独行法反対首都圏ネットワーク

国大協6月総会議事録1/2
2000.12.01 [he-forum 1467] 国大協6月総会議事録1/2

国立大学協会会報に、3月〜6月の国立大学協会で行われた種々の議論が詳しく掲
載されています。6月総会議事の中の独立行政法人化に関する部分を転載します。
毎日新聞の報道
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/006/24-mainichi.html
で様子はかなりわかっていましたが、議事録を見ると、議論を尽くしてではなく、
「議事運営技術」を尽くして収束させたことがよくわかります。


[1-7] の議論のあと、当然調査検討会議の具体的な内容が呈示されて、議論が戦術
的な話しに移ってしまいます。[19]のようなまともな意見はほとんど無視されて[20]
[30]のような奇妙な自己規制の意見も少なくありません。豊島さんが「謀議」と表現
したのは的確な表現と感じます。


もちろん戦術を議論するのは当然のことですが、そういった議論だけで、21世紀の
日本の大学を左右しかねない「調査検討会議参加合意」が決まったことは残念です。


北大では、学長が6/8の部局長会議と6/9の評議会で、総会でする予定の発言
について了解を取る手続き
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/houkoku4.htm
をとっていますが、大学構成員が直接意見を聞かれたわけではなありません。


詳しい議事録を公開してアカウンタビリティを果たしていることは、評価すべきで
あるとは思いますが、6月総会の議事録が9月頃にひっそりと出されるというのは
少し残念です。オンライン化くらいはしてほしい。


辻下 徹
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長いですが省略せずに転載します。


〔2〕総会
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/006/14-kdk-giji.html
(国立大学協会)会報第169号(2000.8) p45-54


第106回総会第一日 6/13 
協議
当面する諸問題について
(2)独立行政法人化問題について


会長から,独法化問題に関しご意見を会長宛いただいているが,学長個人とし
ていただいた田中鹿児島大学長のご意見を学長ご自身からご披露願いたい旨述
ぺられ,同学長から,同学長がまとめた「国立大学独立行政法人化についての
問題提起」について朗読し説明があった。引続き会長から,田中学長から3点
にわたる問題提起をいただいたが,これを一つの契機として,独法化問題につ
いてご意見をいただきたい旨述べられたのち,次のような意見交換が行われた。


#田中学長文書は
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/kadaipres613.html
に掲載されている。



○[1]昨年9月20日に文部省が提示した「検討の方向」では,今後,大学の特性
を踏まえた特例措置について検討し,平成12年度のできるだげ早い時期までに
講ずべき特例措置等の具体的方向について結論を得たい,とされたが,5月26
日の文部大臣説明め中にはその形跡は読み取れなかった。それに対して,5月
11日の自民党政務調査会の提言には,より競争的環境,選別、淘汰,再編・統
合といった強い表現が随所に認められる。それで,今後,「今後の国立大学等
の在り方に関する懇談会」(以下「賢人会議」という)の下に設置される「調
査検討会議」での具体的な制度設計についての検討が自民党の提言の影響を強
く受ける形で進まないか懸念される。国大協として文部省と同じテーブルにつ
き,調査検討会議に参加するか否かは,会長が5月26日の記者会見で表明され
たとおり,総会で決めることかと思うが,テーブルにつくということであれば,
これまで国大協がとってきた「通則法を国立大学にそのままの形で適用するこ
とに強く反対する」ということとの整合性が明確にされなけれぱならない。そ
れがないままテーブルにつくことは適切でない。


○[2]:平成9年11月総会で「現在の独立行政法人案を国立大学に適用すること
に反対」を決議しており,その決議の重さを十分認識した上で「調査検討会議」
に参加すぺきと思う。だから,そこへの参加は国大協としての意見を反映させ
られるように国大協の組織を代表する形でなげればならないと思う。


○[3]05月26日の文部大臣説明後の質疑応答で,佐々木高等教育局長から,独
立行政法人へ移行する場合は99大学すべて一緒であるとの答弁があったが,今
後の検討で大学にとって不都合な方向が出てきた場合には反対し,降りる途を
とるという大学の独自性はあり得ると考えている。田中学長が言われている
「調査検討の結果,独法化が極めて不適切なところが出てきた場合には,その
時点で国大協として複数の制度設計について意見を表明する」というのも,そ
ういう意味と理解する。


○[4]田中委員の意見に賛成であり,(1)国大協として,通則法の下での独法化
に反対を堅持して頂きたい,(2)国大協と文部省が対等に議論すべきであるか
ら,それが「賢人会議」の下に置かれる「調査検討会議」というのは不満であ
る,(3)学長アンケートの結果で明らかになった,我々が求めている基本的な
線が容れられない場合は,引き下がるべきである。


○[5]文部省と同じテーブルにつくかどうかの是非は「通則法の下での独法化
反対」という縛りを解き放てるのかどうかということにかかっていると思う。
文部省は,昨年の「検討の方向」では,特例措置と言っていたのを,今回の文
部大臣説明では,それを調整法あるいは特例法ということを打ち出した。これ
は一歩前進だと思う。“法”が入ったことで,「通4則法の下で反対」という
くびきは相当解かれたのではないか。調整法、特例法が通則法の中か外かは解
釈の問題だと思う。今でも教官は国家公務員でありながら教特法で守られてお
り,それと同様に通則法の中に調整法あるいは特例法が入ったとしても独法化
することの意味は十分あると思っている。また,詳細な制度設計がないのにテー
ブルにつくのは問題だという意見があるが,予算を保障し学長選考等における
大学の自主性が十分尊重されるということであれば,テーブルにつくかどうか
を決断するに足る材料は与えられていると思う。


○[6]文部大臣説明の中には,確かに大学は自主性・自律性をもつ必要という
ことは述べられているが、それを保障する制度については何も触れられていな
い。だから,国大協として衆知を集めて識見の高いところを示すべきである。
また,文部省と対等に話し合いができる形をとれるようにして貰いたい。


○[7]今回の文部太臣説明も自民党の提言も,いずれも細部の点が示されてお
らず,最終的にどういう方向になるか不明なのが気懸りである。我々には,第
1常置委員会がま上めた「中間報告」という大方のコンセンサスが得られたも
のがあるので,これを詰め,国大協としてこれだけは堅持すべきという基本的
事項をまとめるべきである。それがあれば誰がテ一ブルについても国大協の意
見を主張することができる。そこを多くの学長が危惧しているのだと思う。


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ここで会長から次のように報告があり、諮られた。


5月26日の文部大臣説明を受けて,数日前に佐々木高等教育局長から文部省が
賢人会議下に設置を予定している「調査検討会議」の考え方が提示された。


それによると,調査検討会議について,法人の(1)基本,(2)目標・計画,評価,
(3)人事システム,(4)財務・会計,の4つの検討グルーブを設ける。各クルー
プ15名程度の委員構成とし,それぞれのクループの委員は国立大学長3名,大
学共同利用機関長1名,有識者(公立大学長、私立大学長、経済界、言論界)5
名,研究者等5名,国立大学事務局長1名とする。別途,グループ間の調整にあ
たる連絡会議を設ける、等である。また,今後のスケジュールについては4つ
のグループを6月から7月にかてつくり,平成13年度をかけて検討を進め,平成
14年3月を目途に最終的なまとめを行いたいといことである。


そこで,この文部省からの提案についてどう対応するかご意見を頂載したい。
絶対にテーブルにつくべきでないか,しかるべき条件のもで可能か,あるいは
何らかの方向転換において可能なのか,そこをお考えいただきたい。


なお,議論を進めるについて,(1)国立大学,大学共同利用機関及び国立短期
大学すべてに共通するものとする,(2)既に法制化されている独立行政法人通
則法を国立大学にそのままの形で適用することには反対であるということを前
提とするということにさせていただきたい。


この会長からの提案について特に異義がなく,主として次のような意見交換が
行われた。


○[8]文部省と同じテーブルにつくことが即独化容認にならないと理解してよ
ろしいか,確認したい。


○[9]国大協として文部省と同しテーブルにつということは,国大協が通則法
のもとで国立大学を独法化するということを国大協の総意として認めたという
ことではないということを,ここで確認したい。


○[10]選択肢は二つある。一つはテーブルにつくことだが,その場合,個人の
立場で参加するか,国大協が参加者を推薦し国大協として積極的にテーブルに
つくかである。もう一つは,テーブルにはつかずに,国大協独自に検討を進め,
文部省の制度設計ができる前に国大協の案を文部省に提案することである。後
者は環境も難しく非常なエネルギーが伴うことを覚悟しなければならない。制
度設計は現場を十分知らなければできない。しかし,制度設計に向けて調査検
討会議がつくられようとしており,現実にはテーブルにつかざるを得ないので
はないか。


○[11]詳細な設計が分からないままテーブルにつくことにネガティブな意見も
あるが,文部省としては制度設計の検討を調査検討会議に委ねるというのだか
ら,中身がないのは当然である。国大協は通則法を国立大学にそのまま適用す
ることには反対という態度であり,文部省は調整法あるいは特例法という考え
方をとっているから,相互了解のベースはあるといってよいのではないか。テー
ブルにつくについて,国立大学の制度設計に関わる問題を国大協と文部省だけ
で協議することは政治的に考えて難しい。やはり,有識者を合めた調査検討会
護の場に参加するのが常識的ではないか。そして,そこへの参加は,国大協と
して推薦した常置委員会の委員長なり委員の立場で参加する方がよい。その方
が国大協としてのまとまりがとりやすいのではないか。


○[12]調査検討会議に我々の意見がどの程度反映できるかわからないが,それ
以外に場はないから参加すべきと考える。ただ,そこへの参加が国大協を代表
してということであると,発言が自ずと限定されるから,個人の資格として出
ていかざるを得ないのではないか。


○[13]文部大臣説明は,「通則法にもとづく独立行政法人の制度設計」という
言い方をされている。通則法にもとづくとなると,通則法の下では反対と言っ
ている国大協の考え方とは相容れないということになるように思うが,どうか。


○[14]それは矛盾していないと思っている。たとえば,国家公務員法と教育公
務員特例法との関係でいえば,あとからできた方が強いと解釈されている。し
たがって仮に国立大学法人法が特例としてできた場合には,この方が通則法よ
りも強いということになるので,疑間の点は問題ないと思う。国立大学法人法
ができた暁には,国立大学を通則法の下で法人化したことにはならないという
解釈をとらなげれば,今後動けないと思づている。


○[15]調査検討会議は、国立大学関係の委員が全体の半分程度であるから,ど
こまで我々の側の意見が反映できるか楽観できない。だから,国大協としての
意見をまとめ,それを調査検討会議にぶつけていくことが大事である。そのた
めにも調査検討会議の各クループに対応する形で,国大協の中でも議論を並行
させてやっていく必要があるのではないか。


○[16]文部省の調査検討会議の検討に拘わらず,国大協の中に,国大協の考え
方をまとめる特別委員会をつくらざるを得ないと思っている。同時に,仮にテー
ブルにつくとしたら,国大協の強い意思を反映し得る形で参加するようにした
いと思っている。.


○[17]テーブルにつかない方がよいとは思わないが,手直しをすれば独法化は
悪いものではないからどうかというコンテクストの中で,文部省の提案を受け
る形で調査検討会議に参加することには内心忸怩たる感がある。もっと別のテー
ブルは叶わないものか,少なくとも国大協が主体的にいろいろ意見が言えるよ
うなテーブルを逆提案することは不可能か考えてみる必要があるのではないか。


○[18]文部省が提案する調査検討会議は賢人会議の下部に置かれており,国大
協関係の委員も少なく,不満である。国大協と文部省が対等に協議ができ,国
大協の意見が十分反映されるようなテーブルであるべきである。


○[19]21世紀の日本の高等教育をどうするかという基本的なコンセプトが独法
化問題の一連の経過の中で忘れられていないか。文部省が提案する調査検討会
議の4つのグループの枠組みにのるかどうかは別にして,これが,たとえば基
本を検討するグループで議論されてしかるべきと思う。それがないまま制度設
計のみが議論されるとすれば残念である。ぜひ検討してほしい。


○[20]調査検討会議に国大協のメンバーが多いと,社会から,国大協がイニシ
アチブをとっていると見故され,そこで得られた結論も,国立大学の保身のた
めのものととられかねない。その意味では,国立大学以外のメソバーが相当数
入ったところで我々の主張を述べていく方がよい。また,国大協の中にはいろ
いろな意見があるからといって学長が個々に入るのではなく、国大協として参
加していくということを明確にすべきと思う。


○[21]これまでの経験から,この種の委員会運営は文部省のペースになりがち
であり,テーブルにつく場合,よほどしっかりとした意見をもって対応してい
く必要がある。


○[22]調査検討会議の上にある賢人会議が,調査検討会議が出す結論を覆す可
能性があるのかどうか,賢人会議と調査検討会議との関係はどうなのであろう
か。


○[23]賢人会議は文部大臣の私的諮問機関であり,この賢人会護の下に調査検
討会議が位置づけられることは確かである。各検討クループからの結論が連絡
会議を経て賢人会議に上がり,そこで最終的に決めた上、答申として文部大臣
に上がっていくという形式になろう。クループの結論を賢人会議が手直しする
ことは形式的にはあり得るが,そこは力関係によることかと思っている。


○[24]昨年の今ごろから比べると,状況は我々にとって良くなってきているよ
うに思う。決して甘くはないではあろうが,国大協として調査検討会議に参加
し,これを足がかりにしてさらによい方向に前進させたい。調査検討会議のい
ずれのグループで扱うのが適当か分からないが,諸外国に比べて遅れている大
学等への寄付に係る税控除制の整備といった周辺部分についても検討してほし
い。そうでないと,法人格を持ってもその良さが十分発揮できないおそれがあ
る。


○[25]調査検討会議及び連絡会議に会長,副会長が積極的に関与されだ方がよ
いように思う。それと,国大協内部にカウンターパートとして特別委員会をつ
くることに賛成する。


○[26]法人化の問題はこれからが本当の勝負になろう。「通則法をそのままの
形で適用することに反対」,という立場をより強力なものにするためにでなけ
れば,テーブルにつく理由はない。文部省は,調査検討会議の検討結果をまっ
て,平成14年3月を目途に最終的な結論を出すということだが,国大協がこの
問題に先手を打ってやっていくには,どのような組織が必要かである。また,
文部省が最終結着を政治日程というところに持ち込ませないようとするために
我々はどれだけ努力し優位に立てるかだと思う。


○[27]制度設計に関わって会計制度の問題ついては,「検討の方向」において
も,文部大臣説明においても,大学の特性に配慮しつつ原則企業会計制度を適
用するということだが,どこまで大学に適合する形に手直しすることができる
か。企業会計は,数値に基づき運用状況の効率を評価し,次の中期目標・計画
の予算に反映するという機能をもつので,使い方によづては大学の運営がコン
トロールされかねない危険性をはらんでいる。調査検討会議あるいは国大協の
特別委員会で財政問題を検討するについては、この点も踏まえて検討いただき
たい。


○[28]テーブルにつくということは,国立大学が今の設置形態から脱するのだ
という意思をもって参加するのでないと,結局は積極的な意見を出せないので
はないか。そこは敢えてはっきりさせない形でテーブルにつこうというのか。


○[29]通則法のもとでの国立大学の法人化に反対を堅持しつつ現在の通則法を
どれほど調整法あるいは特例法といったものによって教育研究の自由度の幅を
広げていけるかということを目的に我々はテーブルにつくことだと思っている。
国立大学法人法という方向が全会一致に近い形で支持があれば別だが,ご意見
を伺っているかぎりそのような判断ができないので、国大協として一つの大き
な方向を共有しているという形を崩さないことが大事であると考えている。


○[30]少子化の中で,日本の大学が入学定員割れを含め立ち行かなくなる状況
が出てくれば,社会が国立大学を見る眼は一層厳しくなる。そういう中で,自
民党の提言が出て,一つの方向が示された。これは一つの評価基準ということ
になり、しかも政治的リアリズムを考えると,提言は無視できないと思う。
「通則法をそのまま適用しない」ということにおいては,国大協も,夾部省も,
自民党も一致しているので,この現実の上に思い切った決断をせざるを得ない
のではないか。その決断ができないままテーブルに加わっそいくとすれば混乱
が起きないか、また社会批判が国大協に向ってこないか危惧する。


○[31]自民党案の中で調整法(又は特例法)の形で法律上明確に規定すべきと
されているのは,(1)評議会、教授会、運営諮問会議など大学の管理運営の基
本組織,(2)教育研究の中期目標・計画(主務大臣は中期目標を決めるときは
大学の意見を聞き,その意見を尊重しなければならない),(3)教育研究の評
価(主務省の評価委員会は,教育研究に関しては大学評価・学位授与機構の評
価を尊重する),(4)学長人事(その任命・解任は大学の申出にもとづいて文
部大臣が行う),(5)名称(「国立大学法人」など大学に相応しい名称とする)
の5点である。しかし第1常置委員会での検討をとってみても調整法なり特例法
がこの5つ以外にも必要になってくるように思われる。


以上のような意見交換が行われたのち、会長から次のように述べられた。


[32]テーブルにつくということの意味は、法人格をもつという結論を予めつくって
テーブルにつくわけではないが、どのようなものであるべきかを考えるために
テーブルにつくということが前提になると思う。


明日は,意見を収束させる方向で議論を進めたい。


以上をもって第1日目の総会を終了した。
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