独行法反対首都圏ネットワーク

2000.9.18[he-forum 1275] 東京新聞社説09/18
『東京新聞』2000年9月18日付社説

お手盛りは頂けない 東大定年

 東京大学教官の定年延長の動きが進んでいる。反対論も出ているが、国立大
学教官の定年は学内だけで決めず、広く国民の声を取り入れるべきだ。

 教授から助手まで、東大教官の定年を現行の満六十歳から、十二年の経過期
間を経て満六十五歳に延長する改定案は、ことし七月十一日の評議会に蓮実重
彦学長から提案された。学部・大学院研究科、研究所などで検討の上、九月十
九日の評議会で再度議論されるが、そのまま決まりそうと予想する向きもある。

 改正の趣旨として東大は、教官の年齢の多様化、弾力化を保障し、六十歳を
超えても深い学識、円熟した判断力や国際的ネットワークを持つ人材を活用で
きることをあげている。

 これに対して学内、東大教官OBも含め、強い反対論も出されている。本音
は年金支給年齢の引き上げに対応するためとか、少子化で私立大学のリストラ
が進む時代、東大教授といえども天下り先が少なくなったから、との推測も聞
こえてくる。

 反対論が最も危ぐするのは、定年延長で教官の高齢化が進み、特に理系では
研究の生産性が高い若手の人材登用が妨げられ、研究活動が低迷するのではな
いか、という点だ。

 実はあまり話題にならなかったが、東大と並び教官定年が六十歳だった東京
工業大学はことし二月、一足先に六十五歳定年への移行を正式に決定している。
しかし、わが国の国立大学の最右翼に位する東大の動向は大きな影響力を持つ。
たとえば旧帝大系など今、六十三歳定年の大学が東大に倣い、一斉に六十五歳
またはそれ以上の延長に動くことも考えられる。国民として軽々しく見過ごせ
ない。

 国立大学の教官の定年は、教育公務員特例法により評議会の議に基づき学長
が定める。これは学問の自由に基づき、高度の研究・教育を行う大学の特殊性
を考慮したものである。

 教官の定年見直しの場合も、どうすれば学内の研究・教育が活性化できるか
という視点から考えるべきである。国立大学は国民の税金で運営され、研究費
の大部分も、教官の給与も税金で賄われる。研究・教育の活性化は、公務員と
しての国立大学教官の国民に対する義務である。

 この視点を見失って、学内だけでお手盛りで定年延長を決めるならば、大学
人のみでなく、広範な国民から「特権の拡大」との批判は必至だ。

 東大は結論を急ぐべきではない。反対や疑問の声にまずきちんと答えねばな
らない。

 特に若手研究者の登用が妨げられない方策、定年延長に安住しないよう教官
の業績を評価する方法、知的活力が低下した教官の処遇など具体的な対応策を
明らかにすべきだ。

 さらに学外からも、国民の声を代表する有識者を評議会などに招き、この問
題について意見を聞く機会をつくってはどうか。独善に陥ることなく、国民の
納得する結論を出してほしい。
   

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