独行法反対首都圏ネットワーク


第3回設置形態検討特別委員会(議事の概要)
(2000.9.1 [he-forum 1233]  第3回設置形態検討特別委員会(議事の概要)

日 時 平成12年8月10日(木) 14:00〜17:00
場 所 学士会分館(本郷)6号室
出席者 長尾委員長
中嶋副委員長
丹保、海妻、阿部、鈴木、梶井、内藤、佐藤、松尾、杉岡、江口、田中各委員
宮脇、馬渡、小早川、森田、若杉、奥野、丸山、本間、内田各専門委員
(大学共同利用機関)堀田凱樹国立遺伝学研究所長
(説明者)青山善充東京大学学長


長尾委員長主宰のもとに開会
今回は専門委員を交えた初めての委員会のため、各専門委員から自己紹介があった後,委員長より、東京大学の国立大学制度研究会『国立大学の法人化について(中間報告)』の説明のため出席を依頼した、東京大学の青山副学長の紹介があった。
〔議 事〕
1.『国立大学の法人化について(中間報告)』について
青山東京大学副学長より、中間報告を取りまとめた研究会の座長の立場から、検討の経緯、報告書の内容、今後の課題の3点について、簡潔に報告したい旨の前置きがあった後、配付資料『国立大学の法人化について(中間報告)』に基づき、概ね次のような説明があった。
(1) 検討の経緯について
東京大学は蓮實総長の下に私的諮問機関を設置し、この問題を継続的に検討してきている。即ち平成11年7月「東京大学の設置形態に関する検討会」を設置し、約6か月にわたり検討し、次の4点を要旨とする報告書を取りまとめ、本年1月に総長に提出した(但し、この報告は各評議会にも内容を報告したが機関決定として了承されたものではない)。
■柔軟な大学経営や教育研究の一層の推進のためには法人格を持つこと自体は望ましい。
■しかし独立行政法人通則法そのままの形で法人化することは不可能である。
■通則法に優先する規定を含む「特例法」を設け、「独立行政法人」の名を冠さない法人を構想すべきである。
■東京大学が法人に移行する場合でも、その自主性・自律性が確保されること、教育研究の高度化・活性化が図られることが必要条件である。
引き続き、本年3月、上記「検討会」の延長として、東京大学が法人格を持つとすれば、国立大学のあるべき理想との関連においてその法人制度は具体的にどのようなものであるべきかについて検討することを使命とする、総長の私的諮問機関「国立大学制度研究会」を設置し、検討を重ね、7月10日に配付の通りの「中間報告」を取りまとめ、総長に提出した。
(2) 中間報告の内容について
『国立大学の法人化について(中間報告)』に基づき、総論部分として「国立大学の法人化の理念と基本問題」及び「制度設計の前提条件」について、また、各論部分として「法人の名称、目的および組織」、「教職員の身分および事務機構」「活動と評価」及び「財政・財務制度」について、重要個所の説明があった。
(3) 今後の課題について
「中間報告」は、現在、各部局に流し、意見を求めているところである。所要の修正等を行い、秋頃には最終報告を取りまとめ、総長に提出したい。その先は総長の判断に委ねられるが、東京大学としては恐らく、評議会の下に正式な大学の審議機関を設置し、この問題を検討することになると考える。なお、現在のところ、法人格を持つことについても、また「中間報告」についても機関決定は何一つしていないので、その点はご承知いただきたい。
これについて、概ね次の事項に関して、質疑応答があった。
○ 法人化した場合のメリット・デメリット(運営費交付金による資金使用方法の自
由度の増大、また研究教育活動の活性化の反面、管理運営面における責任の負荷)について
○ 大学の自治、部局の自治、教授会の自治等、大学における自治の概念・原則の明確化の必要性について
○ 教職員の身分(公務員型・非公務員型)について
○ 国立大学と国との関係(現行の設置者管理主義に対する、設置者・費用負担者と管理者の分離)について
○ 国立大学法人法と、学校教育法・教育公務員特例法等、教育関連諸法令との関係について最後に松尾委員より次のような話があった後、委員長より名古屋大学の報告に関してはいずれ折を見てご報告いただきたい旨、述べられた。
名古屋大学は昨年3月頃より種々の検討を開始し、先般、大学のアカデミック・プランの大枠を作り、更にそれを凝縮した形で、東京大学の「中間報告」で提言されてもいる“名古屋大学憲章”を作り、本年2月の評議会に諮り了承を得た。その他、万が一法人化された場合を考慮し、学内に委員会を設置し、法人化された場合の運営機構(法人の役員等)、運営機関(評議会・部局長会議・運営会議等)、教育研究の組織、評価、財政、人事等の具体的な制度設計を含め、検討を進めている。
2.調査検討会議「組織業務委員会」の検討状況について
阿部委員より、去る7月31日開催された、第1回「組織業務委員会」の検討状況について、阿部委員メモ及び当日配布資料に基づき、概ね次のような報告があった。
(1) 組織業務委員会の主査に私、阿部東北大学長が、副主査に阿部充夫(放送大学教育振興会理事長)、渡邉昌一(花王(株)経営諮問会議特別顧問)が選出された。
(2) 組織業務委員会は、独法化後の国立大学の組織、業務等に関する調査検討を行うことを目的とし、当日は配布資料に基づき、独立行政法人制度の概要、国立大学の独法化問題の主な経緯の説明があった後、委員会の役割・検討対象に関して意見交換があった。
(3) 当日の議論をまとめると、委員会の役割は仮に独立行政法人制度を活用すれば、大学に相応しいどのような制度設計が可能かを議論することであり、その検討対象は法人単位、名称、業務(範囲、出資、業務方法、学生定員)、組織(役員、内部組織)等、法人の基本に係る事項である。また、他の三つの委員会との多少の重複は互いに恐れず議論する、従って国立学校特別会計についても触れることになろう。
(4) 企画立案機能と実施機能の分離についても議論され、文部科学省の企画立案機能に加え、大学も一定の企画立案機能を有するのは当然である、との認識が一般的であった。
(5) 委員会はフリーディスカッションが主で、第2回目の委員会は8月31日に開催するが、当日は文部省から検討項目の提案があり、その説明を聞き、議論に入るものと思われる。
引き続き、馬渡専門委員から、自由討議の内容について補足説明があった後、次の事項について意見交換があった。
○ 企画立案機能の主務省と大学の線引きの明確化について
○ 「調査検討会議」「連絡調整委員会」「賢人会議」の関係について
○ 国大協及び特別委員会の意見・意向の「連絡調整委員会」「賢人会議」への反映について
○ 特別委員会の見解の各地地元政治家への訴えかけの実施について
3.専門委員会の検討状況について
委員長より、次のように述べられた。
これまでに、「専門委員会C」(人事システム)と、「専門委員会B」(目標・計画・評
価)が開催されているので、その検討状況について、梶井・松尾の両座長より簡単にご報告いただきたい。
(1) 「専門委員会C」(人事システム)の報告
去る7月13日に専門委員会を開催した。たまたま前日、『東京新聞』に東京大学の中間報告が出たとの報道があり、幸い森田専門委員が東京大学の制度研究会メンバーであったので、その内容を説明いただき議論した。また、今後の専門委員会の進め方についても協議した。
なお、文部省の調査検討会議の委員である、隆島東京水産大学長に対し、今後は私ども専門委員会に出席いただくこととした。
(2) 「専門委員会B」(目標・計画・評価)の報告
本日午前、専門委員会を開催した。まず第8常置委員会の審議状況を説明し、その上で「第8常置委員会」、「B 目標・計画・評価専門委員会」及び文部省の「目標評価委員会」の関係の持ち方等について議論した。
その他、専門委員会では、■設置形態検討特別委員会が専門委員会の担当課題について明確な方向性の指示がないと、専門委員会として目標が定まらず審議しずらいという強い意見が出たほか、■今後は「大学評価・学位授与機構」との関係も重要となってくるので、相互の意思疎通が必要である、等のことが意見交換された。
最後に委員長より、梶井座長の報告に関連して、次のように述べられた。
鮎川愛媛大学長より小職宛に、当特別委員会に中国・四国地区、北陸・上信越地区から委員が出てないのは問題でありご検討願いたい、という主旨の手紙(7月26日付)をいただいた。この取扱い方については、次回開催日まで、検討させていただきたい。
4.設置形態検討特別委員会専門委員会へのオブザーバー出席について
委員長より、大学共同利用機関所長懇談会の平澤威男座長(国立極地研究所長)から、当特別委員会の4つの専門委員会に、それぞれ代表者1名のオブザーバー出席の要望があるので審議いただきたい旨述べられ、審議の結果、了承された。


5.特別委員会の検討課題について
委員長より、次のように述べられた後、委員長から配布資料「論議すべき課題(論点整理)」(添付資料参照)の説明があった。
第2回設置形態検討特別委員会において、本特別委員会として検討すべき課題を定め、それについての委員各位の意見・考えを提出いただくこととした。その結果、9名の方より意見の提出があり、それら意見を「議論すべき課題(論点整理)」として取りまとめたので、本日はこれをご審議いただきたい。なお、先程、松尾委員より問題指摘のあったことに関連し、ここでまとめた1〜4を、専門委員会の議論に先立つ形で議論し、方向性を明確化し、専門委員会の議論に反映させるようにしたい。
これについて、主として次のような事項に関して、意見交換があった。
○ 大学政策の審議機構に関して国大協の政策面(独自の情報集積等)の強化について
○ 国立大学の研究(特に基礎科学)・教育・地域社会に対する貢献と、周辺社会等へのアピールについて
○ 非採算分野等、高等教育諸分野に対する国費の投入の必要性と、国費投入する場合の国立大学であることの必然性について
○ 外部社会に対する説得力ある理論構築について
○ 国費の効率的活用という観点に立った資源配分について
○ 外部社会に対するアカウンタビリティ・透明性の確保等について
○ 欧米先進国の高等教育機関の設置形態・運営組織等について
○ 独立行政法人制度と国立大学法人法について
以上のような事項に関して意見交換があった後、大学共同利用機関代表の堀田国立遺伝学研究所長から、次のような発言があった。
阿部委員より、文部省の調査検討会議「組織業務委員会」の報告があったが、第2回委員会は、資料を含め、検討項目を文部省が提案するとのことだが、文部省のペースで委員会審議が進むことを大変危惧する。是非、調査検討会議の各委員会の開催に先立ち、当特別委員会なり各専門委員会を開催し、むしろ文部省の会議をリードする形で物事を運ぶことを期待したい。
これに応えて、阿部委員より次のように述べられた。
次回「組織業務委員会」は8月31日に開催されるが、その前前日に、本特別委員会の専門委員を交えて第1常置委員会を開催し、文部省から提案されるであろう検討項目について、事前に協議した上で、文部省の委員会に臨みたい。
最後に委員長より、第4回特別委員会は、もう少しこの問題について自由検討を行いたい旨の発言があり、以上をもつて本日の議事を終了した。
(備考:設置形態検討特別委員会開催予定)
第4回特別委員会:平成12年9月6日(水) 13:00〜16:00(学士会分館)
第5回特別委員会:平成12年10月11日(水) 16:15〜18:45(学士会分館)
(添付資料)
議論すべき課題(論点整理)
1.我が国の高等教育・研究および学術文化の継承・発展を担う大学・研究機関(国立とは限らず)の持つべき理念。
2.上記の理念の下で、国立大学、大学共同利用機関が私立大学とちがって国立大学法人等でなければならない理由。(国立大学等の使命と法人化の意味)
3.国立大学等における教育研究をより活性化し、学術文化の継承・発展をより良く進め、国立大学等の果たすことができる設置形態と財政的裏付け。
4.上記の設置形態がどのような条件下で可能か、どこまで共通の枠組みとして設定し、どれだけを各大学が自律的に決めるべきか。
5.我が国の将来の方向という時代の要請を受けつつ、我が国の高等教育・研究、学術文化の各分野のバランスのとれた継承・発展、社会への貢献等について検討し、政策提言を行う審議機構のあり方。

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