独行法反対首都圏ネットワーク

役員兼業>法施行後21人 先生のベンチャー魂薄い?(毎日)
2000.11.19 [he-forum 1422] <役員兼業>法施行後21人 先生のベンチャー魂薄い?(毎日)


<役員兼業>法施行後21人 先生のベンチャー魂薄い?


毎日新聞ニュース速報


 国立大学の教授らに民間企業の役員兼業を認める、産業技術力強化法が施行されて半年余り。高度な技術に裏打ちされたハイテクベンチャーの育成を図る狙いで導入されたが、自分の研究成果を事業化するため役員に就任したのは21人にとどまる。自らが社長となったケースはゼロだ。若い人のベンチャー精神の欠如を嘆く声が多いが、大学の先生のベンチャー魂はさらに薄いとの指摘もある。


    【江南 護】


 兼業承認の第1号となった鈴木宏正・東京大助教授は、工業製品のデザイン作成などに利用されるソフト開発が研究分野。静岡県浜松市の会社の取締役に、今年7月就任した。自分の研究が会社の将来を左右する部分も大きいだけに「選択を誤ると大変。ライバル企業の動きを見据えてやらないと」と、経営陣の一員として気を引き締める。
 通産省の従来のベンチャー支援策は直接金融の活用など資金対策が中心だった。米国では、大学の教官が研究成果を事業化するため自らが出資して社長になり、その後世界有数の巨大企業に育ったケースも多く、長期の景気拡大の一因ともなっている。
 このため、「次に必要なのは、一部のインターネットベンチャーのようにアイデアに基づくベンチャーでなく、高度な技術力を持った企業」(産業政策局)で、国立大に眠る「ビジネスの種」を産業界に生かしてもらおうと、「学と産」の二足のわらじを促す制度を創設した。

 4月の法施行以来、研究成果の事業化で役員兼業が認められたのは21人。一部の国の研究機関の職員を除けば、国立大の教員が出資して社長に就いたケースはゼロで、起業の現場に入る教員は少ない。長尾真・京都大学長は「うちの大学も大学院生が起業するケースが出るなど今は時代の過渡期にある。今後は教員のなかでベンチャーを起こす動きも出てくるだろう」と期待を込める。しかしその一方で、国家公務員という手厚い身分保証制度を変えない限りは、自分でリスクをとって事業化を目指すのは難しいとの指摘もある。

 ◇  ◇  ◇
 中谷巌・三和総研理事長は、一橋大教授時代、ソニーの社外取締役就任を人事院に求めたが、国立大教員の兼業規制のため実現できず、教授を辞任した。しかし、この議論が兼業規制の緩和のきっかけになった。中谷氏に「先生とベンチャー」について聞いた。
 ーー国立大教員らの役員兼業が一部認められるようになって半年。評価は。
 ◆法律は一歩前進だが、文科系教員の役員兼業を認めていないなど課題は残っている。自分のもつ技術を事業に生かすのが法律の趣旨だが、技術とマネジメントが企業経営の両輪で、マネジメントもいわば技術のひとつだ。
 ーー米国のように自分の研究成果をもとに起業するケースが少ないのはどうしてでしょう。
 ◆国立大の先生は国家公務員の身分が保証され、気楽だからいいのかな(笑)。いったん大学を辞めると戻れないのが暗黙の社会のルールで、休職も2、3年ぐらいしか認めてくれないだろう。起業がだめだったからまた大学で再スタートするーーなどという選択肢が少ないので、「それだったら大学に片足だけ突っ込んでやろう」というのではないか。 ーーどうすればいいのでしょう。
 ◆少子化になっても国立大は授業料も安く被害を受けない。私学は生徒を引き付ける工夫をしないと学生が集まらないが、国立大の危機感は希薄だ。
 そのため国立大の教員は気楽で、リスクをとってやろうという人が出てこないのではないか。私学と授業料を同じにして競争原理を働かすようにしないといけないと思う。
[2000-11-18-21:50]



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