独行法反対首都圏ネットワーク

迫られる大学の改革(岩手日報社説) 
2000.11.29 [he-forum 1455] 岩手日報社説11/25
『岩手日報』社説2000年11月25日


迫られる大学の改革 


 成長の時代が終わって、日本は変革を模索している。情報技術(IT)の急速な進展や国際化などによって世界が大きく変わろうとしている中で、「ものづくり王国」の座は揺らぎ、産業の空洞化も進んでいる。


 さらには、好況が続く米国や、急発展のアジアと競って経済力を回復、維持できるかどうか、不安は大きい。これまでの国の制度や規制、産業の在り方、人材養成や基礎研究、独創的な学術研究など大学の在り方も変える必要がある。


 盛岡市の岩手大学農学部附属農業教育資料館で先に開かれた「いわて5大学学長会議」の公開シンポジウムでも、5大学の代表が大学のありよう、大学間や産学官の連携、地域への貢献など率直に意見を述べ合った。


 この中で、教授や研究者の交流など企業と大学が対等のパートナーとして連携、これらを通して柔軟な頭脳の人材を養成していくことの必要性が指摘された。その意味でも今日、大学に求められる最も重要なものは質的な整備と改革の方向だろう。大学側の努力に期待するとともに、これを実現させる大学人の見識を信じたい。


 望まれる産学官協調


 「いわて5大学学長会議」は県内の岩手大学、県立大学、岩手医科大学、富士大学、盛岡大学の5大学が連携して、21世紀の高等教育、学術研究、教育研究に一層の成果を上げていこうと、今年3月に立ち上げた。


 国公私立の大学が、垣根を取り払って同じ目標に取り組もうという姿勢は評価できるし、これによって本県高等教育の向上は無論、その大学ならではの鮮明な大学色、独自性・独創性のある教育・研究、自律的研究活動の充実が図られるなら結構なことである。


 公開シンポジウムは初の試みである。増田知事も出席したが、5大学学長会議への期待が大きいことをうかがわせるものと言っていいだろう。知事は5大学と産学官連携による地域貢献や新しい産業の育成など県土づくりの軌跡が見えるようであってほしい−と要望もしていたが、高等教育改善の重要な視点である。そうした進展を、ぜひにも望みたいと思う。


 今、産学官の連携とともに産学協力の推進と活性化が声高に言われている。それは21世紀へのシナリオを描いた新しい県総合計画もうたっていることである。各分野での産学官の連携と産学協同の拡大・強化は高等教育機関が担うべき今後の大きな課題である。 


 特徴ある教育提供を


 公務員定数削減のあおりを受けて国立大学の独立行政法人化が打ち出されているが、そのことは別にしても、国公私立ともどもに求められているのは、大学の教育・研究の高度化、個性化、活性化であろう。そのために取り組むべき課題は授業計画や教員の教授内容・方法の改善と向上、カリキュラム・ガイダンスの充実、大学自体の運営の円滑化など数多い。


 公開シンポジウムのパネルディスカッションでは、県民の側から単位互換など5大学の連携・協調を評価するとともに、一層の独自性を望む指摘もあった。各大学の積極的対応はもちろん、大学連携による産学協同の広がりも期待されるところである。


 大学への県民の要望は多い。時代と社会の変革期にあって必要なのは、創造力のある、個性豊かな人、幅広い視野と人格を持って科学技術を発展させることができる人材である−も、その1つである。大学は社会的な使命をあらためて銘記、特徴ある教育を提供しなければならない。


 21世紀を担う人材を岩手ではぐくむことができるかどうかは、5大学の連携によって、気概ある若者をどれだけ魅力ある学問・研究活動に迎えられるかにかかっている。(中原祥皓) 



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