守れるか福井の教育 学部統廃合構想を問う
(2000.10.14 [he-forum 1336] 福井新聞(2))
『福井新聞』特集(日付不明)
守れるか福井の教育 学部統廃合構想を問う
(2)「金沢大だけは存続」
首相発言に福大反発
「あたかも、北陸の全大学は金沢大に統合されると受け取られかねない調子だった」。福井大のある関係者は振り返る。
昨年五月、金沢市内のホテル。「独立行政法人化導入もあり、大学はこれから厳しい状況が続くが、北陸で金沢大学だけは今後長く存続していくだろう」。金沢大学創立五十周年記念祝賀会に地元選出代議士として出席した森喜朗・自民党幹事長(当時)は、こんなあいさつをした。
そして先月十三日、首相官邸で開かれた全国都道府県知事会議。「国立大学を(全国的に)こんなに網羅する必要があるのか。ブロックごとに集約することが大切だ」。大学統合についてさらに突っ込んだ発言が森首相の口から出た。教員養成学部に関する質問に答えた言葉だけに、福井大教育地域科学部の関係者には、北陸三県による「再編統合」の四文字が、より現実味を帯びた。しかも、森首相は、ばりばりの文教族。
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首相の発言と前後するかのように、文部省は二度にわたって「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」を開催。子供たちが直面している問題に即応できる力量を持った教師の養成システムをつくる論議をスタートさせた。この中で、同省は統合再編も議論の対象とする考えを明確にした。
この動きに対し、福井大教育地域科学部教授会の寺岡英男教授らの対応は素早かった。九月十九日、県庁で「一県一教育大の堅持」を訴える見解を全国に先駆けて発表。「教員の力量形成を支え、教育の実践的諸課題に取り組み、学校改革を実現していくためには、教育系学部・大学院と学校・地域との間でより密接で日常的な協力関係と共同研究体制を実現することこそ必要」(見解文より)、と各県に教員養成学部を置くことの意義を強調した。懇談会の第一回会合から教授会見解まで、約二十日というアクションの速さは、同大の危機感の強さを物語っている。
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文部省は、統合についてまだ、公式見解は一切出していない。しかし、福井大の隼田嘉彦・教育地域科学部長は「『再編統合』の文字が一人歩きしてしまうことだけは避けたい。(こうして早い段階から行動するのは)既得権の擁護のためではない。文部省には、大学のことは大学や地域に任せてほしいと訴えたい」と話す。
これに対し、文部省の石井稔・教育大学室長は「最初に再編反対ありきでは議論にならない」として、「われわれが求めているのは、本当に学校現場に即応する”いい先生”をつくること、それだけしかない。大学の教育学部が栄えて、学校教育が廃れては何にもならないのではないか」と反論するのだが…。
教員養成系学部の再編を視野に入れる文部省教育大学室。「地域の反発も当然出るだろう。1年くらいかけるつもりでいます」と語る石井稔室長