独行法反対首都圏ネットワーク

守れるか福井の教育 学部統廃合構想を問う
(2000.10.14 [he-forum 1335] 福井新聞(1)

『福井新聞』特集(日付不明)
守れるか福井の教育 学部統廃合構想を問う

(1)理論に偏る教員養成
現場即応力こそ大切

  「校庭にあった彫像の首が切られていた光景を思い出すと、今でもぞっとします。全国各地で十七歳少年の凶悪犯罪が発生しているが、本県でもいつ起きても不思議ではない気がする」。丹南地方のある中学校長は話した。
 中学校の校門に児童の首が置かれていた一九九七年の神戸市須磨区の男児殺害事件と同じころだった。この中学の校舎の中庭に数体並んでいた人物像の首が、すべて切られていた。背景を想像した教師たちは、ぼう然と立ち尽くした。
 三年後の今春。佐賀のバス乗っ取り殺傷事件など、少年の凶悪犯罪が全国で相次いだ。不登校やいじめなどの従来からの難題に加え、学校は新たな問題を抱え込んだ。現場教師の苦悩は深刻だ。
 そんな中、教員養成大学・学部が今のままで良いかを問う声が高まっている。大きく変わる子供たちにどう対処すべきか悩む教師に、大学は何を答えているのか。さらに、今の教育現場の問題を想定した教員養成システムとなっているのか、との問い掛けだ。
 「三月に卒業したらすぐに教壇に立ってもらわねばならないはずだが、教育の実態を知らない人が多すぎる。数学でいうなら、N次元の高度な方程式を教えているだけ。物の見方、感じ方を教えるような姿勢は見られない」。昭和三十年代に福井大学を卒業した校長は、後輩の若手教師に手厳しい評価を下す。
 その上で、大学にはこう期待を寄せる。「マニュアル通りの学科指導だけではなく、子ども一人ひとりの個性を見いだし、将来に希望と進路を与えることができる力を大学で養ってほしい」  

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 全国には国立の教員養成系の大学・学部は四十八を数える。教官の中核をなす教授、助教授の六割が理学部、文学部出身者で、数学や物理、文学を教え研究する、いわゆる「教科専門教官」で占められる。どう教えるかの教職専門と教科教育法の教官は三割を切っているのが実態だ。昨年五月の文部省統計では、小中学校の教壇に立った経験のある教官はわずか二二・八%。自分たちの研究に打ち込むあまり、大切なものを見落としていないか、との指摘も多い。
 「このデータが医学なら、診断を一度もしたことのない人たちで医師を育てるようなものではないか。信じられない」と、福井医科大の教官は驚きを隠さない。
 福井市内の小学校教頭。「正直言って、これまで大学教官の話は聞いても無駄に思えた。理論ばかりで、どれだけ現場の悩みを知っているのか疑問だった。
学校でどんな問題が起きているのか、もっと知ってほしい」。口を開くと不満が噴き出す。 

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 文部省は教員養成システム再編の検討を開始した。その中で、教員養成大学・学部の北陸など地方ブロック単位の統合構想も浮上している。本県の学校現場や採用の実態に照らしながら、文部省の再編構想で地域の教育が守れるかを問う。また、福井大教育地域科学部が福井の教育に果たしてきた役割と今日的課題も考える。


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