独行法反対首都圏ネットワーク

北日本新聞社説(00.10.12)
(2000.10.18 [reform:03188] 北日本新聞社説(00.10.12))

白川英樹筑波大学名誉教授のノーベル化学賞受賞を取り上げた社説が10月12日付北日本新聞に掲載されましたので一部紹介します。政府の科学技術政策のあり方への批判や、自由で独創的な研究が保障されることの重要性を指摘していて、独法化批判の論点とつながっています。配信元は同じなので、おそらく、全国の地方紙に同様の社説が出ていると思います。

「白川さんの真骨頂は独創的な物づくりにあった。……新物質は、プラスチックが電気を通さないという常識を覆しただけでなく、導電性プラスチックの物理学を発展させた。物性物理の基礎にまで刺激を与え、理論の発展を促した。
 応用面でも、携帯電話の表示画面に使えるような半導体高分子が実現し、21世紀に向けて、有望な分子エレクトロニクスの起爆剤となろうとしている。
 その出発点となる新物質を作った意義は大きい。1960年代に東工大の助手だったころ、実験の失敗で、新物質の薄膜を見つけたという偶然にも恵まれたが、それを見逃さなかったところに非凡さがあった。
 電気を通す有機物の研究で、日本の研究者は戦後、世界をリードした。その伝統が生きた成果でもある。ただ、白川さんの発見の意義をいち早く見抜いたのは、同時に受賞する米国の二人の教授で、研究はペンシルベニア大で発展した。日本はせっかくのチャンスを失い、米国から逆輸入されて、この分野が盛んになった。
 白川さんの仕事を振り返ると、学問の流行に流されずに、独自の道を行く重要さがよく分かる。流行のITやゲノムに、バブルのおうな膨大な国家予算を投入して、はやし立てる政治家や官僚主導の今のやり方で、日本の科学技術が本当に飛躍するのだろうか。
 それとは違う研究者の自由な独創性こそが欠かせない。49年にノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹さんの中間子論から白川さんの仕事まで、日本の6人のノーベル賞学者が身をもって示したことだ。科学研究の原点に立ち返るべきである。」

広瀬 信(Shin HIROSE)
富山大学教育学部(教育史・教育学)
930−8555 富山市五福3190
TEL/FAX 076-445-6366
hirose@edu.toyama-u.ac.jp


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