独行法反対首都圏ネットワーク

新潟からのアピール
2000.11.1  [reform:03225] 新潟からのアピール


10月28日に新潟大学において、教員養成問題のシンポジウムが日本科学者会議主催で行われました。シンポジウムの最後に拍手で確認されたアピール文を紹介します。
                新潟大学教育人間科学部 森田竜義
新潟からのアピール
国立大独立行政法人化で教員養成が危ない
    −今こそ教員養成問題の国民的な議論を広げましょう−」


 シンポジウムに参加した私たちは、新潟から全国に訴えます。

 文部省は、8月に「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」を発足させ、教員養成系大学・学部の統廃合・再編の検討を開始しました。国立大学の独立行政法人化をにらんだ文部省が、「国立大も血を流している」とアピールするための、かっこうのスケープゴートにしようとしているともいわれます。  
 理由とされた教員就職率の低迷はたしかに深刻です。今年3月に教員養成系大学・学部を卒業した学生のうち、教員に採用されたものは臨時採用も含め30数%だったと言われます。採用そのものが極端に減少しているのです。教員をめざしまじめに勉強している学生にとっても、良い教師を育てようと努力している大学にとっても希望を失わせる事態です。学校にぜひとも必要な若い教師の新鮮なエネルギーが奪われていることも重大です。
 教員採用の減少の原因は少子化と言われていますが、直接的には教員の年齢構成のゆがみにより定年退職する教員が極端に少ないことに加え、文部省が学校の統廃合や定員削減政策をすすめていることが原因です。いじめ、学級崩壊など深刻な学校の荒れを解決するのに必要な30人学級は、少子化に伴う教員減を行わないだけでも実現できると試算されており、年齢構成のゆがみを正すためにも、文部省はこの時期にこそ教員の増員を積極的に図るべきです。
 今、学校は教育内容や教育方法、運営の在り方を含めて大きく変わろうとしており、その学校を支援するためにも、教員養成系大学・学部は地域の教育センターとしての役割を一層果たすことが期待されています。地域の教育にさまざまに関わってきた教員養成系大学・学部を地域からなくしてよいのでしょうか。
 戦後の教員養成の2大原則である、「教員養成は大学で行う」という“大学における教員養成”の原則と、「どの学部で学んだ学生も教員になることができる」という“開放制の原則”が実質的に崩されようとしていることも、最近の教員養成をめぐる特徴の一つです。本年度から実施されている新教員免許法は、教科専門科目を半分に減らし、教科教育法や教職専門科目を大幅に増やしました。介護体験実習の義務づけとあいまって一般学部の学生が教員免許を取得することが著しく困難になっています。一方文部省は、「教員養成系学部に学者はいらない」という趣旨の発言を繰り返し行い、教員養成系大学・学部における教科内容を深める教育や研究を攻撃の的にしています。教員養成系大学・学部の教育や研究を、学校現場の問題意識や教育実践とかみあうものに変えてゆく努力はおおいに必要であり、この点で大学の側に反省すべき点があることも事実です。しかしこの間に出された教育職員養成審議会答申が示すように、文部省が目指している方向は、「学校現場に目を向けた教員養成」を口実として、皮相な「教え方」に片寄ったものに教員養成を変質させる危険をはらんでいます。このような方向では子どもの学力低下に一層拍車をかけることは明らかです。そしてその真のねらいが、教員養成系大学・学部の6割を占める教科専門の教員を削減するリストラにある可能性も否定できないのです。
 私たちは、「大学における教員養成」にふさわしい内実をもった教員養成教育が、すべての学部に開かれて発展することを要求します。「今、どのような教員が期待されるのか」をふまえた教員養成の在り方についての国民的な議論をよびかけたいと思います。
   2000年10月28日
   シンポジウム「国立大独立行政法人化で教員養成が危ない
     ー日本の教育の未来と教員養成を考えるー」  



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