独行法反対首都圏ネットワーク

科学技術基本計画案への意見
2000.12.13 [he-forum 1504] 「科学技術基本計画案への意見」


科学技術庁科学技術政策局科学技術基本計画室に送付したものを転送します。


なお基盤的経費の見直しに関する次の記述に焦点を絞った意見も必要と思います。


「(c)基盤的経費の取扱い

競争的資金の倍増を図っていく中で、教育研究基盤校費及び研究員当積算庁費のいわゆる基盤的経費については、競争的な研究開発環境の創出に寄与すべきとの観点から、その在り方を検討する。その際、・教育研究基盤校費については、教育を推進する経費であるとともに大学の運営を支えるために必要な経費としての性格を有すること・研究員当積算庁費については、研究機関の行政上の業務遂行に必要な研究費としての性格を有することに留意する。」


辻下 徹

北海道大学大学院理学研究科数学専攻
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目
TEL and FAX 011-706-3823
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst


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意見


 当該科学技術基本計画には重大な欠陥がある。日本の研究者社会の協力体制を弱め、日本社会総体の研究能力の質を急速に低下させるリスクが高い。

  知の創造と活用により世界に貢献できる国、国際競争力があり持続的発展ができる国、安心・安全で快適な生活のできる国を目指すことは良い。その目的のため、科学技術と社会のコミュニケーションを深め、産業を通じた科学技術の成果の社会への還元すべく、科学技術の重点化戦略、基礎研究の推進、国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化を計ることも妥当であろう。それには、科学技術システムの改革と 研究開発システムの改革に取り組むことも必要なことは言うまでもない。しかし、具体的な改革計画に問題がある。
 改革の具体的方針は、競争的な研究開発環境の整備/任期制の広範な普及等による人材の流動性の向上/若手研究者の自立性の向上/評価システムの改革/制度の弾力的・効果的・効率的運用/人材の活用と多様なキャリア・パスの開拓/創造的な研究開発システムの実現、などとなっているが、通底するものは「競争原理を徹底すれば研究活動が活性化する」なる仮説への依存である。
  当該仮説は検証されていないし、ニュージーランドでは反証されている。この仮説を盲信し15年前に大学・研究機関の企業化を断行したニュージーランドでは、知識や情報の囲い込み現象が起こり研究機関間の協力関係が薄くなるとともに、経年的な研究者意識調査によれば、大学の大多数の研究者の志気は明白に低下している。
 当該科学技術基本計画は、研究者社会全体の協力体制を根底から衰退させる欠陥を伴っている。それは構造的なものであり「研究者の倫理」のような精神主義で克服できるような性格のものではない。徹底した競争原理がもつ致命的リスクを見据えた上で計画全体を再検討することが日本社会の未来に責任あるものに強く要求される。
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