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 弘大で博士課程創設の議論続く
2000.12.9 [he-forum 1493] 東奥日報12/08

『東奥日報』2000年12月8日付

 弘大で博士課程創設の議論続く


 弘前大学教官の間で博士課程創設をめぐって議論が繰り広げられている。「創設によって研究の高度化が図れる。優秀な学生の流出を防げる」と主張する教官。その一方で「地方大学の博士課程に人が集まるだろうか」「就職先が少ない博士課程をつくっても仕方ない」という冷めた見方もあるようだ。弘大は今年九月、文系・理系融合型の博士課程の可能性を探る検討委員会を発足させた。設置形態をめぐり議論を続けているが、具体像は見えず、手探りの状態だ。
 「弘大に博士課程がないのは不幸なこと。学生に申し訳ない」。人文学部のある教授はため息をつく。「研究者を目指す学生のことを思うと、大学院に進むなら弘大より他の大学へ行った方がいいと勧めたくなる」と正直な気持ちを語る。
 現在、弘大では医学部に博士課程があり、農学生命科学部は岩手大学大学院連合農学研究科(博士課程)に加盟しているが、他の学部には二年制の修士課程があるのみ。弘大で修士課程を終え、博士課程へ進む学生は他の大学へ行かなければならない。

 本年度で人文学部修士課程を修了する女子学生は、「研究者を目指しているので、来春、他大学の博士課程を受けるつもり。受かったとしても、その研究室になじめるか不安。それに時間とお金がかかる。弘大に博士課程があったら苦労はしないんですが…」と訴える。この学生は、大学幹部に大学院設立を直訴しており、一時は署名運動実施も考えたという。
 博士課程創設論が高まる中で、創設に消極的な見方をする人もいるようだ。
「博士課程を終わっても、研究者以外に就職口がない」「弘大教官の中で博士課程で教えられる人が何人いるのか」というのがその理由。
 それに対し、ある教官は「できる講座から博士課程を創設して、他の講座では、教官が順次努力すべき」と話す。さらに「現在、外国人留学生の多くがドクター(博士号)取得を目指して日本にやってくる。弘大が、グローバルな視点で大学の役割を担うためにも博士課程は必要」と強調する。
弘大は今年九月、全国でも珍しい文系・理系融合型の博士課程創設を検討する委員会を設置した。博士課程の在り方をめぐってさまざまな意見が出されているというが、構成学部など具体像は見えていない。
 「国立大学の独立行政法人化をにらみ、大学を強くしていかなければならない。そのためにも弘大にとって博士課程は悲願だ。弘大の独自性を打ち出したい」と言う中村信吾委員長(副学長)。「十四年度の政府予算概算要求事項に盛り込めるように話を進めたい」と検討作業を急ぐ姿勢を示している。


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