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<特集ワイド>今週の「異議あり!」 近ごろの東大(毎日)
2000.11.17 [he-forum 1416]今週の「異議あり!」 近ごろの東大(毎日)
<特集ワイド>今週の「異議あり!」 近ごろの東大
日新聞ニュース速報
東大の学内メディア・東京大学新聞が創刊80周年を記念して19日、シンポジウムを開く。テーマ「東大に何ができるかー市民生活との接点ー」。急変する時代に東大が果たすべき役割を模索しようという試みだが、最近東大が話題になったことと言えば、トイレ盗撮・のぞき事件。東大はどうなっているのか。東大新聞編集長の高重治香さん(20)=法学部3年=は、東大の現状について「社会の声を聞く仕組み、社会に自らの主張を訴える仕組みができていない」と話す。 【山田 道子】
<7月に文学部、9月上旬に法学部の女子トイレでの盗撮事件が起き、9月中旬には男子学生による総合図書館の女子トイレのぞき事件がありました。東大新聞でも大きく取り上げました>
◆文学部での事件後、総長にただちに報告が上がり、何らかの対応が取られていれば、その後の事件は起こらなかったと思う。学生としてすごく怒りを感じている。
また、学内メディアという立場から言うと、東大新聞がのぞきをした学生の学部名を掲載したことに対し、「加害者にも人権がある」と大学側から抗議があった。学部名を載せたのは、実質的に処分をする学部として注目していくべきだと考えたから。教官のほぼ全員が男性の学部なので、この問題に適切に対処するか心配だ。
<7月に蓮実重彦総長が提案した教官の定年延長については、OBからも反対論が出ましたが、9月の評議会で60歳から65歳に延長することが決まりました>
◆さまざまなテーマについて賛否両論があるのは当たり前だが、東大ではきちんとした話し合いが行なわれ、延長するにせよ、しないにせよ、みんな納得の結果結論を出すというプロセスがあると期待していた。総長が掲げる「年齢差別の撤廃」という理念は立派だと思うが、納得できないとか信用できないという人がたくさんいたのだから、その人たちとがっぷり組み合うべきだったのに、そのような議論はなかった。プロセスの重要性やプロセスの欠如が外部からどのように見えるか、十分意識していないのではないか。
<東大に対する社会の要請は変化していると思いますか>
◆本当に評価されるべきことをやっているのだとしたら、税金が使われている分だけ、世間に貢献していることが分かるように伝えてほしいという要請があると思う。地方の国立大学は地域のシンクタンクのような役割を果たしていて貢献が分かりやすい。しかし、東大は「地域の大学」である以上に「日本の大学」なので、具体的に貢献しているという感じを国民に持たれていないのではないか。
同時に、今までにも努力さえすればもう少しできるはずなのにしてこなかったことがあるので、それも見直した方がいい。
<できるはずなのにしてこなかったこととは?>
◆教育面で強く感じるのは、明らかに質の低い授業をする教官がいること。例えば、講義で「口走っている」だけで、人に聞かせるという認識がない教官が存在する。そのような教官は教壇には立たせないでほしい。授業評価と同時に、研究面では教官の自己評価、外部評価を広げることも必要だ。もし、東大の研究レベルが世界的に高いというなら、教育のレベルも同じように高くしないと、有効な再生産はできない。
大学生の学力低下も指摘されてます>
◆東大では、世間で言われるような「分数計算もできない」というのは当たらないと思う。むしろ、東大にはいじめや差別がなく、人を傷つけるような言動をしない知性ある人が集まっていると思っていたけれど、そうではなかったことに失望した。クラスの中でグループを作って集まっては、特定の人の悪口を言ったり、3年生にもなっていまだにセンター試験の点数を自慢する人もいる。
また、座右の銘を「ノーブレス・オブリッジ」(高い身分の者には道徳上の義務が伴うの意)と言う学生がいた。そこにあるのは、「大衆はだめだ。おれがやる」という感じだった。東大生なんてたくさんいて自分も大衆の一人にももかかわらず、特別な存在だと勘違いしている。
<シンポジウムのテーマを「市民生活との接点」にしたのはなぜですか>
◆東大関係のことばかり報道していると、他のメディアの東大に関する報道が気になり、最近東大の存在が揺らいでいるということは感じる。東大自体も、検討会などを作り、大学のあり方について立派な報告書を出している。しかし、そのような報告書の内容や東大が考えていることを迫力をもって発信する仕組みができていないという弱さ
を感じる。「開かれた大学」「市民が自由に入れる雰囲気」というのはすでに潮流になっていると思う。しかし、その意識が教官・学生の間で十分に共有されていない。東大への要望が大きくなるのは期待が大きいからであり、その期待を自ら退けるようなことはすべきでない。私としては、東大は日本の価値観を創造する議論の場であってほしい。
シンポジウムでは、東大の卒業者でもなく、東大に愛着を持っているわけでもない人たちに参加してもらう。そこに東大の先生にも入ってもらい議論することによって、少しは風通しのいい、外からも聞いてもらえる議論ができるのではと思っている。まず「何をすればいいか」を話し始める機会になればいい。
【略歴】
たかしげ・はるか 神奈川県出身。1998年入学。法学部政治コース在籍。今年7月から東京大学新聞編集長を務める。発行部数は3万5000部。
【別項】
東京大学新聞80周年記念シンポジウムは19日(日)14時〜17時、東京都文京区本郷の東大大講堂。パネリストは、森山眞弓元文相▽小林正彦東大副学長▽上原公子国立市長▽板生清東大教授▽松原明NPO連合プロジェクト「シーズ」事務局長。司会は南学静岡文化芸術大助教授。入場無料。問い合わせは電話03・3811・3506
[2000-11-16-14:05]