主性・自律性」は、学長体制の強化と大学・学部自治の形骸化、財政拡充には評価による賃金差別な
どの問題を含む。
これに対して、独法化に対抗的な論では、学問の自由、大学の自治、教育研究の危機とその擁護、などが共通点。
●3. 諸外国の例
1p アメリカ:州立大学の殆どが法人格を付与されている。立法・行政・司法の3権に並ぶ第4権的地位が与えられている。
管理組織(大学理事会)の理事は、州知事が任命、学長や教官は理事会が任命。
学部設置・改廃や授業料は大学の裁量、予算は大学が州政府に要求。
2p イギリス:ほぼ全大学は実質、国立大学で法人格をもつ。
管理組織がその委員を決め学長や教員を任命。
学部設置などは大学の裁量。
予算は政府の「大学財政カウンシル」との契約。
3p フランス:ほぼ全大学が国立大学で法人格・自治権をもつ。
大学と別の管理組織はなく、学長や教員は学内で選考し、国が任命。
学部の設置などは法令に規定され、授業料は無償。
予算は政府の決定や4年契約による。
4p ドイツ:殆ど州立大学で、法人格と行政機関の性格がある。
大学と別の管理組織はなく、学長や教員は学内で選考し、州政府が任命。
授業料は無償。
予算は大学が州政府に要求する。
5pe 国立学校財務センターが、以上の比較研究をまとめた(註9)。冒頭、同センター長・大崎氏が次のようにのべる。
「欧米各国とも、大学の設立、運営は、基本的に国家(州)の責任」であり、欧州3国では私立大学は「例外的存在」、アメリカでも「比重は減少している」。「法人格を有するが、これは大学の自治的運営を保障強化するための措置」である。『独立行政法人』のような法人類型を大学に適用する例はない。
財政では、「大学の自主性と自治的運営を尊重して、特別の配慮を払っている。政府による目標の指示、計画の許可、変更命令など、『独立行政法人』的手法を採る例はない。」と。
このように、政府機関である国立学校財務センターでさえ、独立行政法人化に強く反発の姿勢。
●4e. 三輪私論 (1pe。5節)
1pe 三輪私論をのべ、論議の発展に資すれば、と。
結論は、大学の設置形態を「大学法人」とし、公立大学もこれに準じ、私立大学にもこの形態を広げる方向。国と大学、大学間の調整のため「大学調整委員会」を設ける。
主要国では、私学は例外的存在で、国際条約でも高等教育の無償制導入が規定されている。
(1) 大学の本質と設置形態 (1p2p3p4pe)
1p 設置形態は大学の原理・本質に即して構想されるべき。
大学の原理は、「学問の自由」(憲法23条、教育基本法2条)、その一環としての「大学の自治」、「教育を受ける権利」、「教育の機会均等」、「不当に支配」の禁止・国民全体への直接責任・教育条件整備、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」、「普遍にしてしかも個性豊な文化の創造」、など。これは国内法のみならず国際法規も明記する人間の普遍的原理で、近年ますます強調される傾向。
2p 例えば、ユネスコの規定 (「学問の自由」、「大学の自治」、に関して)。
3p 同じく、ユネスコの宣言 (人権・民主主義・持続的発展・平和の主柱を達成する知的共同体が大学であると)。
4pe フランスの1984高等教育法の例。
(2) 国立大学と独立行政法人 (1p2pe)
1p 現行法では、学校の設置主体となりうるのは、国、地方公共団体、学校法人、の3団体(学校教育法)。
政府の説明は「国の施設」の場合、現行形態の他、「法人格を持つ施設」の形態が考えられ、独立行政法人はその一つと。
2pe しかし、独立行政法人制度は、効率重視、企業会計原則、評価とリンクの財源措置、などが基本原理であって、それをどのように修正しても、大学に適合的にはならない。
(3) 国と法人と大学との関係 (1p2p3p4pe)
1p 独立行政法人とは異なるもので大学に適合的な法人格として、何が必要か。
2p 国と法人と大学との関係では、「直接方式」(フランスやドイツ)と、「間接方式」(アメリカ、イギリス、日本の私立大学)がある。
一長一短だが、自主性・自治的運営・公共性を高めるには「直接方式」が適当。
3p 「間接方式」では、大学の管理・経営に関して、国からの共通枠組みは小さくなり、法人(理事会など)が経営を、大学が教学を、分担。大学は経営負担を免れるが、現行の一部私学のように大学が法人に従属してしまい、教学の自主性が脅かされる危険がある。
4pe 三輪案の立法形式は、「国立大学法人法」(仮称)を制定する。国立大学が自治権と法人格をもつ公的施設であって、国と大学の関係は契約関係である旨、および、法人に即した組織・権限等、を規定する必要がある。
(4) 大学の組織・業務 (1p2p3pe)
1p 大学の組織は、2大別される:執行機関と議決機関。大学の長は執行機関の長であって、任期4年、選任は教授の中から構成員の選挙で選出され、文部科学大臣が任命する。
2p 執行機関の業務は、2大別:経営的と教学的。
3pe 最高議決機関は大学の評議会。互選する長が会議を主催。評議会は、定数ごとの部局教員、職員、学生の各代表と学外者で構成され、教員は過半数。教育に関する事項は多数決。
学部の議決機関は教授会。学部自治の中心で、学部運営の学生参加が保障される。
(5e) 大学財政の独立性、国と大学、大学間の調整 (1p2p3p4pe)
1p 大学財政の独立性、国と大学や大学間の調整のための組織として、「大学委員会」(註11)が必要。委員会の法的性格は、政府から独立した行政委員会とする。委員の定数はほぼ30人、任期4年、地域別、分野別、大学内外別、などの定数を設けて選出し、政府が任命。
権限は執行業務の調整であって、とくに財政の自主的運営が重要事項。委員会は、「大学財政委員会」、「大学調整委員会」の分けて運営。
2p 大学運営の財源は公費負担が原則。授業料無償化、給与制奨学金の拡充、学生寮整備などを進める。
大学の事業収入は当大学の財源。
3p 予算執行は、独立性、客観性、公正性、透明性、責任性が確保されるように努める。補助金統制・誘導を禁止。地方交付税のように、測定単位に単位費用を乗じ、規模や地域に応じて補正。全国共通水準が達成されるようにするなど、合理的な算定方法を工夫する。各大学の予算要求は、「大学財政委員会」に対して行う。財政情報の公開、監査が必要。
4pe 実績や能力に応じた研究費補助は、現行の科学研究費補助金等の改善・拡充による。政府の評価とリンクした資金配分は慎重にすべき。
●註:
1. 藤田宙靖。ジュリストno.1156.(1998.6.1.)
2. 文部省。「国立大学の独立行政法人化の検討の方向」 (1999.9.20.)
3. 自民党「提言 これからの国立大学の在り方について」 (2000.5.9.)
4. 「国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明」 (2000.5.26.)
5. 資料として、文部省の調査検討会議は「議事要旨」を、国立大学協会は「議事の概要」を、公表。
6. 国大協第1常置委員会中間報告 (1999.9.7.)
7. 「国立大学法人名古屋大学法(仮称)案」 (2000.11月)
8. 東京大学・国立大学制度研究会中間報告 (2000.7月、同10月に最終報告)
9. 国立学校財務センター『大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較研究―第一次中間まとめ―』 (2001.1.)、
同センター長・大崎仁「国立大学法人化への国際的視点」 『学士会会報』No.830. (2001.1.)
10. 大学審議会「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)」 (2000.11.22.)
11e. 同前センター『国立大学財務システム改革の課題(中間まとめ)』 (2000.11.)は、「英国のファンデング・カウンセルのような独立的な機関」を「検討に値する」とのべている。
●年表(1996〜2000):略します(6ページ分)。