独行法反対首都圏ネットワーク |
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第一に、一昨年七月に成立した独立行政法人通則法(以下「通則法」)は、行財政改革の一環である行政機関の縮小と効率化および国家公務員の定員削減を狙ったものです。
国立大学がその対象となった最大の理由は、今後十年間の定員削減目標を当初の十%から二十五%に変更した閣議決定(一昨年四月)における上乗せ分十五%(十二万五千人)が国立大学の教職員総数に一致したからであって、学術・文化への気配りなど全くありません。
第二に、「行政従属法人」と呼ぶべきだと云われるように、この法人化は大学から学問の自由と自治を奪います。「通則法」によれば、法人(大学)の長(学長)は主務大臣(文部科学大臣)によって任免されるし、主務大臣は三年から五年の期間に法人が達成すべき業務運営目標を定めて法人に指示するとともに、期間終了後は業務評価を行い運営の改善や事業の改廃を勧告できます。これは明らかに大学自治の破壊であり、学問の自由を謳った憲法に違反します。五年間では教育の評価は不可能だし、短期間に研究成果が出る学術分野は限定されてしまいます。ましてや効率主義や競争原理に基づき、「経済的有用性」という尺度による教育・研究評価および資源配分を続ければ、大学での基礎科学や人文分野の学問は間違いなく衰退するでしょう。
第三に、「行政法人」と教育・研究機関の関係です。私立大学の場合、学校法人とその法人が設置する教育・研究機関としての大学とは法制上別組織です。その理由は、戦前の私立学校制度を見直して、「その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ること」(私立学校法・第一条)にあります。学校法人の主たる任務は経営・管理であり、設置した大学の公共性を高め、大学の自治そして学問の自由を財政的に保証することです。国立大学の独立行政法人化をいうのであれば、大学を経営の論理に従属させずに自治および学問の自由を保証する組織形態が必要です。しかし、企業会計原則の導入をきめた「通則法」には、その配慮はありません。
国立大学の独立行政法人化は、以上のように学問の自由を支える大学の自治を破壊し、日本の学術・文化を衰退させます。私立大学だけがこの嵐の圏外に在りたいと願っても、それは不可能でしょう。学術・文化のために日本政府がなすべきことは、国立大学の独立行政法人化ではなく、ユネスコが発信した「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」と「二十一世紀に向けての高等教育世界宣言
― 展望と行動 ― 」および第十七期日本学術会議・第二常置委員会報告「大学問題
― 危機とその打開への道 ― 」にみられる世界史的・人類史的視点にたって大学の自主的改革を支援し、高等教育予算を先進国並に引き上げることです。
二〇〇一年一月
賛同者一覧表(氏名公表分八十四名)
石垣 逸朗 石川 光一 石川 重雄 石川 芳男 石浜 弘道
伊藤 和夫 今井 圭子 井野 博満 伊豫 軍記 植松 英穂
生方 卓 大生 光明 緒方 行廣 岡野内 正 大日方
聡夫
角瀬 保雄 加藤 正人 金沢 美保子 河合 研一 川根 深
菅野 英俊 草原 光明 栗山 一男 黒田 兼一 河野 英一
古賀 義弘 小島 隆人 小室 博昭 斎藤 トモ子 桜井 徹
佐藤 昌一郎 佐貫 浩 塩澤 南海治 宍戸 孝実 市東 興安
ジョン・ブロウカリング 杉山 民二 鈴木 明 関口 恒雄
高橋 賢一 竹澤 武重 田極 信雄 橘 貞雄 田中 久文
田中 純一 田中 俊成 田村 和彦 栃木 利夫 内藤 猛
中川 雄一郎 中村 哲哉 成田 修身 成田 寛 鳴坂 みよ子
野口 邦和 花原 二郎 濱本 和敏 原田 英二郎 早野 誠治
福田 邦夫 古沢 常雄 古田 幸男 宝達 邦彦 堀中 浩
牧野 玲子 マクレガー・ローラ 松川 良隆 松橋 公治
三枝 洋子 御前 憲広 三沢 節夫 三宅 忠和 百木 悟郎
矢島 國雄 柳沢 敏勝 山田 啓一 山本 茂 山本 長一
山本 正明 山口 雄仁 吉田 克明 吉田 洋明
吉田 裕
和田 正信