独行法反対首都圏ネットワーク

<キャンパル>国立大学の独立行政法人化 学生の目で検証
2000.1.7 [he-forum 1557] <キャンパル>国立大学の独立行政法人化 学生の目で検証(毎日新聞)


<キャンパル>国立大学の独立行政法人化 学生の目で検証


毎日新聞ニュース速報


 1999年9月に公表された国立大学の「独立行政法人化」。21世紀には「少子化」という教育機関にとって最大の難問が降りかかってくる。学生数の減少に悩む大学は、この独立行政法人化によってどのように変化するのだろうか。学生の目で検証してみた。(21世紀の大学を考えるキャンパるの会)


 行政組織の縮小・業務効率化を目的に作られた独立行政法人。これは国の責任で運営されてきた機関に、予算などの細かな運営を任せ、独立させるというものだ。監督権は国に残されるものの、国の直轄であった国立大学にとっては、大きな変革となる。


 最終結論はまだ出ていないが、2003年以降のしかるべき時期に法人へ移行する、という方向が現在の主流だ。


 容認派は「さまざまな規制下にある国立大学が、法人化による規制緩和によって、大学の自主性と独自のカラーが生まれるであろう」と指摘する。独立による自助努力で新たな発展が望める、というのだ。


 一方、反対派は「成果がでるまで時間がかかるような研究は、効率が悪いと評価されがちなため、敬遠される可能性もある」(辻下徹・北海道大学教授)と言う。行政的判断で学術研究が左右されることは望ましいことではないという。


 行政法人には「中期目標」という業績評価の監査制度が設けられる。これを教育機関である大学に適用することへの疑問の声も上がっている。学術研究は目に見えた結果だけが重要ではないからだ。業績評価が適切かどうかを見極めるのは困難であるという。


 独立行政法人化によって、国立大学だけでなく私立大学も影響を受けることになるだろう。独立法人化された国立大が学生数を増やすなど財源確保を図ってきた場合、ただでさえ少子化によって学生獲得が難しくなっている私立大は、さらに窮地に追い込まれる。私立大の前に国立大が、今まで以上の競争相手として立ちはだかるかもしれない。


 逆に、国立大の学費が値上げされる可能性もある。その場合、「学費が高い」という理由で、国立大に学生を奪われてきた私立大にとっては、努力次第では奪回のチャンスともなりえる。


 辻下教授は「とりわけ地方では、大学の統廃合が進むことが考えられる。そうなれば学生の就学機会が狭まってしまう。『教育機会の均等』が損なわれることになり、望ましくない状況が生まれる」と警鐘を鳴らす。


 20世紀の後半、日本の「教育」はさまざまな側面から見直されてきた。21世紀には、その成果を実行しなければならない。国立大学の独立法人化は、そのよいさきがけとなるのだろうか。


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 ●研究・授業


 予算上の問題は当面ないとの文部省の見解だが、長期的に財源が保証されたわけではない。大学としては、よい評価を得るために、研究や教育の方針を変えざるをえなくなるだろう。


 まず、応用的な分野により力が注がれるようになる。企業から資金・要請を受けて行われる研究が増えるだろうし、社会で即戦力となる人材を開発する教育プログラムの充実も期待される。


 逆に、費用のかかる研究や、結果の出にくい基礎学問が縮小される恐れもある。私立大学では扱いづらい分野を研究できるという国公立大学の強みが失われかねない。


 ●学生


 将来的に、国からの予算が減ることになれば、学生の定員数増加や、学費の値上げが行われるかもしれない

 定員が増加されれば、少子化も手伝って、国公立大学への進学は易しくなるだろう。しかし、同時に新入学生の質が問題になってくるだろうし、学生数の過多によって、教育水準が低下する可能性も無視できない。


 一方で、学費の高騰により、能力はあっても経済的な理由から大学に行けない人が増えることも考えられる。


 ●大学の存在意義


 学生数が増加し、学生の質の低下が心配されるようになると、高度な教育・研究を大学で行うのは難しくなる。


 結果的に、専門教育や研究の大学院への移行が進み、「高等教育機関」としての大学の存在意義が問われることになるだろう。


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 国公立大学法人化の影響は広範に及ぶ。しかし、学生側の意識は非常に低いというのが実情だ。21世紀の大学像を定めることになるかもしれないこの議論に、学生も自分の問題として、より積極的に参加していく必要があるのではないか。


 国公立大学の法人化について、行政側はどのようなビジョンを持っているのか。文部省の杉野剛大学改革推進室長に聞いた。(一橋大・深谷健)


 ――国公立大学が法人化することの意義は。


 ◆多くの国で国公立大学は法人化されている。それは、大学独自の運営が認められているということだ。今回の独立行政法人化は、世界標準に近づくということでもある。


 ――大学はどのように変わるのか。


 ◆組織運営が大学側に任されるので、教職員の待遇や、カリキュラム編成にも幅が出てくる。各大学の色がはっきりしてくるだろう。予算の使途も大学側が自由に決められるようになる。


 ――予算が行政から切り離されることによる懸念が出ている。


 ◆予算については、現行通りに国から下りることになる。大学が十分に運営されなかったり、他の財源に依存したりしないようにしなければならない。基礎学問が停滞するということにはならないだろう。


 ――学生数や学費はどうなるのか。


 ◆法人化後も規制される。私立大学との競争がないようにする必要があるからだ。

 ――法人化するにあたって、問題点はないのか。


 ◆独立行政法人という制度が、大学になじまない部分はある。中期目標が研究を阻害する恐れはあるし、大学の教育・研究を評価することは非常に難しい。学長を大臣が解任できる制度も、大学には適合しないだろう。


 ――このような問題に、文部省はどう対処するのか。


 ◆国立大学の法人化については、平成15年まで検討されることになっている。問題点に関しては、特例を含めた別の法律で調整していくことになる。


 取材に当たった「21世紀の大学を考えるキャンパるの会」スタッフの感想は、次の通り。


 ★発想があいまいなすぎる。なんとなく施行するのでは意味がない。(東京理科大・藤島大輔)


 ★高等教育は、そのまま日本の未来に繋がるはずだ。目先ばかりの行政が気になります。(二松学舎大・因琢哉)


 ★大学の存在意義を大学入学当初以来、久々に考え、懐かしくなった。(早稲田大・柚木庸介)


 ★よい効果を期待するのなら、思い切った行動が必要。今のままでは中途半端すぎると感じた。(明治大・大久保杏子)


 ★大学の将来を左右するほどの改革なのに、今まであまり話題になっていないのが不思議に思えた。(一橋大・深谷健)


[2001-01-06-15:40]


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