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2000年県政この1年―(9) 大学改革
2000.12.27 [he-forum 1542] 岩手日報12/27
『岩手日報』2000年12月27日付
■2000年県政この1年―(9) 大学改革
少子化が経営直撃 「国立」でも法人化の波
少子化が大学経営を直撃している。県内の私立大・短大5法人は今年、一致団結して県私立高等教育協議会(会長・大堀勉岩手医大理事長)を結成した。
定員割れの恒常化で経営難が続く久慈市のアレン国際短大(岩島久夫学長)は立て直しへ今春、経営陣を刷新。久慈市は財政支援として3000万円の振興補助金を交付した。同じく学生減少の打開策として、一関市の麻生東北短大(神山正学長)は、経営母体を学校法人第一麻生学園から大阪に本部がある同藍野学院系列に移すことを決定。平成14年に学科再編を予定する。
国立大の動きも急だ。5月の国立大学長会議で、中曽根弘文文相(当時)は「国立大の法人化で大学の自主性が大幅に拡大、教育研究の進展を図ることができる」と発言。国立大を国の組織から切り離し、法人化する方向が事実上定まった。
文部省は、行革に伴う省庁再編の一環として採用された「独立行政法人」を基本的な考え方として、大学の自主性を尊重する特例措置を設ける方針。13年度中の具体案づくりを目指す。
岩手大は文相発言直後の6月上旬、法人化に関する初の全学説明会を開催。
海妻矩彦学長は「15年度以降、早いところから法人化することになるだろう」と対応の緊急性を強調。学内世論は「おおむね現実論でまとまっていると認識している」として、国の動きを見ながら13年度内には地域性、国際性などの課題も盛り込んだ「法人岩手大」の具体論をまとめる考えだ。
全国の大学・短大進学率は今や50%に近い。18歳人口の減少で、大学審議会は「大学全入時代」の到来を予測している。21世紀に生き残りをかけた大学間競争は、地方に一層厳しい。改革の大波は、本県の高等教育の在り方を問い直すことにもなりそうだ。
◎記者の目 開かれた大学いかに構築
今や大学は、戦後の新制大学が目指した「エリート養成機関」という側面だけでは成り立たないのは論をまたない。少子化の進行で刻々と「大学全入時代」が近づく一方、当の学生のみならず社会が大学に求めるニーズの多様化は今以上に進むだろう。
新制大学の誕生から半世紀。岩手大の海妻矩彦学長は「(国立大は)文部省の付属機関として独自の指針をつくる必要もなくここまできた」と、自省とともに各大学が個性化を怠ってきたことを指摘する。
個性化という面では、私学にも同様の反省があるだろう。急激な改革論議の高まりは、半面でそれだけ対応が後手に回ったことを露呈している。地域にあって「世界に開かれた大学」をいかに構築するか。全国規模の大学間競争の中、各校の改革への取り組み過程が、そのまま大学の評価を左右するのは間違いない。(報道部・遠藤泉記者)