独行法反対首都圏ネットワーク

「広報佐賀大学」での議論
(2000.10.11 [he-forum 1319] 「広報佐賀大学」での議論)

佐賀大学の豊島耕一です.
以下に,私の大学の広報紙「広報佐賀大学」に投稿として掲載された,独立行政法人化に関する意見を紹介します.なおこの欄に掲載された文章はこの一件だけでした.
この広報紙は年3回発行され,学内,在学生の家庭,各大学,近隣の高校,企業,自治体などに配布されます.発行部数は1万1千.同じ著者,中島謙一氏の「平成9年10月27日付の独法化反対声明は死んだのか?」もぜひご覧下さい.こちらは次の場所に置いています.
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/knews15.htm

また,私が全大教加盟の組合執行部に個人的に送った手紙を次に置いています.間近にせまっている「単組代表者会議」で,真に効果的な戦略と戦術を提起して頂きたいという要請の文です.
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/letterzdk.html
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[広報佐賀大学 2000年9月30日号]

投稿の場
テーマ 「国立大学の独立行政法人化について」

国立大学の独立行政法人化が実施されれば、本学にとっても極めて大きな変革をもたらすことになろう。これまでも本紙で取い上げてきたが、大学・大学人としてこの問題を避けて大学の将来を考えることはできない。メリット・デメリット、様々な意見・問題点を広く議論する場として、投稿欄を設けた。標記テーマの投稿を受け付ける(八〇〇字以内、著名原稿)。編集委員会

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国立大学の独立行政法人化は社会にとってプラスになるか?
     理工学部機能物質化学科 教授 中島謙一

 標題の件について、主に学外の方々を念頭において私見を述べてみたいと思う。独立行政法人化(独法化)といっても何のことかご存じない方も多いと思う。ことの重大さの割にはマスコミの取り上げ方が小さいからである。独法化とは、国の機関に法人格を与えて国から切り放すことである。既に国立病院や国立研究所などの独法化が決まっており、国立大学については現在検討中である。その目的は国家公務員の数を減らして財政再建に貢献するためである。大学改革の一環であるという言い方もあるが、それは後でつけた理由である。
 それでは、独法化によって国立大学はどのように変わるか?字数の制限があるので要点のみを挙げれば、次の二点になる。(イ)大学の自治と学問の自由が制限をうける可能性。(ロ)大学運営に効率性や採算性が強く要求される可能性である。そして、このような改変が社会にもたらす影響として次のことが考えられる。
 まず、(イ)については、学問と教育が時の政府の思惑によって左右されないか、自由な発想・発言の場としての大学の機能が弱まらないか、ということである。これらのことは、文化大革命時代の中国の大学の状況を思い起こせば理解できると思う。
 (ロ)については、教育面では、学費の大幅な値上げや教員一人に対する学生数の増加(即ち、マスプロ教育)を招くことである。研究面では、文学や天文学のように経済的利益と直接に結びつかない学問が衰退する恐れがある。さらに、三〜五年程度の期間に研究成果を出すことが要求されれば、息の長い研究ができなくなる。
 この他にもいろいろな影響が考えられるが、独法化が社会にもたらすメリットはほとんどない。あるとすれば、財政再建にわずかに寄与することだけである。しかし、財政再建の問題を教育にしわ寄せすべきではない。六四五兆円という膨大な財政赤字を生み出した原因は他にあるからである。日本の文教予算はむしろ長年にわたり貧弱で、現在でも、GDPに対する高等教育費の割合は欧米諸国の約半分である。
 国家百年の計は教育にあり、といわれる。財政赤字のしりぬぐいを教育に押しつければ、国の将来を危うくする。

(以上)
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TOYOSHIMA Kouichi, Univ. of Saga/佐賀大学理工学部 豊島耕一
---核兵器裁判に注目しよう(10月9〜13日,エジンバラ高裁)---
www03.u-page.so-net.ne.jp/ta2/toyosima/goilsupt.html


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