教育学部の縮小・ 再編統合について
2000.11.2 [he-forum 1381] 教育学部の縮小・ 再編統合について
現在、独法化とは別に、大変懸念している事柄は、教育学部の縮小・再編統合です。
これは、単に一大学、一学部の生き残りとは全く別の次元の、大変大きな問題です。
全ての国民が受ける義務教育と大多数が受ける高等学校教育の教員を養成する所
が、教育学部・教員養成課程ですから、これは全国民の問題であり、その教育を受け
た人達がこれからの世の中を背負っていくのですから、国の将来に関わる大問題です。
子ども達が、どんな教師に、どんな教育をしてもらって育つのか、それを左右するのがこの問題です。切実に望む事は次の2点です。
1.少子化に伴って教員数と教員養成課程を縮小する前に、まず少人数学級の実現を。
2.教員養成のあり方=どんな教師をどう育てるのか、という根本的な議論のうえにたって、教育学部のカリキュラムづくりを。私は教務職員であって教官ではありませんから、大学の運営には関わる余地もなく、詳しい事情は知る由もありませんが、今、教育学部に対しては、採用試験合格率の向上、就職率の向上、教職教養を重視するよう様々な圧力がかかっているように思います。特に理科系に対しては、「ここは理学部ではないのだ。あんなミニ理学部みたいな事して何になる。ここは教員養成課程である事を自覚しろ。」という攻撃が強いようですが、私はその意見に反対です。自分自身が教育学部を卒業して、強く感じたのですが、大学の教育学部でするべき事は、現場に立った時、即、戦力となるようなHow to 式の教育よりも、専門性を深めながら充実した卒業研究をしする方が大事だと思います。その中で、研究の手法と学び方、理科系ならば科学的なものの見方、考え方、アプローチの仕方を身につけ、学問・研究の面白さ、学ぶ楽しさを十分実感した人に、教師になって欲しい。子ども達に、魅力のある教育をするには、教科・科目の教え方が上手なだけでは不十分です。採用試験に高得点で合格しても、自分自身が、学問・研究の面白さを体験した事がない
人が、教壇に立って、いったい子ども達に、どうやって学ぶ楽しさと意義を伝えるというのでしょう?
むしろ問題なのは文化系の学生で、単位だけはちゃっかり取るが、授業とクラブ以外は大学にも来ず、数ヶ月か、ひどい人は数週間で卒論を書き、学問・研究はろくにしないが、採用試験勉強だけはしっかりやって、採用試験に合格していく人達です。
大学の教育学部は予備校教師の養成所ではないのです。現場でのHow to は、むしろ現場に出てから学べるような制度にするべきです。教育学部を卒業して、いきなり一人で、大事な子ども達を預かってしまうのではなく、現場に入った最初の数年間は、副担任の形で子ども達と関わり、先輩教師から教えてもらいながら、現場戦力を身につければよいのではないでしょうか?そして大学では、大学でしかできない事を学んでおいて欲しい。
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溝口 和子 Kazuko MIzoguchi
和歌山大学教育学部 生物準備室
TEL: 073-457-7378
e-mail: kazukomz@center.wakayama-u.ac.jp
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