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<社説>科学技術計画 研究投資増えても喜べない
2001.1.16 [he-forum 1573] <社説>科学技術計画 研究投資増えても喜べない (毎日新聞)


<社説>科学技術計画 研究投資増えても喜べない

毎日新聞ニュース速報

 21世紀に日本は科学技術をどう発展させるのか。地球環境問題の克服や生活の向上、未知への挑戦のため今後も科学技術の力を借りる必要があるだろう。

 その点で二つの出来事があった。首相が議長の科学技術会議が年末に新しい科学技術基本計画の案を作成したことと、科学技術会議が中央省庁再編に合わせて廃止され、総合科学技術会議が発足したことだ。

 内閣府に属し、人文・社会科学もみる総合科学技術会議は新たな科学技術基本計画を着実に実行し、科学技術を振興させる義務を負う。

 新基本計画案の出来具合を見るには、科学技術基本法に基づいて1996年にできた第1期基本計画の反省をどの程度生かしたかが一つのポイントになるだろう。

 第1期基本計画は政府の研究開発投資額の大幅アップをうたい、96年度から2000年度までの5年間で17兆円を目標にした。「この目標は達成できた」と政府は胸を張る。

 だが、何を研究投資とするかの基準がない。各省庁が独自に出した研究投資額を単に足し合わせているだけだ。人件費などを除く純粋な研究費が幾らかも分かっていない。

 新基本計画案では01年度からの5年間で総額24兆円にするというが、基準があやふやではあまり意味がない。総合科学技術会議が指導力を発揮して予算配分にまでタッチするという仕組みにもなっていない。

 第1期基本計画では基礎研究を担う大学の施設設備の充実を掲げたものの、国立大の老朽化して狭い施設はそのまま残った。新基本計画案では施設の充実を最重要課題と位置付け、施設整備計画を作って実施に移すという。だが、施設整備費を出す国立学校特別会計をどう見直すかという具体策がない。

 研究現場の活性化のため研究者の任期付き任用が課題だったのに、結果はひどかった。新基本計画案は科学技術システム改革の一つに任期付き任用を掲げ、各研究機関ごとの計画作りを求めているが、産業界を含めて研究者の人事交流が活発化しないと効果は期待できない。

 新基本計画案は「知の創造と活用により世界に貢献できる国」など目指す国の姿を示した。重点分野としてライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー(微細技術)・材料の四つを挙げた。競争的研究資金の倍増、研究機関や研究課題の評価システムの改革もうたった。

 より具体的にはなっても全体的にまだあいまいな点が多い。それでいて「ノーベル賞受賞者を50年間で30人」という目標を掲げたため研究者からは疑問の声が上がる。

 科学技術庁に事務局を置く科学技術会議の廃止直前の仕事で限界があった。総合科学技術会議はノーベル賞受賞の白川英樹さんが議員になるなど陣容が大幅に入れ替わり、70人以上の独立事務局を持つ。そこが改めて新基本計画案を検討し、明確な方向性を打ち出すべきだ。

 今後は縦割り行政の排除が大きな課題である。総合科学技術会議は、抱える研究者の数が多い文部科学省にどんどん注文を付けてほしい。

 科学技術創造立国を目指すためには独創的研究を育てたい。科学者と社会とのつながりの重視、既存の学問の再編統合、国際協力などの必要性も忘れてはならない。
[2001-01-11-23:56]

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